小説『あぁ神様、お願いします』
作者:猫毛布()

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‐今俺が所持しているリンカーコアに含まれる魔力と俺が以前渡していたリンカーコアの魔力を比較
‐比較後、この魔力で夜天の書のページが埋まるかを算出
‐騎士達を吸い取った結果ほど、埋まらない
‐が、覚醒にまではギリギリ届きそうだ
 カット。
‐夜天の書のシステム予想
‐詳しくは不明
‐夜天の書を乗っ取り、はやてを夜天から解放する
‐夜天を、俺と一緒に壊す
‐夜天の自壊機能と再生及び転生機能の予想
‐いざとなれば【願い】がある
 そう、俺には奥の手がある。
 喩え、どれほど酷い過程であろうと、結果が必ず出る手があるのだ。

「あんまり使いたく無いけどなぁ」

 思わず漏れた言葉はワームの唸り声と一緒に掻き消えていった。










 この世界には運がいい人間と悪い人間と、あとは運がいいのに気づかない人間がいる。
 俺は恐らく運がいい人間だ。そう自負しているし、信じてもいる。

 故に、俺の行動は日常会話も含めてほぼ計算によって成り立ち、無駄というムダを省いた結果と言ってもいい。
 ただし、そこに誰かの感情が入ることによって、俺の計算は早々に、いとも容易く、淡々と崩れる。
 まぁ崩される計算をするのは日常会話、というか日常では常に別の事に思考を飛ばしているので計算などほとんどしてないし、楽しければいいという思考が勝っているのだ。

 長々と話したが、俺は運がいいほうだと思う。
 だから何かあったとしても、それはきっと俺にとってプラスになる様に世界が動くはずだ。動いてくれ、頼むから。
 もう運が悪いのは嫌なんだ。あれだろ、実はドッキリでしたー、みたいなノリが今一番来て欲しい。

「現実逃避はやめよ、御影君」
「すずかちゃんと知り合いやったんかぁ」
「はやてちゃんと知り合いだったんだね。付き合いの長い私に黙ってるなんて、ヒドイネー」
「ホンマ、夕君ひどいわー。私らが知り合ってなかったら紹介してたんやろー?」
「……」
「……」

 どうしてこの二人は笑顔で睨み合いという器用な事をしてるんでしょうか。
‐実は俺様の事が好きなんじゃないか?
‐ねぇよ
‐あるとするなら、お互いを紹介させなかったから?
‐もう知り合ってる、挽回は、無理だ!
‐八神家に招待もされたらしいし
 つまりだ。

「意味がわからん」
「夕君……いや、まぁ夕君やからなぁ」
「御影君って意外と鈍感なのかな?」
「誰が鈍感だ。一応他人の事に関しては機敏だぞ」
「……つまり自分には鈍感やねんな」
「御影君らしいと言えば、それまでなんだけど」
「はぁ……」
「はぁ……」
「二人してため息吐くなよ。そしてバニングスさんもなぜ睨む」
「現地妻と妻が会ってしまった夫を見た気がして」
「オイ。ガキの言葉じゃねぇぞ」

 溜め息を吐いて、もう一度周りを確認する。
 この病室にいるのは、はやて、月村、バニングス、フェイト、高町、そしてアレ。さらに言うなら、騎士達もいる。
 おかげで殺伐とした空気がこの部屋に充満してるわけだ。殺伐とした空気の原因は騎士達とフェイト、高町。そして何故か俺を敵視してるバカ一名。
 俺はこの空気に関与してない。してないったらしてない。

「ユウってこの人達と知り合いだったの?」
「ん、あぁはやてと知り合ってから紹介されたけど?」

 あたかも何も知らない風を装う。
 当然の如く、俺は騎士たちが騎士であり、フェイトたちの敵というのは知っている。
 しかし、その事実をフェイトは知らないし、高町に至っては俺が魔法関係者だということすら知らない。
 ここで問題になるはずの俺が騎士と仲良くしている事なのだが、管理局の記録上、俺はシグナム達を騎士だと判断出来ない。
 なんせ無限書庫で漁った情報はほぼ文面だ。彼女達の容姿に関する記述もあったが、モノによりバラバラだった。つまるところ、断定には至れない。
 彼女達の戦闘映像もあったが、俺はそれを一切見ていない。

「……そっか」

 そしてここには月村、バニングスといった魔法を知らない人間がいる。フェイトは俺を追求できない。
 会話から察してくれたシグナム達も俺の言動に合わせてくれるはずだ。
 俺は黒に限りなく近い白になる。もっとも、実質は真っ黒どころの話ではないのだが。

「どうかしたの?フェイトちゃん」
「大丈夫だよ、なのは」

 どうやら、この問題は後で問いただすことで納得したようだ。
‐フェイトたんから、尋問だと!?
‐つまり、両手縛られて、目隠しされて!?
‐おいおい、お前ら何考えてるんだ、猿轡を忘れているぞ!
 カット。お前ら、一体どうしたいんだ。

「……お前がバグだったのか」
「は?」
「前々からおかしいとは思ってたが」
「いや、何の話だよ」
「気づいてないのか。なるほど、そういう設定なのか」

 おい、誰か説明してくれ。比較的マジで。
 いや、意味はわかるよ。おそらくで予想も成り立つ。
‐この世界に原作というものがあるとして
‐その原作でここに俺が存在していない
‐よって転生者であるこの物体αが何かを言い出してる
 ぐらいか。それにしても、一般人がいる中でよく言える…。

「まぁいい。バグとしてだがお前も生きてるんだ」
「なぁ誰か早く止めて、彼を止めてあげて」
「病人に何させるきなんよ」
「あはは…」
「いつものことでしょ」

 ほか二名と騎士達は牽制中。
‐おい、誰かマジで頼むわ
‐ヘルプ!!
‐スタッフー!!

「安心しろ、お前は生きてていいんだ」

 肩ぽんやめろ。そして微笑むな、気持ち悪い。

「殴っていい?今殴り殺しても罪に問われない気がするんだ」
「止めとき、拳を痛める」
「ここは病院だ」
「病室が汚れちゃうよ」
「それは勘弁してほしいなぁ」
「あんたら、ライトの心配とかはしないのね」
「親友をこんな風に言われて、まだ抑えてる方やけど?」
「ま、そっか」

 月村はニコニコしてるし。
‐自分でいっときながら、この二人こえぇなぁ
‐あんまり敵に回したくない
‐すずかタンがなんでか微妙に安堵してるよ!
‐ツンデレもだいぶノリが分かってきたなぁ

「じゃぁ、そろそろお暇するよ」
「んー、また来ぃな」
「出来ることならお見舞いは嫌なんだけどな」
「仙豆さえあったらなぁ」
「カリントウを登れというのか」
「え?カリントウって食べ物じゃないの?」
「黒くて固いやつな。長けりゃァ」
「オイ」
「おーけー、バニングスさん謝る。謝るから殴る体制を解くんだ」

 【?】を浮かべるフェイトと高町さんに顔を真っ赤にしたバニングスさん。カラ笑いをする月村とはやて。
 シグナムは相変わらずキッつい顔をしていたが、今見たら顔を下に向けて肩を小刻みに揺らしていた。





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〜酷い過程からでる結果
 一度体験しているユウリンにすれば余り選択したくない内容

〜家庭事情()で休むユウリン
 元気であることはアリシアから伝達

〜バグ
 転生でよくある。英雄には敵が多い

〜仙豆
 瀕死の傷でもコレ一つで治る豆粒。正直こっちよりも猫に触りたい

〜黒くて固い
 カリントウ

〜肩ぽん+微笑み
 ある種の哀れみを含む

〜罪にならない撲殺
 エスカリボルグでも所持しましょう

〜短め
 戦闘描写前だから仕方ない。
 ここまで来て未だにアインスをどうするか決めてないとか内緒内緒。

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