小説『Silent World』
作者:Red snow()

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第一夜 -灰色の世界-








「なぁ俺たち何のために生まれてきたのかな・・・」
と誰かが言った。
しかし誰も答えない。いや答えられないといった方が正しいか。
彼らは今から戦地に向かう。薄暗い明け方の道を行くトラックの荷台には
常に死の芳香が漂っていた。

彼らはまだ18歳にも満たない少年兵だ。長く戦争の続くこの国にはもう余裕がない。
中には女の子なんかも混じっている。

「私たちどこに配属されるんですか?」
女の子の一人が怯えながらも監視の兵士に尋ねる。
「お前たちの配属は第65偵察小隊 場所はスターリングラードだ。質問は?」
と兵士は答えた。同時に何人かは泣き出す。
「せ、戦況はどうなんだよ?」
青ざめた表情の青年が兵士に尋ねた。
「お前らも聞いているだろうが、連日敵の狙撃兵に将校や通信兵がやられてる。
お前らの任務はその狙撃兵を探し出して潰すことだ」

簡単に言うと戦況は最悪 だということだろう。

皆が下を向いている中でただ一人例外がいた。
上を向いてヨダレを垂らしながら寝ているのでとても目立つ
彼の名前は岩城蓮杜 この中では唯一狙撃学校から来ている。
隣には彼の観測手の如月秀介が下を向いて座っていた。

「なぁ蓮杜 俺たち死ぬのかな・・・」
秀介が寝ている蓮杜にしゃべりかける。

「・・・・・・・・・」
寝ているのか、無視しているのかどちらにせよ反応がない。

「よく寝ていられるなこんな時に!」
先ほどの青年が怒った口調で叫ぶ。
「あぁコイツはそんな奴なんだ気にしないでくれ」
秀介は慣れた様に切り返した。
「気にするなだと?目障りなんだよ!そういうバカみたいな奴はよ!」
青年は秀介に掴みかかった。

「もうやめてよ!こんな時に・・・」
さっきの女の子が嫌気がさしたように叫んだ。
「なんだと!?このクソ女が!」
今度はその女の子に掴みかかる。

「おいっ騒がしいぞ!静かにしろ!」
監視の兵士に銃を向けれて一瞬で静かになった。


やがてトラックが止まり兵士が叫ぶ
「着いたぞ!全員降りろ!」


そこは鳴り止まない銃声と砲声 漂う硝煙と血の匂いが鼻を突く灰色の世界。


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