月明かりに照らされた教会の中には、幻想的な空間を漂わせる。そんな中、思わず腰を抜かした真堂は、突然現れた目の前の現実が信じられなかった。
それは今目の前にある、イエス・キリストのブロンズ像の中に、とてつもない秘密が隠されていることが分かったから―――
ただ、そこえ向かっただけなのに―――
逃れることはできなかった―――
現実という名の―――
神の―――
出会いに―――
その信じられない秘密とは―――イエス・キリストの顔が欠けたところに、人間の顔が見えていた。つまりは十字架に貼り付けにされたイエス・キリストのブロンズ像の中に、生身の人間が入っていたからである。
ピシ……ピシピシ……ピシピシピシ―――ガシャーン!
「―――わあ!」
しばらくたった後、イエス・キリストのブロンズ像に、徐々に入っていたヒビがすぐに浸蝕し始め、もろいガラス細工のように砕け散った。
それと同時にまるで長い牢獄に解放され、中に入ってた人間が倒れ込むように真堂の目の前に落ちた。
「どわあっ!」
突然の出来事に混乱し始めた真堂は、すぐにこの状況にどう対応するべきか考えた。
「えーとえ〜と……よしっ! まず生きているかどうか調べよう!」
真堂はさっきまで、ブロンズ像の中に入っていた人間の全身をよく見たところ。ボロボロの黒いスーツを着ていて、髪型は腰にまでとどく長い髪に、顔は二十代前後の青年。体格は長身で袖をめくり、異様なほどの筋肉質でかなりやせ細っている。
見た目からして、とても生きているとは言えなかったが、真堂がその青年の口元に手を飾してみると―――
「……スーハー……スーハー」
驚いたことにちゃんと呼吸をしていた。
「い、生きてる!」
この時、真堂はこの青年との出会いによって、新たなる人生の一変と試練の扉が今開かれたのであった。