数分後。
「―――大丈夫かなぁ、獅郎……まあ近いからいいけど……遅い」
教会から駄菓子屋から徒歩ニ分。獅郎が出て行ってから最低十分ぐらいはかかっていた。
「そんなに……遠いところじゃないだけどな……」
横長椅子に腰かけたまま姿勢を少し変え、後ろを向いてドアのほうを見ても獅郎が戻ってくる気配はなく、真堂は姿勢を戻してため息をついた。
「はぁ〜、やっぱ無理があったかなぁ」
真堂は親友のある欠点を見落としていた。それは馴染みのない道だけ獅郎は方向オンチだということである。
(まさか、あんなに近くの所にもたどり着けてないとは、とほほ……あと何時間待てばいいんだろうか……)
まるで全てを悟ったかのような口ぶりで、真堂は心のなかで呟やいた。
「しょうがないな」
いつまで待っても来ない獅郎を探しに行こうと、横長椅子に席をたとうとしたその瞬間―――
『そ……ふ……ぃ……』
「―――っぐ!」
声は突然真堂の頭の中に響いたと同じく頭からとてつもない激痛が走った。
『た―――のむ―――たった―――ひとりの―――』
「っぐ! ……あっ―――がはっ!」
まるで脳髄に直接、裁縫針(さいほうばり)でも刺されたかのように、真堂はあまりの激痛に倒れ込む。
雑音混じりで聞こえてくる声も聞こえてくる度に、はっきりとした言葉になり真堂の脳髄に激痛が走りながら悶える。
『い―――もう―――と―――なん―――だ―――』
「い―――やめろぅ……」
教会の敷地内に入った時から、最初に聞こえてきたあの弱々しい声では、少しの痛みしか感じなかった。だが今の現状からだと、聞こえてくればくるほど痛みが増してくる一方で、真堂は今にも破裂しそうな頭を必死に押さえる。
「がっ!―――んぐっぅ……」
『じゃあ……おまえが……』
「や……めろ……やめろ!」
それでも頭痛は収まらず、真堂の頭には血管が浮き始め、心臓の鼓動と同じ拍子で激痛が走り続ける。
『そふぃを……おれは……にん……げんじ……や―――ないから……』
「いっ……たい、なにがぁ―――なに……がっ!」
この声の主が誰なのかは真堂には分からない。
ただ最初は弱々しく聞こえる声でも、やがて少しずつはっきりとその声が聞こえてくる。頭痛が続いたせいか真堂にある現状が起きている事に気付いた。
「なんだっ、なんだよこれっ―――」
苦しんでいる中で真堂はかなり驚いた。なぜならあまりの激痛が悪化し続ける為、死に直面してもいないのに走馬灯を見始めていたのである。
「これは―――俺!」
まるで幼い頃のホームビデオを見ているかのように、今まで生きてきた十三年間の記憶が真堂の頭の中えと叩き込まれてゆく。
「うっ!―――」
一瞬だけ身体中から衝撃が走った。同時に今まで生きてきた中で最悪な情景が写しだされた―――