小説『とある世界の主人公達(ヒーローズ)』
作者:くろにゃー()

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 蒼鹿と呼ばれたあの男はLEVEL2程度の発火能力者だが、近未来的な武器を幾つも持っており、 それで火力の弱さを補っていた。なのでこの場合、上条の右手が通じるか不安で防御は出来ず、参戦できなかった。が、そんな事、大気汚染には関係なかった。
 まず大気汚染は、火炎放射機から出る炎を躱すと大気汚染の横を川の様に流れ出る炎に手を入れた。

『!!?』

 蒼鹿、上条の両者が驚いたのだが、やはり上条は『大気汚染』と言う能力の内面を知らない分、蒼鹿より驚きが表情にも出ている。そして大気汚染は炎を掴み抜くと炎の剣が形成される。
 この場合、手に大気の膜を作り、そして火が活動できるよう空気中にある酸素を垂れ流して火を保たさせている。
 「ははっ!ちゃんと能力応用出来てんじゃん。」
 蒼鹿の高笑いを合図に大気汚染は、大地を蹴り蒼鹿との距離を詰める。そんな大気汚染を蒼鹿は蔑むように見ると、火炎放射機を捨て、握りしめた拳を前に出す。すると薬指に嵌めてある指輪がぴかりと光った。

「ん?」

 大気汚染は妙な危機感を感じとったがそれでも大気汚染は止まらない。今はそう。ただ炎の剣を振りかざせばいい。そう思った大気汚染は迷いなく剣を蒼鹿に振り下げる。と同時に……いや蒼鹿に触れる数秒前に炎の形が崩れ消えさる。 
「なっ!??」
 そんな驚きの言葉と同時に蒼鹿は、にやりと不気味な笑みを見せると背中から、翼の様な物が出現する。
 それは紛れもない、炎だ。
炎で出来た灼熱の翼。その両翼で無防備な大気汚染を槍のように突く。

「大気汚染っ!」

 大気汚染は腹部の激痛と炎による熱で一瞬、意識が朦朧としたが、上条の声で何とか意識が戻り、着地と同時に蒼鹿との距離を取る。
「大丈夫か??」
 上条が腹を抱える大気汚染に近寄る。しかしそんな上条を無視し、大気汚染は言った。
「その指輪……能力を使えなくする道具か………」
「残念ながらその回答では△だ。コイツは能力のレベルを自由に上げ下げする道具。」

 『なっ!!』

 二人はほぼ同時に驚いた。レベルを上げ下げできる道具。それがあれば戦闘だけでなく、日常ですら役に立てない能力者がいくつ救われるのだろう。そう考えるだけで学園都市の常識を一変する様な光景が予想される。しかも蒼鹿はLEVEL1〜2程度の能力者。なのに人を一包み出来そうな翼を一瞬のうちに形成し、それを自分の体の一部の様に操作した。これはLEVEL4並いや、LEVEL5にも匹敵出来そうだ。
 しかしこの状況に置いて、厄介なのはそこじゃなく、
「上げるだけじゃなく、下げるのも可能。って事は、俺の能力が使えねぇ。」
 大気汚染は悔しそうにそう言うと、
 突然蒼鹿が咳き込んだ。しかも手には血が。おそらくは吐血であろう。
「お、おい。どうしたんだよお前。」
 敵である蒼鹿を心配する上条を見て蒼鹿は言った

 「レベルと上げる能力と言うのは、知り合いの研究者が完成させたのもなのだが、あげれる反面、デメリットも存在する。だがそれを、俺は最小に抑える研究を続けた結果これだ。0の能力者には出来なくなってしまっただけでなく、一ランク上げた程度で鼻血、三つも上げれば吐血。四つ五つは想像も出来ん。」
 蒼鹿は血を白衣で拭う。と同時に大気汚染は立ち上がった。しかも、さっきまでのキズはどこにも見当たらない。

『な……?』

 二人の動揺には目もくれず、大気汚染はその辺から土を掬う、すると土が虫がもがく様な運動は始め、土が四つの手榴弾となった。そしてその手榴弾を蒼鹿に投げつける。
 「くっ!」
 幸運な事に両翼を維持した状態だった蒼鹿はぎりぎりで両翼を自分の身を覆うように手榴弾を防ぐ。翼には傷一つない。しかし、大気汚染は手榴弾の三つや四つで翼を破壊出来るとは思えなかった。だから大気汚染は余った土でショットガンを作り出す。しかもデュアル。

 「ははっ!やっと分かったぜテメェの能力。にしても貴重だっ! 弄くりがいがあるねっっ!」
 蒼鹿は背中の両翼でショットガンの銃弾を防ぎながら高笑いをする。何故、大気汚染が能力を発揮できるかと言うと、やはりこの物質変化の能力を使わせる為であろう。そして大気汚染は撃つのをやめた。と上条が思った瞬間、ショットガンを重ね、それらが合成し、突起物が出来上がった。それはRPGだった。
「おいおい、まさかそれを」
 蒼鹿の悪い予感は的中し、大気汚染はRPGを連発した。これは流石に、一発だけでも、翼にもダメージがあり反動もあった。是非もなしに、蒼鹿は一瞬のうちに両翼を広げ、空を登る。勿論それで諦める大気汚染でなく、空を舞う蒼鹿に標準を必死で合わせる。
「ちっ! しゃらくせえ!」
 そんな焦りを見せる舌打ちも蒼鹿は今も不敵に見つめている。そんな様子を見る第三者が遂に動いた。
「おい、大気汚染。手前に手を貸してやる」
「今取り込み中。」
大気汚染はぶっきらぼうにそう言いながら引き金を引いている。
「聞け、アイツを倒す方法が一つある。それには俺の力が必要だ。」
「何だ?お前は空間移動系能力者なのか? だからと言ってアイツに敵意を見せた瞬間に能力を無効化されるぞ」
「……いや俺は無能力者だ」
「じゃあ何だよ。」
「良いから聞け。」
大気汚染は若干呆れ気味に上条に耳を貸す。すると上条は

「何とか俺の右手でアイツを掴む。そうすればアイツは手段を失う。」

「はぁぁぁぁ????」
 大気汚染は心底呆れたように声を出す。
「いやいやいや、君、無能力者だろ???」
「ああ、そうだ。でも……」

「俺の右手にはそれが異能の力なら、LEVEL5の電撃だろうが神の奇跡だろうが打ち消せる能力を持っている。」

突拍子もないその言葉、しかし、その言葉はなんだか大気汚染には現実味を帯びた……いや、それどころか聞き覚えのある言葉だった。

「幻想……殺し………」

「ん? なんか言ったか?」

 不意に出た言葉。なんだか自分の生まれる前の映像が流れる様な……そんな感じだ。そして、なんだかこのツン頭にいらつきを覚える。
 (何だろう? アニメでモブとして出ていた時から好きだった、恋愛に対して奥手な隠れ巨乳キャラが主人公に恋してしまって、しかもアタックしているのに全く気付かない鈍感第一級フラグ建築士のラノベ主人公野郎が目の前に居るような感覚。)
「おいツンツン。とりあえずその頭殴っていいか?」
「なっ!!! 今はそれどころじゃないですよ。殴るならあの絶賛空中飛行野郎を殴ってやった下さい。」
「いや、お前が素直にそのウニの中身をぶちまけたい気分♪」
「なんで?? 俺は悪い事してませんよ??」
(そう。い・ま・は・な!!)
(な…なんですか? 大気汚染から、ゴゴゴとか言う効果音が聞こえる。)

「お〜い。作戦会議は終わったか〜?そろそろ待つのもあれ何で、こっちから攻撃しましょうか〜?」
 蒼鹿のふざけた様な脅しに、大気汚染は、RPGで答える。だが見事に空振りで終わり、虚しく煙だけが残る。
 
が。

 それだけで終わる大気汚染じゃなかった。

 RPGをもう一つ、作り出した。

「な、何処から作り出したんだ……」
 上条の問いかけに、大気汚染はただ、呆気もなさそうに、笑うと

「空気」

と答えるのだった。

「しかも今回はちょっと設定を弄った。……ついでに両方な、面白いもんが見れるぜ。」
と今度は心の底からの笑顔を見せると、RPGの二発同時撃ち。 
 勿論並の人間なら、RPGを乱発している時点で肩が脱臼しても可笑しくないのだが、彼には、そんな事気にしていなかった。多分彼が気付かぬ内に能力で身体を強化させているからかもしれない。
 だがいくら肩が丈夫でRPGを何発撃とうと、それを躱されれば意味がない。だから彼は設定を弄ったのだ。そう

「追跡機能だ。死ぬまで追いかけてくるぜ、それ。」
「くっ!!」
 蒼鹿は半信半疑で避けてみるが、大気汚染の言葉通り、弾は蒼鹿を追跡する。
「糞がッッ!」
 その掛け声と同時に翼で防御。そして翼はRPG二発に耐え切れず破壊され、翼を失った蒼鹿は墜落する。
 これは計算の内なのか、避けた瞬間、低い位置に移動した為、衝撃による反動込みでも無傷で着地できた。
「つん頭!!」
「おうよ!!」
 そして上条は大地を蹴り、蒼鹿に拳を向ける。蒼鹿はクソっ!っと言う舌打ちと共に指輪を向けるがそもそも上条は無能力者。何の違和感もない。
 そんな上条に蒼鹿は容赦ない炎を噴射させる。そしてその炎を上条は右手で打ち消し蒼鹿をぶん殴る。
 蒼鹿は上条の右ストレートで数メートルをノーバウンドで吹き飛ぶ。
 「すげえ」
 そんな上条と蒼鹿の攻防を見て、大気汚染はポカンとしていた。

-3-
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