それは、なんの変わりもない群青色の空―――ひとりの少年はただ空を見上げていた。
上空から見える一本の白線状の雲が少年の目に止まった。
その白線状の雲はだんだん太くなり、少年は目を細めながら視線を先に向ける。
するとやがてその線が飛行機雲だと気付く。
周りの様子がおかしい事にも関わらず、不思議と太くなるあの飛行機雲に少年はただ夢中でいる。
しばらくして飛行機雲は、少年の目の前にあるとても大きな建造物に近づいていった。
そして状況の急な変化に気づき、上空から地上えと視線を落としたその瞬間―――
頭上から振動が体の内側に伝わるほどの、とてつもない轟音が響く。
飛行機が建物に墜落した音だった。
瞬く間に建物は炎上し、最も危険な状況に動じず、少年はその場所から一歩も動かずにいた。
突然のことでなにが起こったのか理解できず、混乱し始めていたのだ。
人が大波のように逃げまどい、危機を悟ったと同時に巨大な影が少年と何百何千という人々を覆った。
大きな土埃が濃く広がったことで、日の光は一時的に完全に遮られ、常闇が生まれる。
少年は一定の闇にさ迷い続ける。
そのことで恐怖のどん底まで追い詰められ状態で、しばらくすると一筋の光が差し込んできた。
危機は過ぎ去ったと思えた少年は、その光のえと駆け寄り、導かれるように必死に向かうが―――
「やめろ……こんなもの見たくない! やめろ、イヤメロォォォー!」
その光の向こうにみえた光景が、新世紀の最初で最大の事件の全貌が、まるで魂までも八つ裂きにされるかの如く、少年・真堂李玖に精神的苦痛を与えた。
「李玖!」
豪快な扉の開け方によっては真堂に叫びに気付き、救いの手を差しのべるかのように獅郎が現れた。
「李玖! 李玖! おいしっかりしろ!」
倒れ込んだ真堂を抱えある獅郎。
「し……ろう……」
「すまん遅くなった。普通に道歩いてたら迷った」
獅郎が現われたことで、真堂の頭痛や幻覚が嘘のように消えていた。
「結局迷ったんだ……」
この時、真堂に起こった現象があの事件に次ぐ、自分の人生を大きく一変させる事だとは知らずに彼らは教会から出ていった。