小説『とくべつの夏 〈改稿版〉』
作者:sanpo()

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  エピローグ

  1975’3/17

  今日はクレタ島へ行って来た。残念ながら僕の〈オーファン号〉ではなくて島巡りのフェリーで。
  着いて驚いた。ミロスと比べると桁違いに大きな島だった!
  まず、クノッソス宮殿へ行った。ミノタウロスを捜したけど、残念!会えなかったよ。(なんてね。)
   とはいえ、ここはハイスミスの話題作『迷宮の殺意』を読んで以来訪れてみたいと思っていた場所だ。
  全体に涸れた雰囲気だった。
   〈墓堀人〉に薦められた考古学博物館へも行った。石棺の壁画が素晴らしい!一見の価値ありだ。
  百合の中に佇む王子はもとより、僕はその背景に痺れてしまった。
  周囲の観光客は不思議に思ったに違いない。
  何故って、僕は金縛りにあったみたいに立ち竦んでいたから。
  あの赤ときたら……!
  僕の故郷の島の夕焼けの色だ。
  島の夕焼けは世界中何処でも同じ色なのだろうか?
  クレタ人が繰り返し使う赤の意味がわかったぞ!あれは夕焼けの色なんだ!
  彼等(そして僕等)島民に染み付いた燃える空の色……!
  勿論、僕等の体内を流れる血潮の色でもある。

          *

   そういうわけで、今日は少々ホームシックだ。僕の島が恋しい。
  あの〈赤〉を見たからかな?
  今夜ばかりは当地のサモス酒やウゾやレチーナなんかじゃなくて「キール!」と叫びたい気分。

          *

   クレタ島特産のロゼワインで我慢してる。
  帰りのフェリーの甲板で、今それをボトルごと飲みながら僕は考えている。
  いつの日か、愛する人とこんな風に夕焼けの海を眺めながら盃を交わす時が僕にも訪れるのかな?
   それはどんな人だろう?
   まだ見ぬ未来に乾杯!


                                    〈  了  〉

     
     
      ☆最後までお付き合い下さってありがとうございました!
      ☆次頁に本編に関するちょっとしたメモを記してあります。よろしかったら覗いて見て下さい。

      ★この作品の雰囲気がお嫌いでなかった〈貴方様)へ。
       (小説家になろう)にて推理部門・R15、ボーイズラブのタグで連載始めました。
       タイトルは「HERDー群れー」
       主人公は連続殺人鬼を追う若き警官、囮捜査を志願する美少年が絡みます。
       興味のある方、読んでみてください^^

      ★星空文庫のサスペンス・恋愛・青春タグ「カタコンベ」もこの系列の短編です。
       よろしかったらぜひ!
   

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