小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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「う……うぅん……」

「!」

閉めようと小さい寝息を聞こえ、真堂はその方向に即座に振り返り驚いた。なぜなら一ヶ月半も眠っていた謎の青年が、今になって目覚めて布団から起き上がったのである。

「こ……こは……?」

「ああっ……あの!」

「!」

謎の青年は声をかけられた方向に振り向くと「なぜ自分はこんなところにいるんだ?」と、言いたげな表情で真堂に視線を合わせる。

「あ、慌てないでここは俺の家だから……分かる?」

「い……え?」

「そうそう、家」

言葉が理解できるのを確かめた真堂は、さっそく青年の身元を解き明かそうとする。

「名前は?」

「な……ま……え?」

「そうそう」

青年は頭を手で押さえて自分の名前を思いだそうとするが―――

「俺は……」

「うんうん」

「誰だ……?」

「へ?」

これで問題が解決すると思った矢先にまた新たな問題が発生した。それは青年がやっと目を覚ましたと思ったら、今度は記憶喪失で自分が誰なのかも分からず、阿鼻叫喚に近い唸り声をだしながら懸命に自分の名前を思い出そうする。

「うぅ……分からない……俺は……一体誰なんだぁ……」

(こ、これは……噂に聞く記憶喪失ってやつか!)

唐突な遭遇という『サビた機械仕掛けの運命』が、目覚めという油を注がれた事で動き出した。このことこれから『神の大いなるいたずら』の如く、自分がこの先に未知の偉業をこの青年と成し遂げるとは、一人の少年・真堂李玖は知るよしもなった。


二次大戦終戦後。世界が冷戦に突入した後でも超人はNATO(北大西洋条約機構)側につき、数々の戦争に参加し、活躍したという。

だが、ベトナム戦争でアメリカが敗北したと同時に超人の消息が途絶える。
幾多の戦争に勝ち抜いてきた超人だが、たった一回の敗北によって歴史の裏舞台から消され、いつしかその限られた『超人を知る者』はこう称された。

 『存在しない英雄』と―――。

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