第二章 月に抗う氷結の美女と運命に抗う銀髪の聖女
第一話 浮浪者の帰還と月夜の出会い
主(しゅ)に長い眠りから解き放たれ、記憶を失った青年は、自分の本当の正体に疑問を抱いていた。
『人を殺めた記憶』があることで、元は殺人鬼だったのではないのか―――
『いい思い出』があるのであれば、なぜ心が大きく心が揺らぐのか―――
『死なない肉体』を持っていたことで、自分は本当に人間なのか―――
―――そう自問しながらも、あふれでる不安と記憶が青年を苦しませる。だがそれと同時に少しずつ真実に近づいていくように、何かの確信を得た。
それは『自分はなにかとんでもない敵と戦っていた』のではないのかと。
思い出した記憶をたどり、青年は思考を巡らせる。その最中、偶然にも一つの現象をきっかけに、青年は自分の本当の正体を知る為、ある『敵』と戦うことになるのであった。
例えそれが、世界に大きな傷を与えるきっかけになろうとも―――