小説『Zwischen』
作者:銀虎()

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「 Zwischen 」

 (日常)
僕の名前は「雨策 楓」。(うさく・かえで)祖父が小柄なギリシア人のクオーターで色素が薄めの高校三年だ。僕は今、自宅から徒歩で15分の処にある商業高校に登校している最中で
 「カエデ」
 男性的な女性声がした。幼馴染の孕石 天(はらみいし そら)ベリーショートの髪をしたソフトボール部のファースト健康的な筋肉と小麦色の肌に慎ましい胸。男子の人気は中の上
 「今日の朝連はないのか?」
 「昨日、試合で一日オフなわけ」
 「出たのか?」
 「7番でね、結果は4対1で負けたけど」
 ため息をつく彼女に
 まぁ、ご苦労さん」
僕は、一応に労った
 「サンキュー、ついでに古典の宿題やってある?」
「あるけど、貸せないよ」
露骨に疑問的で威圧的な視線を送ってくる天に僕はわけを話す
「薄雲の先約が入っている」
「あの、すし屋の倅か?」
薄雲 壱(うすぐも いち)柔道部に所属している僕の親友で料理の腕も柔道の腕もかなりのものだけどしゃべる言葉が男なのに花魁口調のかなりの変わったやつ。
「お前って、ホントに変人マニアなところあるよな。」
天はあきれたような溜息をつく。
「壱くらいだろ?」
「伊達 利家がいるだろ?」
「あいつも変人の類に入るのか?」
伊達 利家(だて としいえ)中卒で自らに自衛官に志願して最近2年の任期が終えて地元のホテルに就職した変わり種の友人である。
「最近、飯をごちそうになったよ。」
「長い隔離生活でお前と薄雲位しか友人が消えちまったんだろ?」
歩きながら頭を抱える仕草をする天
「あと、バイクの免許を持っているからよく乗せてもらって遊びに行くのに便利だ。」
「きいてねぇよ。つか、お前学校で友人作る気ないのか?」
「それなりに仲良くしてもらっているつもりだよ」
楓は何てことないように言った 
確かに、学校に入学して早3年この高校で増えた携帯のアドレスは僅か、7件。所属部活なし。アルバイトもしていない。スポーツも勉強も人並み。ヲタクでもない。空気みたいに存在が薄いわけでなく、書記係という役職も付いている。なれ合いや嫌いとかのロックソウルを持っているわけでもない。文化祭体育祭の時の打ち上げにも参加した。ただ、すごい仲のいい友達未満知り合い以上という。微妙な立ち位置にいるのが、僕。
そうこうしている内に、学校に着いた。
「ごきげんいかがかや。楓」
朝連を終えて制汗剤と汗臭さを8対2に割合で漂わせる花魁口調の男。
「昨日は、夜分遅くにすまんかったのう。どうしても古典的な解釈能力は、わっちには欠落しているようでの、やむなく、ぬしに助けを求めたわけじゃ」
オオカミ耳の女子が言ってくれたら。秋葉原の多くの男が振り向くだろう。そんな口調を柔道部で筋骨隆々の男子に言われた雰囲気も何もない。
「お蔭で俺が、写せないんだからな。」
天が抗議の声を上げる。
「そうか、それはすまんなぁ。わっちと楓のクラスの古典の授業は5限目じゃ。ぬしらのクラスはそれより前に授業をするというなら、先に天に貸してやってくりゃれ。」
壱は、まことに合理的な返答を返した。
「俺らのクラスは3限目だ。」
「ならば、ぬしが先に借りるべきじゃろう。昼休みにわっちが移せばよい。わっちとて、雌に恨みは買いとうない。」
「その口調さえ直せば、お前もモテるだろうに。」
「汗臭い柔道部に入った時点で、わっちは高校での色恋には、なかば諦めておる。」
壱は、豪快な笑顔を顔に張り付けていった。
そんな適当な会話が一日流れて授業が長々と進みましたが、終わりました。
その日の夕刻、部活動に所属していない楓と部活が休みの天は町に赴いていた。
「悪いね、買い物につきあわしちゃって、グローブオイルが切れっちゃったもんでさ。」
天は、野球・ソフトボールコーナーで、愛用のグローブ油を吟味して買った。
♪〜〜〜
唐突に楓の形態が蠢き啼いた。
ドイツのハードロック・ヘビィメタルバンドの荒々しい音楽かき鳴らした携帯を開いて電話に出ると楓は一言二言会話を交わした
「利家、仕事が休みで遊びたいだと・ゲーセンで。」
それを聞いて、スポーツショップのビニールを片手に
「どこのゲーセン?」
「この先にあるデカイとこ。」
「いこうか、なんかおごってくれるかも。」
天は踵を返しゲーセンのあるほうに歩きだす。
トボトボと15分ほど歩くと、ゲームセンターの部類にしてはかなり大型の建物が見えた。一階の駐車スペースには、長身筋骨の男がバイクに腰を掛けていた。
「トシ〜〜」
天が呼びかけるとのっそりと腰を上げ姿勢のいい歩き方でこっちに向かってきた。
「待ったか?」
楓は、声をかけた。
「待ってねぇよ。自分も今来たところだ。」
自衛隊員時代の名残でこいつの一人称は『自分』であった。
「久しぶりだな?天」
利家は、精悍な笑顔を天に向けた。
「お前は…相変わらずデカイな。」
楓は168センチ、天が166センチ、壱で、171センチで二人の通う高校の一番背の高いバスケ部で185センチ、目の前にいる利家は、192センチと類稀なる体躯の持ち主で余分な脂肪も付いてなく筋骨隆々、一見した格闘家かスポーツ選手だ。
「ずぁあ、いこうか。」
あと、すごく滑舌が悪い。そして、噛んでも言い直さない。
「だな。」
誰も気にしない
そして、3人は2階の、大型筺体の集まる体感ゲームコーナーに向かった。
ガンシューティング、それは利家の独壇場である。一人で一つのコントローラーを使って、ワンコインで、ダメージを受けずに、ほとんどノーミスで、難しいルートだけを選びクリアしてしまう。
「流石だな。」
自衛隊員で実銃を打倒し、持ち前のセンスから、五輪の25メートルラビットファイヤー(早撃ち)ピストル代表補欠世界大会にも度々出場、時々入賞の腕前。
ギャラリーが集まる。僕もその一人
こんな日常が今日も終わった

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