その場で扉を開けた真堂。その感覚は唐突に、まるで広大な草原から駆け抜ける、突風でも浴びたかのような衝撃を覚える。なぜならそこには、満月の光を浴びながら、兄のベッドの上で枕を抱き締め、瞬間的に息を飲むほどの『美しい女性』がいたからであった。
「……あ……」
あまりにも予想外なことに思わず真堂は絶句する。目の前にいる女性をよく見ると大量の涙を流していた。そこで彼女を覆う満月の光に、流れる涙が反射してより美しい要素が強調し、真堂の絶句を長引かせた。
「あっ……いや……これは!」
不法侵入がバレたことで女性の様子は、まるで個室で自慰行為がバレた思春期の少年のように慌てていた。
「……ど……」
「はい?」
「ど……ドロボー!」
「えー! いやいや違うから!」
一時的な思考の麻痺がおさまってから、見知らぬ女性を瞬きしてもう一度だけ確認した。後に状況からして単純に泥棒だと無理やり決めつけ、それに驚いた女性は断固として否定する。
「姉さん! 家にドロボーが―――」
「せいやっ!」
「―――へぶしっ?!」
すぐに応援を呼ぼうと急に真堂が躍起なった直後。警察沙汰になるのは絶対に避けたいが為に、女性はかなり手慣れた体制で真堂を殴り倒した。そのことで彼女は一発KO勝ちが狙える拳の持ち主だと、真堂は理解したと同時にこう思った―――
(パーかと思ったらグーだった―――)
そして少年が倒れようとも日はまた登る。
そして気を失ったした真堂は―――