「〜〜♪」
「……」
さて、現在八神はやて家で夕飯を作っている所だ。あの後、俺ははやての許可を得て八神家に住まう事になった。料理の出来ない八神はやて3歳の代わりに俺は料理を作っている。3歳と言えば、噛む力や消化能力の関係であまりがっつりした物は食べられない。カツ丼やトンカツ、辛い系の料理や刺激の強い料理は出す事が出来ない
。代わりに、消化しやすいうどんやなのはに出した様なそうめんだったりは3歳児でも食べる事が出来る。
はやても成熟した精神を持っているとはいえ、身体面はどうにも出来ないからね。
さて、はやてが後ろのテーブルで待っている間、気になっている事を考えてみよう。
まず、はやての生活資金を出しているというはやての父親の友人。手紙があったので見せてもらったが、名前はギル・グレアムというらしい。最近両親が死んでしまったはやての世話を見るという事で、生活資金を出しているとのこと。だが、この人物と顔を合わせた事が無いとはやては言った。
世話になるにしても、世話をするにしても、一度も顔を合わせない…というのは不可解だ。その辺はしっかり確認しないと駄目だろう。アレ? 俺母親?
いやいやいやいや、それは違うだろう。強いて言うなら従兄弟か義兄といった所だよ。うん。
「ん、できた」
とりあえず、料理完成。今回の料理は昨日の残りなのか、出前の鍋の残りがラッピングされていたので、雑炊にしました。一応、少し冷まさないと駄目だからもう少し置いておくが、はやてでも食べられるだろう。
「はやて〜?ご飯出来たよ」
「はーい、えへへ楽しみやなぁ」
「ほら、テーブル空けてくれ」
「うん!」
はやてがテーブルを簡単に掃除して片付ける。そこへ雑炊を置いて、スプーンやお茶なんかも置いていく。全部置き終わると、はやてはニコニコ笑顔を浮かべながら両手を合わせた。
「いただきます!」
「はい、召し上がれ」
「はふはふ…んっ………おいしー!」
それは良かった。まだ少し熱いかもしれないけれど、まぁ許容範囲だろう。とはいえ、はやてって今までの食事全部出前だったのかな?それにしては随分とスレンダーな体系を維持しているけど。出前ばかり食ってたら普通もっと太ってない?
アニメ補正ってことで納得するけど…なまじ現実を知っている分理解に苦しむなぁ…俺にも適用されるかな?
「んー…そうだ。はやて、俺後でちょっとさっきの喫茶店に行ってくるから、留守番お願いできる?」
「え?何か忘れ物でもしたん?」
「いや、ちょっと店主に呼び出されてね。少し話をしてくるだけだよ」
「そう…ええよ。でも、早めに帰って来てな?」
「ああ、約束だ」
俺も、考えなしにこの家ではやての面倒見るとか思っちゃった訳だし…最後まで責任はとるさ。それが筋ってもんだろ?
それにしても何の用だろうか?心当たりとしては…一日居候した事か、病院で床に伏せてた士郎氏を治した事か…十中八九前者かなぁ…身体を治してくれたのはあの銀髪4頭身だと思っているみたいだし。
でも対して何かした訳じゃないしなぁ…さて、どうなることやら。
◇ ◇ ◇
「さて…」
はやてを家に置いて、喫茶翠屋にやってきた俺。面倒臭いなぁ…いや、でも行かないと後々この家との関係に亀裂が走る様な気もするし、はやてとなのはは同い年だし友好的でいたいなぁ…仕方ない、行くか。
「おじゃましやす」
「あ、来たね。来ないかと思ってた所だよ」
「まぁ、あんなスパイみたいな方法で呼ばれたら行かない訳にはいかないでしょう?」
「それもそうか、ははは。さ、もう閉店にするから好きな所に座って待っててくれ」
そう言われたのは俺は手近のテーブル席に腰掛ける。いやはや、こういう店に来るとゆっくりしたくなるよねぇ。でもはやてに早く帰って来いって言われてるからな。さっさと終わらせないと
「お待たせ。さ、コーヒーでも飲んで話そうじゃないか」
目の前にコーヒーが置かれる。うん、まぁ少しくらい良いよね。コーヒー一杯位いいよね。はやても許してくれるよ。
「で、なんの用かな?」
「ああ、実は妻に聞いてね。以前君が僕の家族に少し楽をさせてくれたらしいじゃないか。そのお礼がしたくてね」
ああ、そういえば俺が喫茶店の下準備とかして手伝った事があったっけ?まぁ、あれは一宿一飯の恩で手伝っただけで、お礼を言われる様な事では無かったと思うんだけど…でもお礼がしたいって言うなら大人しく受け取っておこうか。その方が話も進むだろうし。
「ああ、どーいたしまして」
「それで、君のお願いを何か一つ聞こうじゃないか」
あ、やっぱり住居ゲットフラグだったわ。なんでやっちゃったかなぁ…ま、住居はもうあるので他の事を頼もう。さて…どうすっかなぁ………。
「じゃ、保留って事で。まだ何か頼みたい事も無いし」
「………そうかい。それじゃあ、何かあったらいつでも頼ってくれ」
「あいあい。それじゃ、大事な大事な義妹ちゃんを待たせているんでね。ここらで失礼させてもらいます」
「ああ、そいつは早く帰ってあげないといけないね。またのご来店をお待ちしております」
そう言って、俺達は笑った。さて、はやても待ってる事だし…最大最高速で帰るとしようか。
◇ ◇ ◇
「ただいまー」
「遅い…」
う、やっぱり拗ねていたか。そんなに時間を掛けたつもりは無かったんだが、この年齢じゃ仕方ないか?
「悪かったよ。ほら、もう遅いし…そろそろ寝よう」
「……うん」
俺ははやてを抱え上げて、ベッドまで連れていく。だが、ベッドの上に寝かせて部屋を出ようとすると、はやては俺の服を放さずに眠ってしまった。
無理矢理振りほどくのもなんだし、俺も此処で眠ってしまおうか。ああ、安心してくれ。いくら俺でも3歳児に手を出すほど見境ない男じゃない。ロリコンでも無いし。
「さて……これから頑張るとしますか」
これからの俺は、この腕の中にいる娘。八神はやての家族だ。ならば、この子とはこれから付き合っていかないといけないのだから。俺はそう考えつつ、はやてに添い寝するのだった。