小説『遊戯王 New Generation』
作者:吉良飛鳥(自由気侭)

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 遊哉と撫子の全力デュエル。
 互いにデッキの最強モンスターを召喚し、凄まじい攻防の末の一撃。


 遊哉が召喚したアルディオンの一撃が撫子のオロチを飲み込み、その閃光が会場を包む。


 『な、何だこの閃光は〜〜!?一体どうなっている?デュエルの決着は〜〜!!』


 やがて閃光は収まりフィールドの状況が分かるように…


 閃光が晴れると…


 大和神龍−オロチ:ATK71900


 オロチは無事、フィールドに顕現し続けている。

 『何と撫子の切り札であるオロチは無事だ〜!コレはデュエル続行か〜〜〜!?』

 誰もがそう思うが、どうも様子がおかしい。
 互いにモンスターは残っているがDホイールは停止。
 走る出す気配は無い。


 「…見事じゃ緋渡遊哉。今回はワシ等の負けじゃな…」

 「だな。けど良いデュエルだったぜ?」


 撫子:LP0


 健闘を称えあう2人。
 撫子のライフは尽きていた。











 遊戯王デュエルモンスターズ New Generation Duel60
 『決まった決勝カード』











 『い、否、撫子はライフが0!!け、決着〜〜!勝者緋渡遊哉!Winner『チーム遊戯王』!
  WRG1決勝戦に駒を進めた最初のチームは『チーム遊戯王』だ〜〜〜〜〜!!!』

 「「「「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」」」

 決着を聞き、途端に会場は沸きあがる。

 ラストターンの全力攻防もこの大歓声には一役買っていることだろう。


 「オロチは健在…最後の最後で手札誘発か?」

 「うむ…『大和女神−イザナミ』の効果じゃ。このカードを手札から捨てることで『大和』を戦闘破壊から護る。
  コレを使ったところでワシのライフは0。じゃがこやつは、大和神龍−オロチを砕く事はワシにはできぬ。
  久しく忘れておったワシのデッキの最高の友を墓地に置きたくはなかったんじゃ…」

 「成程な。で、使命とかそんなモン無しの全力デュエルはよ?」

 「決まっとるじゃろう…最高に楽しかったわ!」

 デュエルが終わった事でDホイールが強制停止し、ソリッドヴィジョンも停止する。
 遊哉のフィールドのドラゴンも、撫子のオロチも空気に溶け込むようにその姿を消した。


 「「「遊哉!」」」
 「緋渡!」
 「遊哉っち!」


 「撫子様!」
 「撫子嬢ちゃん!」


 両チームのピットからチームメンバーが集まってくる。
 この光景もすっかりお馴染みになってるWRG1。


 「総一郎、影虎…すまぬ勝つことは出来なかった…」

 「あやまんなよ嬢ちゃん!最高のデュエルって奴を見せてもらった!!勝ち譲ってもらった俺とは違うぜ!
  ダンスのパフォーマンスとは違う、『本当のデュエル』ってのをやったんだ、嬢ちゃんは凄ぇよ!」

 「私も影虎に同意です。素晴らしいデュエルでした撫子様。」

 チームYAMATOの面々は今のデュエルが心に響いたのだろう。
 総一郎も影虎も撫子のデュエルを賞賛し、負けたことを責めようとはしない。




 「やったな緋渡。」
 「相変わらず凄いねアンタの攻撃力の増加量は…流石は攻撃力馬鹿。」

 「ったりめーだ!負ける気なんぞねぇからな!ラストは最高に楽しめたし。あと褒め言葉と受け取っとくぜ霧恵。」

 「まぁ、褒め言葉だし?」

 チーム遊戯王の方は相変わらずだ。



 其れを見た撫子は目を細めて笑みを浮かべる。
 デュエル前とは違う、まるで憑き物が落ちたかのような清清しい表情だ。

 「ふぅ…一から出直しじゃなワシ等も。神が我等を選んだ事を後悔せぬよう、自己研鑽を積まねばな…」

 「嬢ちゃん…」
 「撫子様…」

 「ハンドレス零式、ダブルチューニングにアクセルシンクロ、果ては7体融合……真にトンでもない奴等じゃ。
  何よりも、ワシ等はデュエルを楽しむ心を忘れておった…其れでは勝てよう筈もない。
  ふぅ……オイ、チーム遊戯王!」

 一つ溜息を吐き、チーム遊戯王に呼びかける。
 当然チーム遊戯王の面子は全員が撫子の方に振り返る。

 「良きデュエルじゃった。此度はワシ等の完敗じゃが……ワシ等は研鑽を積み戻ってくる。
  己を高めて戻ってきたその時は、ワシ等の挑戦を受けてくれるな?」

 「ったりめーだ。何時でも来いよ飯食ってる時と寝てる時以外なら何時でも相手になんぜ!ただ、負ける気はねーがな!」

 「相変わらず吠えるわ。じゃが、主は其れでよいのだろうな。…決勝戦、恐らくは彼奴等が出てくる油断するなよ?」

 「だろうな…ま、俺達は負けねぇさ!」

 再戦の約束と、次なる相手の予測からの注意。
 昨日の場外舌戦のようなピリピリ感は其処にはない。

 「必ず優勝せい!主等は神をも凌駕したデュエリストじゃからな!」
 「言われるまでもねぇ!はなっから優勝しか狙ってないぜ!」

 ガッチリと握手。


 「ダンスのパフォーマンスじゃなくて、本当のデュエルを身に着けてきなさい。その時は相手になるわ。」
 「そうするぜ美人さん。負けて悔しいのは初めてだからな…修行してくるぜ。」


 「次は負けぬぞ鬼柳京介。」
 「何時でも来い。だが、今度は俺を満足させてくれよな?」

 霧恵と鬼柳も夫々が影虎、総一郎と言葉を交わす。
 次に戦うときにはチームYAMATO全員が『真なる神を操るデュエリスト』として現れることだろう。


 『準決勝の第1試合、最後の最後で見事な攻防を見せてくれた〜!!
  さぁ、今のデュエルで会場は大盛り上がり!その熱気で地球の温暖化に拍車がかかる勢いだ〜〜!!
  続く準決勝第2試合はどんなデュエルが展開されるのか!?これは期待するなというのが無理がある〜〜!!』


 MCのテンションも上がり、会場はオーバーヒート寸前。
 続く準決勝第2試合、登場するのは――『チームEXAL』。


 果たしてどうなるのか…








 ――――――








 「機皇帝ウリエルでダイレクトアタック。消えろ、愚かなる弱者よ…」

 「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
 LP1400→0



 『決まった〜〜〜!!1回戦のフレディ・ゴーンに続き、準決勝ではディック・ガニアが脅威の3人抜き〜〜!
  Winnner『チームEXAL』!機皇帝の恐るべき力で決勝戦進出だ〜〜〜!!!』


 圧倒的とはこの事を言うのだろう。
 機皇帝の力を最大に使い、パーフェクトの3人抜き。

 この恐るべき結果に会場はどよめいている。
 相手が世界的に有名なデュエルチームであったのも大きいだろう。

 「相手のシンクロモンスター吸収してパワーアップとかマジか?お前らにはトンでもない強敵だな…」

 「確かにな。だが、俺達も負ける心算は毛頭無い。」

 客席ではチーム遊戯王の他に、昨日1回戦で激戦を行ったチームレックスと、今しがたデュエルを行ったチームYAMATOの面々も共に観戦。

 「シンクロキラーとはよく言ったのもじゃな…神の力を持ってしてもアレを潰すには骨が折れそうじゃ。」

 「連中が勝ちあがってきた理由にシンクロが現在の環境を席巻してるのも大きいね。
  決勝トーナメントに上がってきたチームではアタシ等以外のチームは略確実にシンクロ組み込んでるからさ。」

 その2チームから見ても機皇帝は相当な強力モンスターに映るようだ。

 「まぁ、何とかなんだろ。無敵のモンスターなんざ存在しねぇし、俺と遊星は過去に2回は機皇帝倒してるからな。」

 だが、其れを見ても何のその。
 遊哉は余裕も自身もたっぷりだ。

 「『負ける気が無い』か……しかし主はよう食べるの?ハンバーガー45個じゃと?」

 「全然平気!腹が減っては戦は出来ぬ!デュエルの後は腹が減る!」

 そして人外胃袋は健在である。

 「まぁ、いずれにしても全ては明日。…アタシ達が勝たせてもらうけどね。」

 霧恵も闘志は充分らしい。



 ふと、チームEXALの面子と視線が合う。

 睨み付けてくる。

 負けじと睨み返す。


 フィールドと客席の間で既に火花が散っているようだ。



 『さぁ、コレでWRG1の決勝戦のカードが決定!決勝戦は『チーム遊戯王』vs『チームEXAL』!!
  明日の決勝戦は一体どんなデュエルが展開されるのか!?そして優勝の栄冠を手にするのはどちらのチームか!?
  観客諸君は是非明日も会場に足を運んでくれ〜〜!See you next time!!』








 ――――――








 その夜、霧恵のコンドミニアムで。


 「明日のオーダーは霧恵、遊星、遊哉で決まりだな。」

 「そうね。現状で機皇帝に対抗できるのはこの3人だから。」

 明日のオーダーが決められていた。
 オーダーを決めたのは鬼柳。

 チームサティスファクション時代の経験からか、チーム遊戯王内でもリーダー的な役割になっている。
 其れをシェリーが補佐するのは、すっかりチーム内ではなじみの光景になっている。

 「アクセルシンクロとダブルチューニングなら、確かにその効果で機皇帝に対抗できるか。」

 「まぁ連中も其れは予想してっだろうけど関係ねーぜ。誰が相手だろうと俺達が勝つ!ぜってー勝つ!!」

 冷静遊星と燃える遊哉は何時も通りだ。

 「霧恵…遊哉って。」

 「無い。一切無い。遊星も多分無い。」

 「…そうよね。あの2人には怖いものなんて無いわよね…」

 霧恵とアキも普段と変わらず。

 要するに全員が『何時も通り』。
 この面子には『決勝戦』とか『機皇帝が相手』と言う事に対する気負いは無いのだろう。
 肩肘張らず、良い感じの自然体だ。

 「依存が無ければオーダーはコレで決まりだ。明日は優勝決めて満足しようぜ!」

 「「「「「おーーーーー!!!!」」」」」

 Dホイールも整備が終わり、仕上がりは最高の状態。
 後は明日の決勝を待つだけだ。








 ――――――








 一方で童実野埠頭にあるファントムのアジト。
 此方は参加メンバーが3人なので走行順以外には決めることがないが…

 「ぐふ、ぐふふふふ…決勝戦で遊星ちゃんと…!!想像するだけでいきり勃ってきたわぁ!!」

 「黙れ生ゴミ。」


 ――ゴスッ


 「ごふあぁぁ!!」

 毎度の如く変態が爆滅されていた。
 此方も何時も通りと言えば何時も通りだろう。

 「…明日の決勝済んだら闇に葬ってやる…」

 極めてバイオレンスだが…


 「この生ゴミは復活するだろうから放置するとして…『アレ』は出来たの?」

 「うむ。既に完成した最強の『機皇』がな。」

 変態を放置して尋ねる雪花に、ディックは頷き1枚のカードを渡す。
 どうやら決勝戦に向けて『必殺の1枚』を作っていたらしい。

 「コレが…ふふ、明日が楽しみだわ。遊哉、遊星…お前達にコレが倒せるかしらね…?」

 その1枚を手にした雪花は言いようの無い不気味さをかもし出してた。









 明日の10時に開始される『WRG1』決勝戦。

 デュエルが開始される何時間も前から感じる波乱の予感。


 決勝戦のデュエル――荒れる事は先ず間違い無さそうだ…

















   To Be Continued… 






 *登場カード補足





 大和女神−イザナミ
 レベル4   光属性
 天使族・効果
 バトルフェイズ中に手札からこのカードを墓地に送って発動する。
 自分フィールド上の「大和」と名の付くモンスターはこのターン戦闘では破壊されない。
 又、自分のターンのメインフェイズに自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを手札に戻す事ができる。
 ATK1100    DEF1900



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