小説『FAIRY TAIL 天候魔法の眠り姫』
作者:唯野歩風呂()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>





四、妖精の尻尾



 「へぇーっ、ここがフェアリーテイル!」

 ルーシィは妖精のマークが掲げられた建物を見上げ、目を輝かせた。


 ナツ、ハッピー、ルーシィ、レーナの四人は、ハルジオンからフィオーレ王国マグノリアにある、フェアリーテイルの本拠地へと帰ってきていた。


 「ただいまーっ!!」


 ナツは扉を蹴破り中へ飛び込む。
 みんなの「おかえり」という言葉をよそに、あたりを見回し、ある人物を見つけると――。


 バキッ


 顔面を蹴とばした。


 「何でぇ!?」


 突然のことにルーシィが叫んでいる。

 それをゴングに、フェアリーテイルの面々は物を壊すのもいとわず、暴れだした。


 「……すごい。あたし本当に、フェアリーテイルに来たんだ!」


 こんな状況を前に感動しているルーシィは結構大物だと思う。

 が、それも一瞬のこと。


 「ナツが返ってきたってぇ?」


 パンツいっちょのグレイに驚き、


 「これだからここの男ってのは」


 酒を樽ごと飲むカナに驚愕し、


 「(おとこ)なら、拳で語れ!」


 と言って一発でやられることにビビり、


 「やれやれ騒がしいな」


 と言いながらケンカに混ざるロキに呆れた。


 「上位ランクから抹消――。っていうか何よこれ。レーナ、いったいどうなって……」

 「すぴー」

 「って、寝てんのかい!!」


 すぐ後ろにいたはずが、いつの間にかカウンターに突っ伏して眠っていた。

 ケンカの余波で色々モノが飛んでくるが、全く起きる気配はない。





 ここでレーナについて説明しよう。


 鮮やかな青い髪をしており、前髪は右側だけ長く目が隠れてしまっている。
 髪は一見短髪に見えるが、来ているポンチョを脱ぐと下の方で結っている髪が腰のあたりでしっぽのように垂れている。

 いつも眠そうで背中が丸まっており、長い裾で手が隠れているため、幽霊っぽくて夜見るとビビる。



 「ちょっと起きてよーっ!このケンカ何とかしなくていいの?」

 「むにゃ……だいじょーぶ。もうすぐマスターが……ほら」



 「やめんかバカたれー!!!!」


 「でかぁっ!!」


 ピタッ


 巨人の出現に、争いはぴたりとやむ。

 が、ナツだけは仁王立ちして止まった奴らを笑う。


 「だーはっはっは。みんなしてビビりやがって!この勝負オレの」


 プチっ


 「ひっ」


 踏まれた。

 自業自得だ。


 その大きさにビビるルーシィだが……。


 シュルシュルシュル


 「ちっさっ!」



 もとに戻ったフェアリーテイルマスター、マカロフに思わず叫ぶ。


 その後マカロフはくるくると回転しながら二階へと飛び上がるが、距離が足りず手すりに頭を打ち付ける。


 うん。痛そうだ。

 っていうかかっこ悪い。


 しかしマカロフが手すりに立って人々を見下ろすと、みんな自然と注目した。


 「まーたやってくれたのぉ、きさまら」


 マカロフは呆れたように紙の束を振った。


 「見よ、評議会から送られてきた文章の量を!ぜーんぶ苦情ばかり」


 確かに多い。あれが全部苦情だとは……。


 「聞いたぞ、ナツ、レーナ!ハルジオン港を半壊させたそうじゃないか!」

 「い、いやぁ、まぁ、あれは……」

 「ぐー」

 「寝るなバカもん!!」


 カコーン


 放り投げられたマカロフの靴がレーナにあたり、レーナは椅子から落ちた。


 「んぁ?……おはようございます」


 まったく堪えた様子のないレーナにマカロフはプルプルと怒りで震える。


 「まったく。わしは上に起こられてばかりじゃ」


 身に覚えのある者はばつが悪そうに顔を逸らす。


 「……だが、評議員などクソ喰らえじゃ!」


 紙の束が燃え出し、マカロフは空中へと放る。


 「よいか!理を越える力はすべて理より生まれる。魔法は奇跡の力なのではない、我々の内にある気の流れと、そして自然界に流れる気の波長が合わさり、初めて具現化されるのじゃ。
 それは、精神力と集中力を使う。いや、己が魂をすべて注ぎ込むことが魔法なのじゃ」


 魔法は自分と共にあるもの。自然と同じく共に生き、そして強く願うことで、魔法はより強くも弱くもなる。
 すべては自分の心次第――。


 「上から覗いてる目ん玉、気にしてたら魔道は進めん。評議員のバカどもを恐れるな。自分の信じた道を進め!
 それがフェアリーテイルの魔道士じゃ!!」


 人々は指を天井へ突きだし雄叫びを上げる。

 ルーシィはそんな様子に感激しているようだった。


 レーナはその様子を見たあと、瞼を閉じて思った。



 燃やした書類、提出するんじゃないのかなぁ……と。







〜あとがき〜

レーナの容姿がでてきました。
顔は前髪で隠しています。

それからレーナは結構どうでもいいことが気になる性格です。



-4-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




FAIRY TAIL 31 講談社キャラクターズA ([特装版コミック])
新品 \1980
中古 \790
(参考価格:\1980)