小説『とある世界の主人公達(ヒーローズ)』
作者:くろにゃー()

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 上条当麻は不幸な人間である。
 しかし今日は過去稀にみる程の不幸がこのツンツン頭を襲った。
 まず朝。久々に目覚ましに頼らず起きたと思ったら目覚ましが正体不明の故障を起こし壊れてない時計で時間と確認すると、なんと時計の針は遅刻寸前を指していた。
 健全な学生である上条さんは勿論朝飯を抜き、血相を変え走った結果、大遅刻を果たし悪友の青髪ピアスと土御門元春にふざけ文句を散々浴びせられた挙句に担任の小萌先生からすけすけミルミルが下された。
 そんな最悪の午前も過ぎやっとの思いで昼休み、即刻速攻でパンを買うと通りすがりの三毛猫に食べかけ(しかも一口しか食べてない奴)を盗み取られ、こんな事もあろうかと買っておいた二つ目のパンは既にカラスの嘴(くちばし)に。……てゆうか、カラスが何でパンを持って行くんだよ。
 分かるだろうか?この地獄。しかも夏休みが迫ってきている七月の中旬。暑さが半端ないので空腹を激増するのだ。
 しかし俺は、そんな不幸と引き換えに右手に特殊な力が秘めている。

 どんな力もそれが異能の力なら問答無用で打ち消す能力。

 能力だけ聞いたらこの学園都市では希有で特殊な能力なのだがこれ又不幸な事に、身体検査(システムスキャン)ではLEVEL0と言うレッテルが貼られている。
 最近では不幸になりすぎで幻覚でも見てんじゃねーの?なんて思ったりもする。
 まぁ身体検査『システムスキャン』で結果を出せないんだから超能力か、俺の幻かは分かんねーけど。
 そんな不幸を絵にかいたような上条当麻は帰宅中、たまたま通りかかったコンビニでパンを買い、パンを開封した瞬間に

生き倒れに会った。

 まるでパンを見計らったように現れ、開封を待ち望んでたかのように腹の音が鳴る。
 いや……ゴォォォォオオオオオって鳴ったぞ?腹の虫どころじゃねえよ。腹の牛だよ。牛は牛でも闘牛級の雄叫びだよ。何年空腹と闘ったらこんな音出せるんだよ、人知超えてるわ。
 そんな長ったらしい突っ込みを終えるとある事に気付いた。
 俺は持ってるじゃないかこの右手に、パンを………三個目にしてようやく今にも口に入れれそうなパンを………一日苦しんだ空腹を満たせる絶好のチャンス。しかも四個目となると貧乏学生の俺にとって痛い出費となるのだ。
 そして決定打となったのは俺の腹の声だった。

グゥ〜←俺の腹の音

ゴガァァァァァァアアアア←牛の雄叫び

「俺の音ちっちぇーー」
 負けた……負けたよ腹の音で。しょうがなく、俺は生き倒れに近寄り、体を揺らす。
「お〜い。生きてますか〜」
 耳元で声を掛けると生き倒れは「ん、ん〜っっ」と体中の力を振り絞ったような声で唸る。
 死んではいない。そりゃそうだ、腹の牛が鳴いてたしな。
「ここにパンがありますけど………食べます?」
 パンを近づけ、反応を覗うが反応なし。
 俺は「あ…そうか」と頭の電球が点灯すると開封したてのパンを鼻に近づけ。すると生き倒れはパンの匂いに反応し、目を光らせ、獰猛な獣の如く俺の手を噛みつく。

「ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああ」

俺の手は、夕暮れの空より赤くなった。………………不幸だ……。 





とある悲鳴の数分後。三人称視点。

「あ〜ごめん。美味しそうな匂いがしたから思わず噛みついちゃった。……てへっ」
「そんな男のてへ顔見れたって上条さんのお腹が満たされる訳でも、手首の痛みが薄れる訳でもないのですよ〜」
自虐的に突っ込む上条。噛まれた時の血は止まっているがまだ痛みは若干ある。
「まぁ腹減ってんだったらなんか奢ってやるよ、多少のもんなら食わせれるし」
「本当ですか!!?って上条さんはさっきまで生き倒れだった奴がお金を持ていると思うほどおバカじゃありません!」
上条は腹が減っているせいか少しキレ気味で突っ込む。
生き倒れだった少年そんな上条に
「しょうがないな〜、俺の能力見せてやるよ」
と言い、近くにあった小石を拾う。親指の先から第一関節までくらいの大きさの小さな石だ。
「まさか……小石を使った能力でこの命の恩人を……」
「違う違う。見てろ」
と少年は持っていた小石を片手で包むように握り小石を隠す。
そして少年はその手をギュッと力を入れ、手を開くと――――――――

――――――――小石がビー玉になっていた。

「うわっ!どうやったんだ?マジック?魔法?」
「魔法なんてこの学園都市にある訳ねーだろ。科学だよ科学。超能力だよ。」
 少年は少し誇らしげに上条に指摘した。
 そして自分の能力を証明したいのか、只調子に乗ったのか手にあったビー玉を一口型サイズの四角いチョコレートにする。ビー玉がわずか三秒の間に歪な形になったり、鉄を溶かした様な鼠色になったり、虫がもがく時の様な運動をしたのだが上条は目を逸らした。因みにチョコレートは律儀に袋で包んである。
「喰えるよ。食べてみ」
 その言葉を信じているのか、いないのか、上条は恐る恐るチョコレートを手に取り、口に含む。
「あ……結構いける…」
 言葉の通り結構おいしかった。その辺で売ってるチョコレートと変わらない味。
 だがそれは貧乏学生である上条にとって高級のチョコレートより、なじみのある味だった。
 そんな上条を見てか、少年はその辺の砂をかき集めると掌に乗せる。すると砂の一つ一つがさっきと全く同じ、虫のもがく様な運動をすると一口型チョコレートになった。体積、形、質量も全てを無視した能力に上条は歓喜の声を上げる。

 が、上条には一つ疑問に思ったことがあった。上条が右手で触れているのにチョコレートは何も反応しないのだ。

「……お前の能力って何?」
「俺? 俺の能力はそこに物体があれば質量保存の法則を完全無視で作り変える能力。名前はまだないけど一応ここではLEVEL4の大気使いで通ってるよ。因みに大気使いと風使いの違いは風使いは風を起こすだけにすぎないけど、俺の大気使いは空気を自在に操る事が出来る。」
 かっこいい名前付けれる?と少年は付け足すが上条はいや、いいよと遠慮気味だったので少年は強く当たらなかった。
「まぁ喰えよ。味とかは俺が昔喰った時の味と同じだから。」
「いや、チョコレートばかりだと……。もっと別の物を……」
「へいよ」
 少年は二つ程チョコを口に含むと近くの木の枝を折り、近くの石ころを拾い、早速能力を使おうとする。
「そういや…お前名前は?」
 と上条がチョコを口に放り込むついでに質問する。すぐ傍に袋が三つあることからもう四つ目となるのだろう。
「ん?俺の名前は市元……」

「やっと見つけたぞ。大気汚染。」

『!!?』
 上条は一口チョコの包み紙を大気汚染と呼ばれた少年は能力で食料に変えようとしていた枝や小石を思わず落とし、後方からの声に反応し振り返った。
「蒼鹿……」
 大気汚染は蒼鹿と呼ばれた男を見るなりそう呟く。
「知り合いか?」
 既に危機感を感じとった上条は大気汚染に問い詰めると大気汚染は「ああ……」と返答する。
「ははっ! なんか変な奴が混じってんじゃねーか。まさか、もうお友達が出来たんでちゅか〜? 置き去りの能力者さんよぉぉ!」
 蒼鹿と呼ばれた男は炎々と燃える灼熱の様な赤のオールバックに白衣の男だった。
「お前名前なんてったけ?」
「教えねーよ。他人が簡単に割って入れるような世界じゃねーんだよ俺のいる世界ってのは」
 さっきとは180度近く真逆な冷たい声で大気汚染は言った。……さっきまで言おうとしてたじゃん。なんて突っ込みも、上条はしなかった。
 蒼鹿夕陽(あおしかせきかげ)。大気汚染の中では只の研究者だが、危険な武器を持っていたら?と考えれば一般人の上条当麻を巻き込む訳にはいかない……と大気汚染は思った。

そして、大気汚染は戦闘を開始する。





ここからは後書き。

大気汚染と書いて(エアーポルション)とルビを入れたかったのが本音。

-2-
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