小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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警告、後半グロ注意

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 非常に、非常に困ったことになった。
‐まさかフェイトが釣れるとは
‐実験中に誰かしらが来ると予想していた
‐アンヘルと触手から出来たものが接触していれば、操作可能
‐ブラープマール()
‐ブラープマール!
‐墓標()
 カット。セネターだから仕方ない。
 アレは俺じゃない、俺じゃないんだ!!
‐リンカーコアから奪った魔力の3割をアンヘルに寄与
‐願いのブーストでワームは楽勝だが
‐釣れたのがフェイトだからな
 いやはや、人生とはままならんな。
‐まったくだ
‐待った熊だ
‐死んだフリだ!
‐実際は意味ないんだけどな
 というより、危険だろ。新鮮な肉が目の前に横たわってるんだから。

 で、すっかり思考がどこかへと旅立ってしまったが。非常に困っているのだ。
‐目の前を確認してみよう
‐金色がいるな
‐それもひたすらに落ち込んでるな

「あ゛ー」
「こっちが言いたい」

 もう女の子として出していい声なのだろうか。
 というか、美少女がこんな声出してるなんて想像したくない。
‐安心しろ、想像しなくても前に居るんだ
 カット!見たくないって言ってんだろ。

「ユウちゃん…どうしよ」
「何が」
「バルが…というかデバイスに穴があったよぉ…」
「穴?つまり、ボロボロになったのか」
「ハードじゃなくて、ソフトの方だけどぉ。うわぁーあ゛ー」

 あれか、俺の所為か。
 バルディッシュの穴は俺が意図して作ったモノだから、大丈夫なんだけど。
‐理論の途中であたかも必要であるようにぶち込んだからだろ
‐実際使えたしな
‐あの時点でデバイスの修理なんざ用途はわかるし
‐確認も取れてたしな
 つまりは、俺の所為だ。

「あれか?一定のある周波数を送るとデバイスが制止するってヤツか」
「知ってるの!?」
「急に飛び上がんな。鬱陶しい」
「…ごめん」

 またスグにペタリと机に突っ伏するアリシアに溜め息を吐きながら嘘の説明をする。

「一応理論を組んだのは俺だ。そのまま使われているのなら、ある程度の事は予想出来る」
「いや、普通できないよ」
「それは普通がおかしいだけだ」
「ユウちゃんの普通がオカシイ」
「さて、話は終わったようだ」
「ゴメン!謝るから!説明してよ!!」
「これでも一応学校は休んでる身なんだがな」
「家庭事情…だっけ?」
「…あぁ」
「まぁムリそうならさすがに帰るよ」
「親は遠い所にいるからな。生活費が足らん」
「ソッチかぁ」
「クソ共も日払いじゃないし、こっちの通貨で支払われるか知らんし」
「それは、その…ごめん」

 色々考えていくと本当に困ったことになってる。
 管理局から金を貰うことも若干の抵抗はある。貰えるものは毒と厄介事以外貰う主義だが。
‐倍プッシュだ!
‐毟れるだけ、毟り取る!!
‐引き分けにしねぇか・・・?
 カット。何かが違う。

「理論の説明は飛ばすが、というかちゃんと俺の出した理論のチェックはしたのか?」
「軽くだけ。というか、あんな理論を一から作り上げてるユウちゃんが改めて怖く感じるよ」
「マルチタスクありゃぁ出来んだろ」
「マルチタスクであんなこと出来るんだったら、もっとこの世界は知的になってるだろうね」
「まぁ思考の回しすぎで世界の終わりを見て、そのまま終わりを壊す為に終わりをもたらすナニか以上の兵器を生み出して、その兵器以上の兵器を生み出すんだろうがな」
「何それこわい」
「穴倉に住んでる、偉大な先人たちの話しさ」

 手近にあった紙にカリカリと前の理論を書いていく。
 理論、と言ってもベルカとミッドの魔法式を解法して、それを纏めて一つの式にするものなのだが。

「こんなもんか」
「……」
「どうした?」
「いや、うん。ちょっと待ってね。大丈夫、うん。ユウちゃんだから仕方ない、仕方ないんだよ」
「何か凄く失礼な事を言われてる気がする」
「大丈夫続けて」
「これがインテリジェント…バルディッシュのソフトに入る訳だ」

 新しく紙を取り、そこにバルディッシュのソフトを書いていく。もちろん一部だけだが。

「ツッコマない。私は教えられる身なんだから、大丈夫。うん、コレはできなくて当然だ、理解することだけ考えるんだ」
「話を進めるぞ」
「はい先生!」
「誰が先生か。インテリジェントに含まれる、所謂【考える】といった機能だが、その公式と俺の理論上の公式が誤作動の原因だ」
「……つまり、直せない?」
「【思考】がなけりゃ、問題ない」

 それは、インテリジェンスとしてどうかと思うが。
‐考えなけりゃ単なる道具だ
‐考えたところで道具さ

「もしくは、理論の組み直しだな」
「そこは、ほら、ユウちゃんが」
「やらんぞ。さすがに」
「だよねー」

 どうして自分の不利になるような事を自分の時間を使ってやらなくてはならんのだ。

「ま、この辺りの理論をもう一回考え直したら多分大丈夫だろ」
「ホントに!?」
「知らん。あとは自分でやってくれ」
「分かった!!ありがとう!ユウちゃん」

‐ツンデレ乙
‐はいはいツンデレツンデレ
‐べ、別にアリシアの為じゃないんだからね!!
 カットカットカットカットカット!!










「おー、次はちゃんと釣れたねぇ」

 夜の荒野に紛れながら、前にウロつく管理局員をこっそり見る。
 嗤いそうになるのを必死で抑えて、ついでに溢れ出てくる感情も抑える。

「クヒッ」

 抑えれない嗤いが鼓膜を揺らし、頬肉が僅かに釣り上るのを感じる。
 暗がりと隠蔽魔法のおかげで俺を視認することも認識することも出来ない哀れといっていい餌。
 殺しはしない。
 殺すと、廻りまわってはやてに被害が及ぶ。

 つまりだ。バレずに、まるで自然な事故のように、終わらせればいい。


 三つの餌の内、一つの背後に付く。
 リンカーコアから魔力を奪い、放置。栄養のない餌はいらない。
 一つが倒れた音で、二つがこちらに気づく。
 視界に収まらないように低く横に跳躍して、その場を離れる。
 体を切り返し、再度接近。二つ目をアンヘルで覆い、魔力を奪っていく。

「んんぅううううううううううう」

 うるさい餌だ。殺さないように首を絞めて黙らせる。
 数秒して黙ったことを確認。生きている事も確認して捨てる。
 残り一人はコチラを向いて、少し震えながら杖を向けている。

「ば、化け物め…!」

‐何を言ってるんだろう
‐誰が、化け物だというのだろう
‐誰を、化け物といっているつもりだろう
‐誰が、誰に、誰を、
 これほど震えている餌は初めてだ。もしかすると新しい餌なのかもしれない。
‐それは残念だ
‐あぁ、残念だ
‐いや、残念だ

「仲間の仇ィイ!!」
「ケヒッ、仇ダッてェ?」

 餌が何を言っているのだろう。
 あぁ、さすが餌だ。こちらの意図を理解できてないんだ。

「残念ダねぇ。そのイラナイ正義感なんて捨てちまえよ」
「ウオォオオオオオオオ!!」
「……残念だねぇ」

 迫る魔力弾。
 誘導弾ではないので、横に大きく移動する。
 餌が数発の魔力弾を待機させているのを確認。
‐残念だ
‐あぁ残念だ
 リンカーコアを一つ逃してしまう、あぁ残念だ。

「な、ギャ、ア゛ァ゛ア゛ァァァアアアアアア」

 地面に咀嚼されるように、ゆっくりと落ちていく餌。
 バリュゴリュと食事中の音が聞こえる。

「や、やめろ!やめてく゛レ゛ェ゛」
「残念だ。俺にはどうしようもないさ」
「うぞだろォオオオ」
「こんな魔力、正確には外に常駐する魔力の塊に反応するワームなんて、俺にはどうしようもないさ」

 必死で抑える嗤いと響く絶叫、そしてバリボリと鳴る楽器とグチャグチャとはしたない食事音。

「フフ、ヒヒ…」
「―――――――――ッ!!!」

 忘れない用に、魔力弾を二つの餌の上に置いておく。
 俺は殺してないさ。もちろん、ただの攻撃。
 あちらにしても防御可能だし、まさか俺も死ぬなんて思ってない。

「ヒヒフフフフフフ」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「クキャケケケケケケケケケケケ」

 堪えられなくなった嗤いが辺りを埋め尽くし、それと交わるようにまたグチャグチャとダラシのない食事音が鳴り始めた。





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〜倍プッシュ
〜毟る
 天才というか鬼才

〜引き分け
 凡才にて奇才

〜バル停止理論
 伏線回収。きっちり自分が得になるように動きます。バルが停止しなかった場合はそのまま取り上げればよかった

〜バルディッシュ
 やむを得ず停止。彼は悪くない。あんな理論を作った誰かが悪い

〜穴倉在住の偉大なる先人達
 知る人は彼らの事を錬金術師と言う

〜釣り
 効率良くリンカーコアを集めようとした結果。管理局員から集めれば早い。【リンカーコア】と【管理局】に関しているのでユウリンのポテンシャルがエラく高くなってます

〜狂いセネター
 もうそろそろ「リテイクッ!」とか「拍手喝采痛み入る」とか「クキャキャキャキャキャ!」とか「カットカットカットカットォッ!」とか言ってもおかしくないと思う
 8/30感謝感激→拍手喝采 に訂正

〜ワームたん
 前話の犠牲。今話のお掃除係。前話で登場した時はユウリンにかけられたバインドに反応して登場

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