小説『IS インフィニット・ストラトス 〜闇“とか”を操りし者〜』
作者:黒翼()

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第十三話『ISと会談』



「今更で今頃なんだが、本当に高校に行くのか?」

世の受験生たちと同じように、一夏も受験勉強をしていた。

「ああ。 いつまでも養ってもらうのも気が引けるからな。 せめて高校くらいには行っておきたいんだ」

「その理屈はわからんではないんだが、篠ノ之束がお前の存在を知っていたら、何をどうするかはわからない。 もしかしたら、一夏を織斑千冬の元に帰そうと、行動するかもしれないんだぞ?」

「そうなったらそうなったで、何とかするさ。 まあ、なったらなったで、刹那兄たちの目的も達成しやすくなるしな」

「それはそうだが……」

家族には過保護である刹那は、一夏が何かの犠牲になることを望まない。
自分たちの目的よりも、一夏のためを思っているのだ。
だから、渋っているのだ。

「やらせてあげればいいじゃない」

「そうよ。 一夏も子供じゃないんだし、やりたいようにやらせてみれば?」

琉歌と夜空は、刹那に向けてそう言う。

「わかったよ……。 好きにしな」

結局、刹那が折れたのだった。




 ☆




「じゃ、行ってくる」

時は流れ、一夏の受験の日になった。
一夏の受ける高校は、近所の公立高校である。

「ああ、行ってらっしゃい」

「気をつけなよ?」

「もしも篠ノ之束が一夏の存在に気づいているなら、何か行動を起こしてくるはずだから」

「わかってる。 まあ、行ってくる!」

一夏は家を出て行った。
その直後、刹那の瞳が七色に輝いた。
『千里眼A-』が効果を発揮したのだ。

「これは……」

「刹那、どうしたの?」

「まさか……未来視?」

稀に発動する未来視。
それが今発動したのだ。
滅多に発動しない未来視だが、それで見た物は、実行すれば必ず当たる。
その時だけ、刹那の瞳は七色に輝くのだ。

「ああ。 一夏は、IS学園に行くことになるよ」

刹那が見た未来は、一夏がIS学園にいるところであった。




 ☆




「あー、こりゃやられたな……」

そんな未来を見られたのを知らない一夏は、そう呟いた。
なぜなら、一夏の目の前にはISがあったからだ。

「最初から嵌められてたわけか……」

そうでなければ、目の前にISがあることがおかしい。
嵌められていなければ、こんなところのISがあるはずが無い。

「で、どうせこれは逃げれないフラグなんだろうな……」

一夏はスキルは無いが、確信していた。
そして、そこに荷物を山積みに持った人が現れ、前が見えづらい所為か躓いた。

「ちっ」

一夏はそれを見て、身体を動かした。
別に助けなくてもいいのだが、助けなかったら助けなかったで、自分が赦せなくなるから、一夏はその人を助けた。
助けれるだけの力があるのにそれをしないというのは、一夏にとって赦せないことなのだ。

「うおっ!?」

ISが近かったのが災いした。
躓いて倒れる人を助けた拍子に、なぜか足下にあった紙に足を滑らせ、倒れる人の勢いに流されるまま、後ろにあったISへとぶつかったのだ。
そして、フラグが成立した。
そう、ISが起動したのだ。

「あ、ありがとうございます……って、嘘!? 男が……ISを動かしてる!?」

「やっぱりこうなるのかよ……」

一夏は無気力にそう呟いた。




 ☆




刹那の未来視通り、一夏はIS学園に強制入学することとなった。
一夏がISを動かしたことが全世界に知れ渡ったのだ。
そして、世界中で男性を対象にISに触らせて、他に動かせる男がいないか探し始めた。
当然、それは一夏の義兄の刹那もやらされた。
もちろん起動したのだが、今は刹那と国のお偉いさんが会談している。

「保護のために、貴方にもIS学園に入学していただく……」

だが、そのお偉いさんはびくびくしている。
それは、刹那が殺気を出しながら、苛立たしげに、そして笑っているからだ。

「一夏が動かしてしまったことはもう世界に知れ渡っているから仕方が無いとしよう。 けれど僕に、白騎士事件で両親に一生の怪我を負わせ、僕の妻の両親をも奪ったISに関われと言うのかい? 挙句の果てに、何のケアもしてこなかった君たちは、今頃手の平を返す。 僕たちがISを動かせる理由を調べようと、『保護』という名目を利用して僕たちを実験台として利用するだけだろう。 違うかい?」

刹那の瞳は、冷徹に、冷酷に、絶対零度の殺意を持って、お偉いさんを貫いていた。

「それは……」

「何とか言いなよ。 ねぇ?」

「……違います」

間を空けながらもそういうお偉いさん。

「へぇ、あくまで白を切るんだ」

「白を切っているわけでは……」

「ねぇ、僕が知らないとで思ったかい? 君たちが裏で人体実験をしているのを、知らないとでも思っていたのかい?」

「っ!?」

それは、国の超国家機密であった。
だが、『カオス・クリスタル』のクラッキング能力の前では、国家機密であろうが何であろうが、その程度のことは障害にすらならない。

「まったくもってくだらない。 ISなんてそんなしょうもない兵器のために、苦しむ人々を見捨ててきて、今更『保護』? 笑わせないでくれ。 そんな茶番に僕たちを付き合わせるな」

「………………」

部屋に沈黙が走る。
だが、その沈黙を破ったのは、意外なことに刹那であった。

「そう言えば、織斑千冬の弟さん、見つかりました?」

「な、何を……?」

「まあ、見つかる訳無いですよねぇ。 何たって、僕の弟、闇影一夏こそが、その織斑一夏当人なんですからねぇ」

「なっ!?」

それをばらしてこの反応だと、まったく知らなかったと言うことだ。

「そんな馬鹿な! 国が総力を挙げて探していても見つからなかったのに、死んだと思われていたのに!」

「あの日、一夏を助けたのは他ならぬ僕ですからね。 国が弟を誘拐されたという事実を、決勝戦終了後に言われた、織斑千冬は、どう思ったんでしょうねぇ? どうせ、それを知ったのは決勝戦が始まってからだ、とでも言ったんでしょう?」

「………………」

刹那は、あの日、何故織斑千冬が救助に来なかったのを調べた。
織斑千冬はあの日、あの場所に来た。
それは、仕掛けておいた監視カメラに映っていたため、知っていた。
あの時の織斑千冬は、焦燥と絶望に染まっていた。
その様子からして、織斑一夏を大切に思っていたということは推測できる。
だから、刹那は調べた。
その結果、ドイツ軍が得ていた情報を知っていたのにも関らず、国が言わなかったということが判明した。
国は、一人の人間よりも、日本の栄光を優先させたのだ。
そして、織斑千冬は情報を提供したドイツ軍に、一年間教官をしていたのだ。
ちなみに、そのことは一夏も知っている。
だが、一夏は織斑千冬の元へとは帰ろうとはしなかった。
織斑千冬の元よりも、闇影刹那たちの元で暮らした方が、自分のためになると、そう判断したからだ。

「それを知った織斑千冬が、日本のことをどう思いますかねぇ?」

「っ!」

お偉いさんたちは、刹那が言いたいことがわかってしまい、目を見開いて驚いていた。

「何てね。 怖かったですか? 怖かったですよねぇ? まあ、言いませんから安心してください」

殺気は消し去り、嘲笑を浮かべる刹那はそう言うが、安心できるわけが無い。
そんな情報を知っている者を、国の不利益にしかならない情報を持っている者を、生かしておくわけにはいかない。

「ああ、馬鹿な行動はしないでくださいよ。 しようとした瞬間、死にますよ?」

ここは刹那が用意した場である。
当然、隠し兵器など、無数に存在する。
この程度の人数を、一瞬にして消し去ることなど、容易である。

「それと、これは忠告です。 僕たちに手を出そうものなら、容赦はしませんから。 僕たちの邪魔をしないようにしてくださいね?」

もう、お偉いさんたちは従うしかなかった。
もう、本能的に悟ってしまった。
闇影刹那を怒らせてはならないと、闇影刹那には敵わないと、そう悟ってしまっていた。

「僕の出す条件を呑んでくれるのなら、IS学園に行きましょう」

もう、刹那の独擅場であった。



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