小説『フェアリーテイル ローレライの支配者』
作者:キッド三世()

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第四十八話 囚われの王




バトルオブフェアリーテイル開始の合図後、まず最初にエルフマンが動いた。
姉であるミラを助けるため、一番に外へ飛び出した。


アルザックは目の前まで来て、

「ビスカ、僕が…必ず助けてあげるからね…」

そう言って出てくアルザック。


「…あんのバカタレが…ワシが、ワシが止めてやるゥゥゥ!!」

マスターが駈け出した。
が、
ゴン!

「!!?」
「ん!?じーさん!?」

マカロフの異常にグレイが気付いた。


「見えない壁じゃぁ…!」


「壁なんてどこにもねぇだろ!」


グレイがマカロフを引っ張ったり、持ち上げたりするが、どうしても通過できない。

<80歳を超える者と石像の出入りを禁止する>


「やられた……術式魔法」


カイルだけは気づいていた。限りなく言ったもの勝ちのようなルールを張れる魔法。


「術式…!?っ何て書いてあるんだ!?」


「うーむ…80歳以上の者と石像の出入りを禁止する…」


「言ったもん勝ちみてぇな魔法だな。…壊せねぇのかよ、じいさん!」


「…術式のルールは絶対じゃ」


悔しそうに言うマカロフ。
それ見たカイルは、ゆっくり歩き出す。


「ったく。しょうがねえな」


千の顔を持つ英雄でいつもの黒の戦闘服に着替える。


……………おい、グレイ。ジジイ。残念そうな顔すんな。


「俺たちがやるしかねぇな。アンタの孫だろうが、容赦はしねぇ。ラクサスをやる」


「カイル…、グレイ…」


見てわかる程の怒り。
その怒りは、仲間をこんな目にあわせた奴を許さない、そう語っていた。

五人を探しに走り出すグレイ。
カイルもそれに続こうとしたときだった。


「(ラクサスに勝てる者などおるのか…カイルなら雷を纏える倒せるじゃろうが、雷神衆の相手は奴がせねばならんじゃろう……エルザはもしかしたら…しかし、この状態では…)ん!?誰じゃ!」


「ウィ!?」


現れたのはリーダスだった。基本的に戦闘力の低い彼は隠れていたようだ。


「リーダスか」


「お、オレ…ラクサス怖くて…」


「戦うのは闘える俺たちに任せりゃいい。気にすんな」


「そうじゃ、よいよい、それより東の森のポーリュシカを訪ねてくれ」


「ウィ?」


「石化を治す薬があるかもしれん」


「ウィ!」


その時、ナツが目覚めた。


「ごぁーーーーー!」


「起きたぁ」


「あれ、ラクサスは?つか誰もいねぇ!?」


「!?(ナツがならばあるいは…)」


「じっちゃん、皆どこ行ったんだ?」


「(こやつの潜在能力に賭けてみるか…)ナツよ、祭りは始まった!ラクサスはマグノリアの中におる、さっさと倒してこんかぁぁぁい!!」


「おっしゃあああああ!!待ってろラクサs「ゴン!」ガッ!?」


「「「「「えぇえええええええええ!!!!!」」」」」


が、何故か術式の壁に遮られた。



「どーなっとるんじゃぁ!?ナツ、お前80歳か!?石像か!?」


「お、お前そうだとしたらとんでもねえアンチエイジングだな!!俺が歳とったら教えてくれ!!」


「んなわけあるかぁ!!知らねえよ!なんなんだコレ!!」



ぐぬぬぬぬと見えない壁を押すナツ。


術式の壁にゆっくり近づくカイル。
そして触れてみる。


「おいおい、俺も出れねえぞ」


「カイルも!!教えてもらう必要ないじゃん!!」


「な訳あるかぁ!!俺は今年で二十歳だっての間違いなく!!」


死んだとはいえ実の親はいたんだ。年齢について嘘は言わないだろう。


「一体どういうことなんじゃぁ!?」


「邪魔だこの壁ー!」


「ん?なんだ?」


突然術式が変わり、新しい文字が浮かび上がる。



「途中経過速報?…ん?ジェット対ドロイ対アルザック?何じゃこれは!」


「何でアイツらが戦ってるんだ…」


術式には、仲間であるはずの3人が戦っていることが書かれていた。


「…勝者…アルザック…。ジェットとドロイ戦闘不能」


「何ぃ…!?」


今度はアルザックが勝利し、ジェットとドロイが戦闘不能になったという文字が。
そして次から次へと、仲間同士の争いで戦闘不能になった者たちの名前が書かれ始めた。


「そうか……フリードの奴。街中に術式を仕掛けて闘わざるを得ない状況を作ってるんだ…」


カイルが術式の壁を探るように見上げる。

…そのためにはここから出なければいけないな。
つかさ、マジ何で出れないの?


「ぬあー!何で出られないんだー!この結界は80歳以上は通れない!ってことは、俺って80超えてたのかー!!?」


「そんなわけないと思うけど…」


「カイル!!こやつらの石化を解けんのか!?」


切羽詰まった様子でマカロフがカイルに問う。
が、カイルは眉を顰め、いまいましげに吐き捨てる。


「ディスペル(解除魔法)は俺の得意魔法じゃねえし、俺自身はノームを宿してるから解けただけで他の奴にやったら最悪砕いちまうかも…」


打つ手なしと思っているとまた新たに文字が浮かび上がる。


「残り時間2時間18分…、残り人数42人…!」


「42人!?仲間同士の潰しあいで、人数が半分以下!?」



「…………くそっ!!」


光の精霊王を呼び出し、滅びの閃光を手に宿す。


「ま、待て!カイル!!そんなとんでもない魔力開放したらワシらまで巻き込まれて…」


「うぉらぁ!!!」


壁を思いっきり殴りつける。カイルを中心に光の大爆発が起こった。


「「「「ぎゃぁあああああああああああ!!!!!」」」」


悲鳴が巻き起こるが、爆発が収まって壁を見てみると傷一つついていなかった。


「これでもダメか……」


破壊力で言えば最強の精霊王の攻撃だった……それでも傷一つなし。


「なんでだよ、意味解んねえ!?くぅ…」


「ナツ…」


珍しくナツが俯いてる。


「オレもまざりてぇ!!」


「「「そっちかい!!?」」」


前言撤回、やっぱりナツだ。


「何なんだよ、この見えねぇ壁よぉ!?」


「まざってどうする気じゃバカタレ!」


「最強決定トーナメントだろこれ!」


「どこがトーナメントじゃ!?ラクサスに乗せられて仲間同士で潰し合っとるだけじゃ!制限時間以内に雷神衆を倒さねば、エルザ達は砂になってしまう。そうはさせまいと、皆必死なのじゃ!正常な思考で、事態を把握出来ておらん!このままでは石にされた者達が砂になってしまい、二度と元には戻らん!」


「いくらラクサスでも、そんな事はしねーよ!ムカツク奴だけど、同じギルドの仲間だ!ハッタリに決まってんだろ?」


「ナツ…」


「これはただのケンカ祭り…つーか何で出られねえんだ!?」


「────ハッタリだと思ってんのか?ナツ」


馬鹿にしたような笑みを浮かべ、突然現れたラクサス。


「「な!」」


「ラクサス…!」


「…思念体か」


現れたラクサスは思念体。
ハハハッ、と楽しそうに笑い、近づいてくる。



「つーか、何でおめーらがここにいんだよナツ。…カイル、てめぇも」


「出られねえんだよ!!」


「おお、お前にカイルって呼ばれたの久しぶりだな」


だいたいフルネームで呼ばれてた。ちょっと驚きだ。


緊張した面持ちのマカロフがラクサスに近づく。


「仲間、…いや、アンタはガキって言い方してたよな。ガキ同士の潰しあいは見るに耐えられんだろう?ナツもエルザもカイルも参加できねぇんじゃ、雷神衆に勝てる奴はもう残ってねぇよなァ?
……降参するか?」


「まだグレイがいる!ナツと同じくらい強いんだ!雷神衆になんか、負けるもんか!」



俺がグレイと同じだとォ!?と騒ぐナツを押さえ、ラクサスを見やる。
ラクサスは馬鹿にしたような笑みを浮かべ、口を開く。


「グレイ?ハハハッ、あんな小僧に期待してんのかよ?」


「グレイを見くびるなよラクサス!」


うーん…強えのは認めるが……ビッグスローはフィギュアアイズがあるからな……グレイ多分知らねえだろ。
だが、雷神衆に勝てる可能性があんのはあいつだけだ…


今、ここにいる者たちに残された希望はグレイだけだ。
だが、現実は無情にもその希望を打ち砕いた。



「グレイ、戦闘不能。残り28人」


カイルが淡々と読み上げた。現実は現実と彼は受け止めている。


「ハッハッハ、だから言ったじゃねぇか!」


「嘘だ!絶対何かきたない手を使ったんだよ!」


ハッピーが言い返すが、術式の文字は正確なもので。

残り人数はたったの28人になってしまった。

ラクサスは勝ち誇った笑みを浮かべる。



「あとは誰が雷神衆に勝てるんだァ?」


「…っガジルだ!」


「ざんねーん。奴は参加してねぇーみてぇだぜ。元々ギルドに対して何とも思ってねぇ奴だしなァ」


「っ、俺がいるだろ!」


「ここから出られねーんじゃ、どうしようもねぇだろ」


その通りだ……せめて俺が戦えれば……


「…わかった。もうよい…。降参だ」



「!……おい!じーさん!!」


「なっ…!じっちゃん!」


マカロフの言葉に、思わず目を剥いた。

降参…?
本当にそれでいいのか?


その表情を見る限り、考えに考えた末の苦渋の決断なのだろう。

────だが、ラクサスはその降参の申し出を受けなかった。



「天下の妖精の尻尾のマスターともあろう者が、こんなとこで負けを認めちゃァな。…どうしてもってんなら、妖精の尻尾のマスターの座を俺に渡してからにしてもらおう」


「!…貴様ァ…初めからそれが狙いかァ…!」


「石像が崩れるまであと1時間半。リタイアしたければ、ギルドの拡声器を使って街中に聞こえるように宣言しろ。妖精の尻尾のマスターの座をラクサスに譲る、とな」


徐々にラクサスの体が薄まっていく。
思念体が解けるようだ。



「よォーく考えろよ?自分の地位が大事が、仲間が大事か…」


「っ、待ちやがれ!、っのわぁぁー!」


勢いよくラクサスに飛び掛かるナツ。
だが、ラクサスは既に思念体を解いており、体を通り抜けてしまう。


「大丈夫、ナツ?」


「お、おー…」


「もー。…というか、早くラクサスたちを倒さないと…、ん?」


ハッピーが心配そうに呟いたときだった。
カウンターの方から、何かをかじる様な音が聞こえてきた。



「…あん?」


視線を感じ、カウンターから顔を出したのは、黒ずくめの男────ガジル。
どうやら、食事をしていたようだ。



「ガジル!そこにいたのかよ!」



「、もしや…いってくれるのか?」



もしかすると、ガジルがラクサスたちを倒してくれるかもしれない。

よっ、と立ち上がったガジルに、マカロフが期待の目を向ける。



「…フン、あの野郎には借りがあるからな。まぁ、任せな」


マカロフの言葉にニヤリと笑い、術式の壁がある方へガジルが歩きだす。


「「「「だぁーーーーー!!??」」」」

ガジルも出られなかった。


「お前も80歳なのかぁーーー!?」


「んな訳ねえだろーーー!!」


「もしかしたらとは思ってたが……やっぱり…」


取っ組み合いになるナツとガジル。頭を抱えるカイル。


そんなやりとりをしているうちに、術式に書かれた残り人数は、たったの三人となっていた。


「おいおい…三人て……俺らじゃん!!」


生き残ってんのはカイルとナツとガジルのみとなったようだ。


「おいらは頭数に入ってなかったのかー!?」




「うわあぁぁどうすんだよー!」


「っおい、てめぇ!何とかできねぇのか!?」


今度はカイルの襟を掴むガジル。


「出来りゃとっくにやってるよ!!だいたい術式なんざみみっちい魔法は苦手なんだよ!!俺は!!」


「戦える魔導士はもういない…ここまでか…」


「仕方ねえ、エルザを復活させるか」


「「「何!!?」」」


「あーあ、せっかく二人を見返すチャンスだったのになぁ」


で、出来んのか!?ナツ!!


「ちょーっと待たんかい!?お前どーやって!?」


「燃やしたら溶けんじゃね?石の部分とか」


「やめーーーーーいっ!!??」


「エルザ達は身体の芯まで石になっちゃってんだよ!?」


「やめてよナツ!?」


理屈にもなってねえぞ……ナツ。


「やってみなきゃ分かんねえだろ?」


「よせっ!?エルザを殺す気か!?」


ナツは炎は手に、エルザの身体を擦った。


「こうして炙って…」


「火で擦るでないっ!?」


「つーかテメェ…手付きエロいぞ?」


そしてエルザの体にビシッとヒビが入った。


「ぎゃぁあああああああああああ!!!!!!!??」


「「「ウボァーーーーーッ!!??」」」


「しまったぁ、割れたー!?ノリだノリだ!ハッピーノリだぁーー!!」


「あいさー!?」


「バカヤロウ!そんなんでくっ付くか!オレの鉄をテメェの炎で溶かして、溶接しろぉ!!!」


瞬時に自分の腕を鉄に変えて差し出すガジル。意外と献身的だ。


「くっつくくっつかねえの問題じゃねえよ!!ノームで石作って何とか埋め込んでだなー!!」


「貴様らぁーーー!?」


パリーーンっと響き渡る音。ナツは瞬時に土下座。


「だぁーーーーーっ!!?ゴメンナサイッゴメンナサイッゴメンナサイッゴメンナサイッゴメンナs……ハァッ!!?」


すると見事に石化が解けたエルザがいた。


「熱い…お前かナツ!」


吹っ飛ばされるナツ。


「「エルザが復活したー!」」


「良かったぁ。しかし何故?」


「あ、あくまで推測だが……こいつの義眼のおかげだろう」


まあとにかく戻って良かった…


「カイル。やはりお前はその格好がいいぞ!!」


いつものに戻ったカイルを見てエルザがバンバンとカイルの肩を叩く。
いてーっす、エルザさん。


「反撃の時じゃ!」


そして、表示されてる残り人数に変化があった。


「私が復活して残り四人になったか……律儀な事だ」


その時、表示されてる残り人数に変化があった。

<残り、05人>

「!?」
「増えた!?」
「誰だ!?」

皆は石化した娘達の方を見た。
皆石像のままだった。

「皆石のままじゃ…一体…」

その時、エルザとカイルは気付いた様だ。


「あの男も参戦を決めたか…」


「やれやれ。いいタイミングで現れてくれんじゃねーの」


フェアリーテイル、もう一人の最強候補、ミストガン


「さてと、俺、エルザ、ラクサス、ミスト、フェアリーテイルトップ4が揃ったか…」


「ち、ちょっと待って!!カイルは出られないんじゃ……」


「あ……」


テ、テンション上がってきてて忘れてた……


「うーん…苦手だけどやるっきゃねえか…」


術式の前に座り、猛烈なスピードで計算を始めるカイル。


「ローグ文字の配列情報を文字マテリアルに分解して…ルール構築に使う単語をピックアップ、L・O・S・U…更にそれをギール文法に変換…」


「す、すげえ……俺には何言ってんのかわかんねえ…」


呆気に取られるエルザ達。だが周りの音は聞こえてないほどカイルは集中していた。


「二つの文法を違う速度で解読していき、一周して同期した文字の整数を…ギール文法に変換して…更にローグ言語化…」


すると目の前に少しだけ術式に開きが出来た。
ふーっと一息つくカイル。周りからは歓声。


「これで出られ……ブヘッ!!」


「なんとか俺一人分は書き換えた。が、お前らはまだだ。とゆーか無理だ。とりあえず石化だけでもなんとかして来る。来いエルザ」


「……やはりお前は……不可能を可能にする男だ」


フェアリーテイル最強コンビが参戦する。
すると後ろからマカロフが叫んだ。


「今頼れるのはお前らしかおらん!頼んだぞ!実力を見せてやれ!」


振り返り、同時に親指を突き立てた。


「「任せろ!!」」




















どーも、ようやくカイルも参戦です。雷神衆とは戦いませんが……それでは次回【さあ償いの時間だ】でお会いしましょう!!コメントよろしくお願いします。


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