小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第三十八話『別荘に帰宅』



Side〜ウリア〜

「ここが……」

「そうです。 ここが別荘です」

今、一夏は私の別荘に連れてきています。

「……家というより城だな」

「通称『冬木のアインツベルン城』です」

ちなみにここは冬木市といいます。
そこにあるアインツベルンの城だから『冬木のアインツベルン城』です。

「通称って、誰が言っているんだ? ここって認識阻害や結界が張ってあるんだろ? 一般人じゃあ

到底知れない場所だろ?」

「御爺様がそう言っています。 ドイツの本宅も『アインツベルン城』と呼ばれていますからね」

「そういうことか」

区別をつけるためらしいです。
あ、そういえばここ、都市伝説と化したりしているらしいです。
いくら認識阻害を掛けていても、稀に見られるようです。
城が巨大ですから、術式が完全に起動しない瞬間があるらしいんですよ。
だから、冬木市の都市伝説と化しているんです。

「さて、入りましょう。 もう結界の中ですから、皆出てきていいですよ」

私がそういった瞬間、ギルガメッシュとイスカンダルが我先に、といった感じに出てきました。

「ようやく実体化できたのう。 嬢ちゃん、今回はどれほどここにおるつもりだ?」

「しばらくはいるつもりですよ。 一夏もここでしばらく過ごしますからね。 結界の外に出なけれ

ば、実体化していて構いません」

「その言葉、信じても良いのだな?」

「大丈夫です。 少なからず一週間はここにいますから。 くれぐれも、結界の外には出ないでくださいね? ギルガメッシュ、イスカンダル。 いいですね?」

この二人は以前結界の外に出ましたからね。
あの時は正直焦りました。
私服ならまだしも、鎧姿で出るんですから、見られたらどうしようかと冷や冷やしました。

「安心せい。 出はせんさ」

「ふん、仕方が無い」

……ギルガメッシュが心配です。
……そうですね、もし出たらちょっとお説教をしましょう。

「……個性的だな」

「まあ、英雄とはそう言うものですよ。 普通な人が英霊と化すなんて、そうそうありえませんよ」

ごく普通な性格の人が、英霊となったら凄いことですよ。
リグレッターだって、私への愛が暴走した結果、自分を英霊にさせたって言ってましたし。

「ただいま戻りました」

「お邪魔します」

玄関から家に入る。
うん、相変わらず煌びやかな家ですね。

「お帰り、ウリア。 ……それと、貴様が私のウリアを奪った小僧か」

「お父様?」

お父様が出迎えてくれましたが、何か不穏なことを言っていませんでした?
後半殺気が漏れていましたよ?

「いやいや、よく来たね。 織斑一夏君、歓迎するよ」

「代わり身早っ!」

一夏が何か突っ込んでいますが、気にしませんよ。
気にしてはいけませんよ?

「ふむ、ここは中々綺麗だな。 流石、と言ったところか」

ふと気づいたらアレイスターが実体化していました。
いつの間に……。

「……ウリア、その人が?」

「はい。 一夏が召喚した、アレイスター=クロウリーです」

「……伝説の魔術師にこう言うのは失礼だが、悪意の塊だな。 見ているだけで不快感を感じる」

「それが私のスキルだ。 世界最大悪人とまで言われた、私だからこそのスキルだな」

アレイスター曰く、『悪意』だそうです。
しかもランクは規格外なEX。
考えただけでも不快感を与えるそうです。
ただ、アレイスターが認めた人にはその不快感は感じなくなるそうです。
私は感じないので、どうやら認められているみたいです。
なぜでしょうか?
一夏の恋人だからでしょうか?

「では、早速私のマスターには魔術の勉強をしてもらうぞ。 魔力くらい、安定させてコントロールしてみせろ」

「ああ、わかってる。 暴走させたら迷惑を掛けちまうからな」

「マスターは任せたぞ」

「はい」

アレイスターは生前、とある都市の統括理事長というのをやっていたようで、しかもそこは科学に発展した街だったようです(魔術を捨て、科学に走った所為で世界中の魔術師を敵に回したみたいです)。
なので、機械にも詳しいみたいなんですね。
そういうこともあり、アレイスターは何かを作るみたいなんですね。
何を作るんでしょうか。
科学がこの世界よりも発展しているようなので、私の想像を超えるものが出てきそうです。
ISも霞んでしまうほどの代物が出来上がりそうな気がします。

「さあ、一夏。 今日もみっちり魔力コントロールの練習をしていきますよ」

「おう!」

一夏の気合は十分ですね。
私も一層やる気がおきましたよ。




 ☆




「今日はここまでです。 お疲れ様でした」

「乙カレ〜」

夏休みに入る前から練習していたので、そろそろ一夏の魔力コントロールの特訓も終了しそうです。
私たちは魔力コントロールの練習をしていたのですが、一夏は大の字に寝っ転がっています。
慣れるまではかなり集中する所為で、精神的な疲れがあるんです。
でも、一夏は大分魔力をコントロールが出来てきました。
これなら暴走させることは無いでしょう。
にしても、本当に呑み込みが早いですね。
一夏の才能ですね。

『リグレッター、貴方はまだ実体化しないんですか?』

リグレッターっていつも一夏がいるときは実体化しないんですよね。
アレイスターを召喚したときは気絶していましたし、まだ一夏同士会っていないんですよ。

『いや、何か会う気になれなくてな』

『私に憑依をして会話をしていたのに?』

『そのときは俺の正体もばらしてなかったし、マスターに憑依していただけだからな。 俺の性別も正体もわかりはしない。 まあ、口調で男だってばれていると思うがな』

『……少なからず夏休み中には会ってくださいよ? 同じ一夏なんですし、直接話した方が伝わりますよ』

『だよな〜。 んじゃ、いっちょ出るとするか』

そういうと、リグレッターは実体化しました。

「ん? ウリアの英霊か……って、どこかで会ったことがあるか?」

一夏はリグレッターを見るとそういいました。

「そう思うのは当然であり、必然だな。 なぜなら、俺はお前で、お前は俺だからだ」

「は? 何を言って……」

いきなりそこを言いますか。
まあ、一番手っ取り早いですからね。

「俺の真名は織斑一夏。 未来のお前だ」

「み、未来の、俺ぇ!?」

一夏は目を見開いて驚きます。
まあ、目の前に未来の自分がいるとなれば、驚くのもわかります。

「俺は返り血に濡れ、後悔に溺れたお前の成れの果てだ。 だから、お前にはそれを味わってほしくない。 お前のためにも、マスターたるウリアのためにも」

「……今までウリアの体に憑依して俺を鍛えていたのはお前なのか?」

「そうだ。 俺が弱かったから、俺が無力だったから、今ここにこうして俺がいる。 俺は、俺が見た未来にしないために、お前を強くして最悪の未来を変える。 そのために俺は召喚された」

「……お前が、未来の俺が見た最悪の未来って何なんだ……?」

一夏は恐る恐ると言った感じで未来の自分へと問いかける。
おそらく、推測は出来ているのでしょう。

「……ウリアが、アインツベルンの人間が皆殺しにされる未来だ」

「っ! ………………やっぱりそうなのか……」

リグレッターがそう言うと一夏は息を呑んだ。
やっぱり推測できていたんですね。

「俺が、弱かったからなんだよな……」

「俺が弱かったから、ウリアを守れなかったから、この俺がいる。 だが、今のお前には俺には無くてお前にはあるものがたくさんある」

「…………それは何なんだ……?」

力なく問いかける一夏。
自分の無力で未来の私を殺すことになることに、何か思うことがあるのでしょう。

「俺の時にはなかったのが、俺の存在と、アレイスター=クロウリーの存在だ」

「お前と、アレイスター……?」

「そうだ。 俺の世界でマスターが召喚したのは別の英霊だったし、俺は魔術師になれなかった。 俺は、アレイスターを召喚することも無く、魔力に目覚めることも無く、ただひたすらに剣を振るい続けた。 だがお前にはそれがある。 未来を変えるだけの力を手に入れる手段がある。 未来を変える力がある。 だから俺は、お前が俺と同じ運命を辿ることを赦さない。 それだけの手段を持ちながらウリアを殺す未来にするのなら、俺はお前を永遠に怨み続けてやる」

「……当然だな。 それだけの違いがあって、ウリアを殺す未来になるのなら、お前に怨まれること

も無え。 俺は自分で自分を呪う。 だから、そんな未来には絶対にしねえ!」

一夏の目に決意が見えました。

「なあ俺」

「何だ俺」

「俺を強くしてくれ。 全てからウリアを守れるくらいに」

「ふっ、当然だ。 元より俺はそのためにこの時代に現界したんだ。 ……容赦はしねぇぞ。 覚悟はいいな?」

「ああ、いいぜ。 ウリアを守るためだ。 どんな特訓にも耐え切ってやる」

一夏同士が向き合い、覚悟の籠もった瞳で互いに見合っていました。

「明日からだ」

「今からでいいぜ」

「馬鹿野郎。 今は魔力コントロールで精神的に疲れている。 そんな状態でまともにやれるはずがない」

「まだ一夏の魔力コントロールは未熟です。 ……が、暴走が起こることはそう簡単には起こらない

までには上達しています。 なので、コントロールの特訓の密度を少し減らします。 その代わり、一夏同士、そちらの特訓に時間を割きます。 いいですね?」

「助かるぜ、マスター」

「魔術もISも、この夏休み、みっちりしごいてくれ!」

一週間ほどで学園の方に戻るつもりでしたが、これなら大分伸びますね。
まあ、一夏がそれでいいのなら私もそれで構わないのですが。


Side〜ウリア〜out


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