小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「はっ……あぁ……ああ……―――」

目前に立ちはだかる者が目に写り――

「なん……で……」

愕然とし―――

「どう……して……」

涙を溜め―――

「あなた……がぁ……」

声音(こわね)はきしみ―――

「美麻さん……!」

内に潜む『哀』が吹き出す―――

「よかった……李玖……くん……」

目前にいたのは、何度か串刺しにされ、致死量の血を流しながらも、わずかに真堂に微笑む殿難美麻だった。
満月によってハープメイが悪魔としての力を強め、美麻の催眠状態は強固なものとなっていたはずだった。だが彼女は幾度か抗ったことで催眠が解いた矢先に、急遽真堂をかばい今に至る。

「嘘だろおい……!」

一方で大量の血を流したことで身動きが取れないアベル。

「なんで……俺なんかぁ……」

彼女が盾になったことで真堂の命は救われた。だが彼は望んで救われた訳ではない。腰が抜けた状態で涙を流しながら大いに哀しみ、再び美麻にその真意を問う。

「だって……あなたは……あの人の……だいじ……な―――」

立ち往生(死ぬ)するかに思えたが、瀕死の状態で限界がきた美麻。なにかを口走る途中で、目の前で嘆く真堂にもたれる形で倒れ込む。

「あっ、美麻さん!」

「いき……た……か……し……」

「え? い、今なんて……?」

「いきた……あか……し」

「あかし? ―――がっ!」

わずかな力を精一杯振り絞ってから言った、その言葉を耳にした瞬間、真堂は一瞬だけ極度の頭痛に襲われる。

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