小説『ラグナロクゼロ(シーズン1〜2)』
作者:デニス()

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第一章 黄昏の瞳を持つ少年と長髪の均衡者


最終話 復讐者は風と共に去っていった


彼はある日ハレー彗星の流れた夜に産まれた。

 数年訳あって母親の邸宅に閉じ込もって育ち、物心ついた頃にはとうとう外の世界に出られる日が来た。邸宅の扉を開けられた直後に、彼は目の前にして母親が出口にいた男に殺されたのである。

 そして次に彼が殺され、後に男は邸宅に火を着け、母親の遺体だけを持ち去り、その場で殺した彼を置き去りにした。完全に息を引き取る前に意識が遠のいた状態で、彼は死の淵に立たされた。

 だが一筋の光が指すかのように、ある声が耳元に囁く。その声の持ち主は『悪魔』だった。

 悪魔は彼に取引を持ち掛け、彼が人間とって最も大事な部分・『死』を代償に生き返らせる事で契約した。

 その事で悪魔は彼に取り憑き、大いなる力となると同時に大いなる障害となる。やがて彼は人外としての『生』を受け、終わりのない苦悩を未だに歩み続けていた。

 その根拠は、人間には『生』という始まりがあるように、また『死』という終わりがある。

 彼が死の淵に手に入れた『不老不死』というのは、一見理想的に思われるが、これは一人類が得たい物で得てはいけない物でもあった。

 『一』という一本の線あったとして、それを人間の一生として成り立つ時間だと例えるなら、不死である彼の成り立つ時間は、一つの『○』である。

 そのことで彼の時間は一人だけ悪魔によって、意図的に『ループ』された。およそ何百年という時の流れをさかのぼり、同時に終わりがある人間達に置いていかれ、苦悩という名の孤独に見舞われたのだった。

そんな『過酷な宿命』を背負った彼の名は―――

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