「………」
薄暗くてまったく人の気配は感じなかったが、マクベスはそれ以外の獣に似た気配を感じていた。
「これは……!」
マクベスは教会の中にもう少し深く入り、目が暗闇に慣れ始めたその時、一年前にアベルが入っていたイエス・キリストのブロンズ像が破壊されていた後を目撃する。
「なんということだ。おお神よ……」
ガサッ
「ん! だれだ!」
後ろに物音がしたことで、マクベスは『契約者』だと予測し即座に臨戦態勢(ファイティングポーズ)をとる。
「………」
「な……! あなたは……いえその両目……あなたが……」
そこにいた物音をたてたのは一人の長身長髪青年だった。それを一目で見たマクベスは一瞬目を丸くしながら驚き、青年の両目(オッドアイ)を見て誰なのかを悟る。
「あ……」
「あんた……」
「おっと……し、失礼しました。我輩は『フランク騎士団』二代目団長・マクベス=アームフェルトであります」
「アベルだ……」
めずらしく余裕とは真逆に慌て青年に対してマクベスは自己紹介した。その時に青年改めてアベルは彼と同じく目を丸くした後に自らも自己紹介した。
(やはり……、どうやってあの『牢獄』から出たというのだ……。まあいい、とにかくやることをやるまでか―――)
あることを心の中であることを呟いたと同時に臨戦態勢を解いた。
「スー……フー……」
「?」
深呼吸をした後にマクベスは次のように発言する。
「あなたに……、初代騎士団長・カール=ヴィクセンからの伝言をたのまれています」
「なに……?」
「ゴホンッ。「蒼弓の下の地に足を踏み入れた時が来たれば、たとえ久遠で絶えない肉体あれど、自らの慈愛・忠義・正義を忘れなかれ」、以上です。それでは私はこれで―――」
アベルにその『伝言』を伝え、マクベスはその場を立ち去ろうとする。
「……まて」
「はい?」
「あんた『パラディン』なんだろ? 俺を『連行』しなくていいのか?」
「そうですね……『借り』にしときます。あなたはまだ『完全』ではなさそうですので」
そう言い残してマクベスは教会を去り、今そのばにいるのはアベル一人になった。
「俺は必ず戻ってみせる……」
アベルは自ら抱える『真実』を見つけることを心から決断する。
たとえそれが『断末魔』の声の導きでも―――