第五十三話『身内の接客と、二度目の休憩』
Side〜ウリア〜
成功したので、私たちは景品のアクセサリの中からそれぞれ選んで貰いました。
私も蘭ちゃんもブレスレットですが、デザインが違います。
と言っても、大した差は無いんですけどね。
ちなみに、一夏たちが騒いでいたのは、一夏が『黒髪と金髪どっちが好きか』という質問をして『金髪』と弾さんが返して、一夏が青を切って失敗したからみたいです。
多分と言うか絶対、赤は箒の『紅椿』で、青はセシリアの『ブルー・ティアーズ』なのでしょう。
「あー……変な汗かいたわ。 どっかで飲み物飲もうぜ」
「そうだな。 じゃあ鈴のところへ行くか?」
「ああ。 ところで鈴のところは何してるんだ?」
「飲茶だって」
「じゃあちょうどいいか。 ウリアさんも蘭もそれでいいよな?」
「ええ、構いませんよ」
「それでいいよ」
私たちは階段を上って一年二組へと入ります。
「いらっしゃいませ〜」
「ぶはっ!? り、鈴、おま、お前っ……な、何してんの?」
接客してきた鈴に、弾さんが噴出しました。
それは少し失礼じゃないですか?
「り、鈴さん、お久しぶりです」
「なぁっ!? どうして弾と蘭がここにいんのよ!」
「ちゃ、チャイナドレス……似合わねー。 大体、何で―――ぶご!?」
弾さんの言葉は強制的に中断されました。
鈴が投げたお盆と、蘭ちゃんの蹴りで。
まあ、自業自得ですよね。
「お兄! 鈴さんに失礼でしょ! とっても似合ってるじゃない!」
そんなときに、私の携帯が震えました。
「はい?」
『あ、私です。 楯無です。 そろそろ生徒会の方に行かないとならないので……』
ああ、もう時間ですか。
「わかりました。 楯無、ありがとうございました」
『い、いえっ! 滅相もございません! 私はただご迷惑をかけてしまったお詫びでしているだけですので』
「そうだとしても、おかげで友達と楽しい時間が過ごせました。 お礼くらいしますよ」
『私には勿体無いお言葉です』
ほんと、楯無にはやりすぎてしまいましたね。
前は偶にしか言わなかったのに、今ではずっと『ウリアスフィール様』ですからね。
何度訂正しても変わりません。
「では、楯無は戻ってください。 私たちもすぐに戻りますので」
『はい、わかりました。 では、私はこれで失礼します』
通話が切れ、私はこのことを一夏に伝えます。
「一夏、楯無が戻るようなので私たちも戻らないといけなくなりました」
「あ、もうそんな時間か。 弾、蘭、悪いなけど俺たちはもう戻らないといけなくなったから、後は二人で回るか、また自由時間が取れたときに回ろうぜ」
「次取れたらウリアさんとデートでもしな。 俺たちは俺たちで適当に回るから」
「お仕事、頑張ってくださいね」
「はい。 では、私たちはこれで」
私は一礼をしてから一組へと戻ります。
「あ、お兄様にお姉様。 悪いのですが、戻ってください」
教室に戻ると、ラウラにそう言われました。
「ああ、わかった」
一夏は置いていた上着を着て、接客に戻りました。
私も、仕事を全うしませんとね。
それに、お客さんも増えているので、今まで以上に頑張りませんとね。
私へのオーダーもあるようで、そちらへ向かうとそこにいたのは御爺様に葉王、お父様にお母様、そして卑弥呼でした。
「大変お待たせしました。 旦那様方」
仕事なので、当然いつもとは口調です。
「ほう。 似合っておるではないか。 まあ、ウリアならば当然かのう」
「うん、確かに似合っているね。 これはレアな光景だね」
「ウリアはメイド服姿も可愛いね。 最高だよ」
「よく似合っていますよ、ウリア」
「流石はマスターの娘さんね。 何を着ても似合うわ」
上から御爺様、葉王、お父様、お母様、卑弥呼の順で褒められました。
「ありがとうございます」
私はお礼を言いながら一礼します。
さて、仕事をしませんとね。
「では、ご注文をお伺いします」
「うむ。 儂はミルクティーで頼む」
「僕はアイスティー」
「私はアイスコーヒーで」
「私はケーキセットにします」
「私もアイスティーで」
上から御爺様、葉王、お父様、お母様、卑弥呼の順のオーダーです。
「かしこまりました。 それでは、ご注文を確認します。 ミルクティーがお一つ、アイスティーがお二つ、アイスコーヒーがお一つ、ケーキセットがお一つですね?」
「ええ」
「それでは、少々お待ちくださいませ」
私は一礼してからキッチンテーブルへと向かい、オーダーの品が乗ったトレーを受け取ります。
ちなみに、このケーキは、料理部の生徒に、私と一夏で教えて作ってもらっています。
なので、味はそこそこ美味しいです。
まあ、一夏ほどではありませんけどね。
「お待たせいたしました。 ミルクティー、アイスコーヒー、ケーキセットがお一つで、アイスティーがお二つになります。 以上でご注文はよろしいでしょうか?」
「ああ」
「では、御用がありましたらお呼び下さい」
長く居座ることも出来ないので、私は別の接客へと向かいました。
☆
あれから一時間ほど動き回り、一度店の体勢を整えるとのことで休憩を貰いました。
ちなみに、その一時間のうちに御爺様たちに一応一夏を狙う者、おそらく亡国機業がいるということを伝えておきました。
亡国機業はリグレッターの未来で第三次世界大戦を起こした組織で、最近はISを強奪しているらしいです。
そのため、一夏を狙っているのでしょう。
それに、戦争を起こす組織がアインツベルンの力を欲しないわけが無い。
英霊は普通の人間が倒せるものではなく、ダメージすら与えることができない。
人間には無敵の戦力となる英霊を保持するアインツベルンを、狙わないはずが無いのです。
それに、相手にも英霊がいるそうなので、多少なりとも英霊のことを知っているでしょう。
なので、大丈夫でしょうが一応教えておいたのです。
まあ、葉王がいますし大丈夫でしょうが、一応ハサンを数人、御爺様たちに着かせておきました。
「ウリア、行こうぜ。 時間は一時間しか無いんだからな」
「あ、はい。 そうですね」
一時間の休憩を貰っているので、前の休憩よりもゆっくり出来ますね。
「まあ、とりあえず何か食おうぜ。 さっきは食べ損ねたしな」
さっきと言うのは二組のことでしょう。
確かに、食べる前に戻りましたからね。
「そうですね」
私たちは手をつないで二組へと向かいます。
「いらっしゃいませ〜って、またあんたたち?」
「またで悪かったな。 さっきは何も食えなかったから来たんだよ」
接客してきたのはまたまた鈴でした。
なぜ毎回―――と言っても二回目なんですが―――鈴なのでしょう?
代表候補生だからですか?
「まあいいわ。 こっちよ」
私たちだからでしょうか。
口調が普段通りです。
「はい、これがメニューよ」
席に着き、メニューを渡されました。
「一夏、どれにしますか?」
「お、何か肉まんまであるぞ。 まあ、どうせ市販の物か」
「まあそうでしょう。 一組のポッキーだってそうなんですから」
わざわざポッキーを作るほど余裕はありませんしね。
「というか、小さく何か書いてあるぞ」
「『低確率で手作り肉まんあり』……ですって」
な、何ですか、それ……。
「はい、水」
鈴が水を持って戻ってきました。
「注文は決まった?」
「私は胡麻団子と烏龍茶を」
「俺は肉まんと烏龍茶」
「胡麻団子と肉まんを一つと烏龍茶二つね。 ちょっと待ってなさい」
いくら知人だと言って、この接客はどうなんでしょう?
もう少し徹底しませんか?
しばらくすると注文の品を持って鈴が戻ってきました。
「はい、胡麻団子に肉まんに烏龍茶ね」
あれ、意外と本格的ですね。
さすが中国代表候補生のいるクラスと言ったところですか。
「お、この肉まん美味い」
「そりゃそうよ。 あまり数は無いけど、手作りの奴があるもの。 結構自信作よ」
「ってことは、これは手作りなのか?」
「というより、メニューにも書いてあったんですけど、手作りと市販のものを混ぜているんですか?」
鈴の言い方だとそう聞こえます。
「一夏が食べてるのは手作りよ。 で、ウリアが言ったのはそうよ。 まあ、ランダムなんだけどね。 アンタ、運が良かったわね」
そ、そう言うのもありなんですか……?
「まあ、ちゃんと書いてあるから文句は言わないでよね。 それじゃあ、ごゆっくり」
いくらメニューに書いてあるからと言って、同じ肉まんでも味が違うものを出すと言うのはどうなんでしょう?
まあ、一応お祭りですから無礼講ってことですかね?
「あ、この胡麻団子美味しいです」
「その胡麻団子、一個食べていいか? 俺の肉まんあげるからさ」
「いいですよ」
私は胡麻団子を一夏に向けます。
「はい、あーん」
「あーん。 ……うん、美味いな。 学園祭にしては結構レベルが高いぜ」
「そうですね」
この胡麻団子はかなり美味しいです。
高校生が作ったにしてはレベルが高いものです。
「じゃあこっちもな。 はい、あーん」
「あーん。 ……あ、美味しいです。 鈴があそこまで自信たっぷりに言うのも納得の味です」
それから、私たちは様々なところを回り、時間ギリギリまで学園祭デートを満喫しました。
Side〜ウリア〜out