小説『つぶやき』
作者:あさひ()

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最近思うこと↓



この世の『陽』の面だけを見ても、

『陰』の面だけを見ても、世界を理解することはできない。


いくらでも世界を決めつけることはできるけど、そうして決められた世界など真実であるはずがない。
ただのエゴイズムがひょんなきっかけを掴んで形を示しただけだ。
真実にはかなりの長い時間と冷静で我慢強い人間の判断による、地球上の大多数の人間をうなずかせられるような根拠がいる。


『陰』といえば、思いつくものに、裏切り、殺人、卑劣、侮辱があげられる。

それに反する、『陽』には、
優しさ、思いやり、愛、純朴、寛容
があてはまると思う。

私の周りには一見『陰』しか存在しないように思える。
そして、この世に『陰』しか存在しないと思い込んでいる人がほとんどだ。
しかしながら、世界は広く様々な価値観を持った人間がいる。


『陰』しか見えない世の中で、『陽』の要素を肯定できるか否かは、ただひたすら『信じること』にかかっているに違いない。そういう世界の中では、『陽』を実際に経験することは非常に難しい。仮に経験できたとしても、感情を伴った経験をするのは全くといっていいほど不可能だ。
しかしながら、真実を知りたいという欲求を持ち続けられる人がもしいるならば、その人は『陰』に没落することをいくらかは厭うだろう。そして自分の中の『陽』を見つけた時、世界に自分と同じような『陽』に出会う瞬間を信じて、
それをこっそり人目のつかない場所に隠しておく。『陰』に没落している人は自らの情欲に振り回されて、真実を知ることはできない。そしてそれが長年続き、取り返しのつかないことをして良心の呵責に苦しめられ、それを永久に乗り越えることができなくなった人間が『陽』について理解することすらできなくなる。
『陰』は『陽』の裏側にあるだけで、決して『悪』とイコール関係にあるわけではなく、仕方なく運命に押し流された結果、陰の中に溶け込んでいく人は多いに違いない。
また、したがって、『陽』が『善』とイコール関係にあるということもできない。

この世に悪が存在するなら、それに対抗する善が生まれるものだという考え方もあるが、
それを肯定することのできる素材は全くと言っていいほど見つからないが、皆無だということはできない。希望がないわけではない。『陰』しか見えないことが絶望ではないのである。



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