『彼に恋をする前の私の心は―――』
そのことで『月に抗った氷結の美女の独り言』という幻聴、つまりは美麻自信のわずかな真相心理が、困惑する真堂の脳裏に叩き込まれることとなった。真堂の能力の一部が勝手に発動したのだ。
「あ〜らら、死んじゃったの〜? 殺してからゆっくり味わおうとしたのに。まあ家畜しちゃあバカみてえな死に様じゃん。ケタケタケタケタ!」
のんきに美麻の死に対してあざわらうハープメイ。
「………」
美麻の思いが全てを知ったと同時に、彼女の命が絶たれたことを知った真堂は夜空を見上げる。
そして幻聴を聞こえる中で少年にある異変が―――
『私やあの人は自分だけの家族が欲しかったのかもしれない―――』
「あ……」
『家は湘南のどっかに建てて、子供を産むんだったら男の子と女の子が二人―――』
「ああ……」
『李玖くんを入れて5人だから、いつも兄弟や夫婦が仲良く暮らせるような家庭を築きたかった―――』
「あああ……」
『でも陽一はもういない。残ったのはあの人の『生きた証』である李玖くんだけ―――』
「ああああ……」
『私は彼が亡くなってから李玖くんを……、あの子を命に替えても支え守っていくことを決めた。悔なんてない。だって私はあの子の為に死ねたんだから―――』