小説『IS インフィニット・ストラトス 〜銀の姫と白き騎士〜』
作者:黒翼()

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第五十四話『灰被り姫』



Side〜ウリア〜

一組のご奉仕喫茶は相変わらずの盛況ぶりで、休憩から戻るなり一夏は引っ張りだこになりました。
私も休む暇が一切ありません。

「ウリアスフィール様、そろそろ時間になります」

「あ、楯無。 もうそんな時間ですか」

私と一夏は生徒会企画に参加することを了承しているんです。

「ん? 楯無さんが来てるってことは、時間なのか」

一夏も楯無が来たことに気づいたみたいです。

「え、一夏にウリア、どこか行くの? と言うより、どっか行かれると困るんだけど……」

シャルロットが聞いていたのか、そう言ってきました。
まあ、私と一夏は人気ツートップですからね。

「言っておいたはずなんですが、生徒会企画があるのでそっちに行かないといけないんです」

「生徒会企画……? あっ、そういえばそんなこと言ってたね。 すっかり忘れてたよ」

「悪いな、店開けることになる」

「どうせならシャルロットちゃんたちも来る?」

楯無がそう提案します。
まあ、シャルロットたちなら役としてはもってこいですね。

「え? でもお店を空けるわけには……」

「大丈夫。 ドレス着させてあげるから」

何が大丈夫なのでしょうか。
根本的に何の解決もしていないんですが。

「ど、ドレス……」

そこで揺れますか?

「じゃあ、箒ちゃんとセシリアちゃんとラウラちゃんもゴーしちゃいましょう」

「「「はっ!?」」」

聞き耳を立てていた三人にまで白羽の矢が立ったみたいですね。

「全員ドレス着させてあげるわよ」

「そ、それなら……」

「まあ、付き合っても……」

「ふん、仕方が無いな」

ラウラまでドレスで落ちましたよ。
そんなにドレスを着たいのでしょうか?
そんなに着たいのなら、私に言ってくれればいいのに。

「そういえば会長。 演目って何なんですか?」

それは聞きますよね。
何をするか気になるでしょうし。

「シンデレラよ」

まあ、楯無が考えた以上普通じゃないですけどね。




 ☆




「一夏、似合ってますよ」

「ウリアもだぞ」

私が着ているのはもちろんドレスで、一夏が着ているのはそのまんま王子様です。

「さて、どうなることやら……」

「まあ、変なことになるでしょうね」

「だろうな。 にしても、よくもまあこんなもんを思いつくよな、楯無さんって」

「楯無はこういうのをよく思いつきますからね。 まあ、その所為で私もお仕置きをしたんですけどね」

「度が過ぎたのか……」

「ええ。 それの矯正のためにしたんですけど、その結果が今の私と楯無の関係なんですよね」

楯無は大抵のことで私に従順ですからね。
何事もやりすぎはいけませんね。

「一夏君、ウリアスフィール様。 そろそろ開幕のお時間になります」

「わかりました。 行きましょう、一夏」

「ああ」

私たちは舞台袖まで移動します。

「さあ、幕開けよ!」

ブザーが鳴り響いて照明が落ち、アリーナのライトが点灯しました。

『むかしむかしあるところに、シンデレラという少女が居ました』

出だしは普通なんです。
出だしは、です。
一夏は舞踏会エリアへと出て行きます。
私の出番はもう少し後になります。

『否、それはもはや名前ではない。 幾多の舞踏会を抜け、群がる敵兵をなぎ倒し、灰燼を纏うことさえいとわぬ地上最強の兵士たち。 彼女達を呼ぶに相応しい称号……それが【灰被り姫(シンデレラ)】!』

ほんと、こんなことを思いつくのは楯無くらいのものです。
しかも楯無はアナウンスを楽しんでますね。

『今宵もまた、血に飢えたシンデレラたちの夜が始まる。 王子の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女達が舞い踊る!』

さて、そろそろですか。

「はあっ!」

私と同じようなドレスを着た鈴が、中国の手裏剣こと飛刀を投げながら一夏へと襲い掛かります。
これは一夏たちの特訓のようなものでもあるんですよ。
まあ、そうなのは一部で、それ以外は別の目的があるんですけどね。
さて、私も出ますか。

『現れたのは最強の灰被り姫! 愛すべき王子を守るため、その猛威を振るいます!』

「王子はやらせませんよ」

「出てきたわね! いつもやられっぱなしだと思わないでよね!」

鈴は意外とノリノリでした。
実際のことも含まれているでしょうが、アドリブで対応してきます。

「王子、私も全ての対応は出来ません! 多少の自衛はしてください!」

「わかっている!」

まあ、私たちもノリノリでやっているんですけどね。
セシリアはスナイパーライフルで一夏を狙っていますが、私は鈴とラウラに箒の対応でそっちまでは対応できていないんです。
ちなみに、シャルロットも銃器を持って一夏を撃っていますが、一夏はそれを避けたりしています。
本当に強くなりましたね。

「くっ! 三人でも敵わぬのか!」

「やっぱアンタ強すぎよ!」

「せめて一矢報いてみせます!」

鈴は飛刀と体術で、ラウラはタクティカル・ナイフの二刀流で、箒は日本刀で私を攻めますが、私は一振りの剣と体術でその全ての攻撃を捌ききります。
皆さん強くなっているみたいですね。
成長することはいいことです。

「さて、そろそろ本気で行きますね」

私も楽しくなってきました。
ちょっと常時の本気を出しましょうか。


Side〜ウリア〜out



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