小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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プロローグ『転生』



まず初めに言っておこう。

「ここはどこだ?」

目の前は、というよりここ全体が真っ白な空間で何も無い。
方向すらもわからない、そんな場所に、ふと気づいたらいた。

「俺、どうしてここにいるんだっけ?」

確か俺は学校の帰り道にぶーらぶら歩いていて、それから……

「それから……どうだっけ?」

「貴方は死にました」

「ふーん、死んだんだ……って死んだ?」

声を発したのは、俺から言わせてもらうと美女であった。
漫画みたいな綺麗な金色の髪に、容姿の整った顔。
リアルでこんな美女っているんだね。
ビックリだよ。

「あら、嬉しいことを言ってくれますね」

「いや、事実ですしって、何人の心読んでるんですか」

「神様に人の心を読むことはデフォルトです」

あ、デフォルトなんだ。
神様って言うくらいだし、当然といえば当然か。

「ま、いっか。 そういえば、なんで俺ここにいるんですか? 死んだってどういうことですか?」

「ごめんなさいっ!」

いきなり頭を下げられた。
何もして無いのに罪悪感が半端無いんですけど……。
しかも、こんな美女に……。

「俺、貴女に謝られるようなことされてませんよ? 貴女とは今初めて会ったんですし」

俺には貴女が頭を下げる理由がわからない。
てか、これってどういう状況なんだ?

「えっと、非常に申し上げにくいのですが、私の不手際で貴方を間違えて殺してしまったのです」

「あ、なるほどね。 だから謝られたわけか。 納得納得。 で、俺はどうやって死んだんですか?」

「………………」

「……あの、どうかしたんですか?」

急に黙り込んだりしてどうしたんだ?
俺を見たまま固まってるし。

「あ、いえ、怒らないんですか?」

「まあ、確かに死んだのは嫌ですけど、もう過ぎたことですし、そもそも俺にはそれをどうすることも出来ない。 諦めるしかないじゃないですか」

俺はただの人間で、人よりちょっといろいろと優れていた程度の高校生だ……いや、死んだんだから“元”か。
そんなありふれた一般人の俺が、死という絶対的なものに逆らえるはずも無い。
だから、俺に諦めることしか出来ない。

「………………すみません」

再び謝る神様。
そんな顔で謝られたら、ざ、罪悪感が……。

「と、というより、俺の死因ってなんなんですか?」

「あ、貴方の死因ですか? 心臓麻痺です」

「どこの死のノートですか、それ……」

死因が心臓麻痺って、某死神の落としたノートの標的の死に方じゃんか。

「で、俺はどうなるんですか? 地獄にでも行くんですか? それとも消滅ですか?」

「……どうして地獄や消滅だと思ったんです? 大抵の人は天国や生き返らせろって言うと思うんですけど……」

「いやだって、天国にいけるようなことした覚えないですし、生き返ったところで元の世界にはどうせ戻れないと思いますし。 地獄や消滅の方が妥当だと思うんですけど。 まあ、興味本位でもあったりするんですけどね」

天国と地獄って、どんなのか気になるでしょ?
え、気にならない?

「……貴方、どれだけ自分を過小評価してマイナスでネガティブ思考なんですか……。 貴方、悪いことしてないじゃないですか。 私の方がずっと悪いことをしているじゃないですか」

「そう、ですか?」

つまみ食いしたり、人をからかったりしてたのに?

「やっていることは、とても地獄に行くようなことじゃないです。 人間、一度は誰しもがやる、コミュニケーションです」

「そうだったんですか? それは知らなかったな」

俺は自分自身を過小評価しすぎていたのか。

「じゃあ俺はどうなるんですか? 地獄に行くわけでも、消滅しないとなると、天国ですか? それとも輪廻に流されるんですか?」

「いえ、貴方には転生してもらいます」

「は?」

転生?
輪廻転生じゃなくて、転生?

「はい、転生です。 そもそも貴方は私の不手際で死んでしまったので、別の世界に転生させることになっているんです。 二度目の人生です」

おいおい、まじでテンプレ転生か。
リアルにあるんだな。

「そんな感じです」

てか何で神様がテンプレ転生なんて知っているんだよ。

「神様だって娯楽を楽しむんです」

それでいいのか、神よ。

「いいんです」

……心読むって便利だな。
瞬間的に人の心読めるから、言葉を発して、聞き取って、理解する時間が無いじゃん。

「転生なんてあるんだな。 意外な新事実だ」

そもそも神って存在すらあまり信じてなかったしな。
まあ、その神様(しかも超美人)が目の前にいるんだけど。

「んで、俺はどうすればいいんだ?」

いきなり転生してくださいなんて言われても、どうすりゃいいかなんてわかんねえぞ。

「あ、その前に、貴方が行く世界を教えておきますね」

へえ、俺でもわかるんだ。

「貴方が行ってもらうのは、『IS』と呼ばれる世界です」

「IS? なんだそれ?」

どっかで聞いたことのあるような気がするんだが、いかん、思いだせん。

「あれ、知りませんか? 貴方の世界ではそれなりの知名度はあると思うんですけど……」

「あ、これってアニメとかラノベか。 通りでどっかで聞いたことがあると思った」

あっ、そういえば、前に友達が貸してくれるって言ってた奴か。
まあ、読む前に死んじまったけど。

「貴方にはその『IS』という世界に転生してもらいます。 正確には限りなく近い世界ですが」

「ふーん。 じゃ、転生させるならよろしく」

「あ、まだです。 転生させるにおいて、貴方には私の方から能力をあげることになっているんです。 貴方の世界の漫画やラノベに出てくるものでも構いませんよ?」

確かにこれ使ってみたいなーとかあるけど、考えると長いし。
俺、一度悩むと大体滅茶苦茶長いんだよな。
特にこういう選ぶ奴は。
ゲーム買うかどうかで一週間くらい悩んだこともあるし。
携帯の見た目を選ぶだけで三時間かけて、親に怒られたこともあるし。

「ということで、貴方が適当に決めてください。 俺、そういう考え出すと滅茶苦茶長いんで、貴方に任せた方が早いです」

「いいんですか? 本当に滅茶苦茶にしますよ?」

「別に構いませんよ。 また死ぬことにならなければそれで。 あ、できれば俺の知っている奴でお願いします」

また死んで、せっかくできた友好関係を崩したくは無いしな。
もしそんなことになったら、親や友達が悲しむし。
身内や友達のそんな顔、見たくない。

「わかりました。 では、私が私の趣味やら何やらで勝手に付けさせてもらいますね。 その力の使い方は転生させたら貴方の記憶に入れておきますから、悩まずに済みますよ」

「あ、わざわざありがとうございます」

この神様、いい奴だな。

「いえいえ。 元はといえば、私が間違えて貴方を殺さなければこうはならなかったんですし、当然ですよ」

微笑みながら言ってくれた。
うん、美人だからとても綺麗だ。
見惚れるな。

「〜! ささ、貴方を転生させますよ!///」

あ、急に顔が赤くなった。
神様でも照れたりするんだ。
意外な新事実!

「……あ、貴方、私をからかっているんですか?」

「そんなつもりは無いです。 神様って人間から遠くかけ離れた存在だと勝手に思っていたので(そもそもさっきまでほとんど信じてなかった)、人間味のある神様だと思っただけです」

「世界や生物は神が創ったものなんですよ? 神様が人間味があるのではなく、人間が神様に似ているんですよ。 そう言う風に創られたのですから」

「へえ、そうなんだ。 知られざる真実って奴だな」

神に出会ってこそ知れることだな。
何かちょっと得した気分だ。

「……貴方、変わってますね。 間違えて殺されたのに、怒ることもなく、ましてや得した気分になるだなんて、貴方みたいな人は初めてです」

「それが俺ってことで」

俺は俺。
過去の人は過去の人。
似ていることはあっても、まったく同じなんてありえない。

「んじゃ、お願いします」

「あ、転生する際に注意事項が一つ。 赤ちゃんからになりますから、そのつもりで」

「……え?」

赤ちゃんスタート?
俺に羞恥プレイを味わえと?

「その点は大丈夫です。 三歳になったら記憶を思い出させますから」

それなら良かった。
高校生にもなって赤ちゃんプレイなんてしたくないからな。

「では、新たな人生を満喫してくださいね〜!」

俺は淡い光に包まれ、意識が消えた。



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