それからという物、なのはちゃんの顔色は日に日に悪くなっていった。無論、原因は分かりきっている。先日のジュエルシードと呼ばれる魔法のアイテムによる事件が原因だろう。それに、あの日の様に転生者諸君がしつこいくらいになのはちゃんにベッタベタひっついている様で、それも疲労感を募らせる原因になっているようだ。
最近では学校には来る物の、魔法とは別の意味でも疲れる毎日を送っているようだ。一回家庭訪問した方が良いかな? とはいえ、そんななのはちゃんにも心が休まる時間はあるようで、昼休みにアリサとすずかとのお弁当タイムは楽しんでいるようだ。といっても、最近ではその二人との仲も怪しい物になっている。どうやらなのはの疲労感が気になる二人はなのはが何も相談してくれない事に苛立っているようだ。ままならないねぇ。
「じゃこれで授業終わりな。質問があるなら今だけな」
「せんせー! さっきの授業何一つわからなかったでーす! ベクトルって何ですか?」
「俺も知らん」
そんなわけで、今はそのお昼タイムの前の4時限目終わり。
最近、俺に突っかかってくる生徒が多くなっているのが最近の俺の悩み。なんでも、俺はそこそこ容姿が良いらしく、適当に見えて頼りになる所があり、そのギャップが良い! との高評価を貰っており、一部の女生徒からはファンクラブが結成されており、男子生徒からはファンクラブは無い物の、頼れる兄貴分的な立ち位置を貰っている。面倒な。
とまぁそう考えつつ職員室に移動してお弁当を広げる。俺はこの学校では最年少の教師であるみたいで、年上の女教師からはそこそこの人気を得ており、男教師からは後輩というよりは弟分的な扱いを受けている。何故だろう……何故だろう?
「さて、いただきま「せんせー」………なんだ?」
今まさに食事をいただこうとしたその瞬間、教員室の入り口から俺を呼ぶ声。そちらのほうへ視線を向けてみると、そこには最近話題の転生者の一人、會田蓮がいた。覚えてるだろうか、あのエロ本好きのちぐはぐ方言少年だ。
「ちょいと話があるんやけど……ええかいな?」
「………はぁ、何?」
「すまへんな………センセ。あんた、転生者と違うか?」
「はぁ?」
転生者、確かに俺は転生者だが、何故分かったんだろうか。俺は教師生活を送っていただけだし、何かしらのチカラを見せた覚えもない。なら、バレる訳もないのだが。
「転生者、意味的にとらえるとすれば死んで生き返った者……だけど。なんでそう思ったんだ?」
「この世界にセンセみたいな教師はおらん筈や。リリカルなのはのアニメではなのはの担任の教師は女性やった筈や。アンタやない」
「えーと………リリカルなのは? なのはというのは高町の事か? 確かにお前や火喰達は良く高町に寄って行ってるが……魔法少女?」
ここは隠し通そう。正直、ここで転生者とかバレたら面倒だ。こいつらが俺に関わってきそうな感じもするし。まぁ、軽く捻ってやるけど。
「……すまん! ワシの勘違いやった!」
「良いけど、中二病は程々にしとけよ」
「中二病ちゃうわ!!」
會田君はそう言って教員室を出て行った。まったく、人騒がせな。
「さて、いただきます」
俺はそう言って、最近料理スキルが上がってきているはやての作ったお弁当を食べ始めたのだった。
◇ ◇ ◇
「やっぱり、あのセンセは転生者とは違うみたいじゃ」
「ふーん……ってことは俺達が来た事によるイレギュラーかな? まったく、あのクソ神が、しっかり仕事しろよ」
「ま、ワシとしては転生者の火喰と組めて結構たすかっとるけどな」
「ああ、神崎の奴は正直一匹狼で組む以前の問題だ。それに、アイツの持ってるチカラはちょっと厄介だからな。正直、俺一人じゃ勝ち目がない」
教員室を出た會田は、同じく転生者である火喰隼人の下へやってきており、泉ヶ仙珱嗄について話し合っていた。なにより、珱嗄が転生者ではないかと言いだしたのは火喰なのだ。
「ま、そらそうやろな。アイツの無限の剣製はチートすぎるわな」
「他にも、ニコナデポとか魔力ランクEXにインテリジェンス、ユニゾンデバイス両方を持っていると来た。クソ神ちょっとサービスしすぎだろう」
「ワシの特典で対抗出来るとすれば……まぁ、魔力吸収位やなぁ」
會田の持っている特典は、魔力吸収と肉体成長の限界突破、最後に魔力ランクSSSだ。主に、近接戦での戦闘を得意とする転生者だ。その中でも、魔力吸収は発動された魔法や魔力で構成された物質を自身の魔力に還元して取りこむ事が出来るという物だ。つまり、魔力を使う物に対して圧倒的なアドバンテージを持つ。さらに、肉体の限界突破により、吸収出来る魔力量も膨大な物だ。
だが、それでも成長の限界が無いだけでその時点での吸収限界量はある。神崎の無限の剣製による質量攻撃は魔力構成された武器だからといって、吸収出来る量を遥かに超えている。
「まぁ、お前のそのスキルならある程度接戦は出来るだろう。俺も似た様なものだしな」
火喰の持っている特典は、騎士王の直感に約束された勝利の剣、さらにアルトリア=ペンドラゴンの戦闘経験、最後に魔力ランクSSSという徹底されたアーサー王ずくめ。経験を持っているが故に、その実力と能力の扱いには全く困らない。一応現在の年齢と肉体の小ささで本来の実力は出せないが、かなりの実力を発揮できる。更に、魔力の膨大さもあり、近接と遠距離の両方で戦闘を行なう事が可能だ。実質、このまま育てばかのアーサー王よりも強くなるだろう。
だが、やはりというか無限の剣製相手では全く効果が無い。というより歯が立たない。一応直感と経験で上回るので、近接に持ち込めれば火喰に軍配が上がるだろうが、それでも近寄らせることすらさせない質量なのだ。
「さて……神崎を潰す戦術としては、お前の魔力吸収で奴の懐に潜り込み、俺が叩く……こんな感じだが、それでもあと一押し足りないだろうな。そもそも、この戦術じゃ懐に入る前にお前の許容量が尽きる」
「そやろなぁ……それに、ワシら以外にもまだ転生者おるやもしれへんし」
「ああ、というか確実にいるだろうな。あのクソ神が言うには転生者は4人。そして、別の神の干渉でもう1人。計5人いる。とりあえず3人は分かっているんだからあと2人だ。原作に関わろうとしているなら同年代、少なくとも聖祥の何処かにいるか、フェイトの近くに潜んでいる可能性が高い」
「なるほど」
そう言うと、火喰はその場から立ち上がり、歩き出す。
「とりあえず、当面は神崎の動向を気にしつつ原作に関わって行く。一応、あの教師の事も気にかけておいてくれ。俺はもう一人の転生者を探す」
「了解じゃ。ほんなら、教室にもどろか。授業が始まってまうし」
そう言って、二人は教室に戻るのだった。