小説『ソードアート・オンライン stylish・story』
作者:アカツキ()

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第十七話 温かさ

第58層 戦神の聖域

シュウとリズベットはレアメタルであるゴーレムの眼を手に入れるために【戦神の聖域】と言うフィールドにやって来た。しかし・・・

「は、は・・・はっくしょん!!!さ、寒ぃぃぃ!!!」

このフィールドは樹氷で囲まれた極寒のフィールドだった。リズベットは寒さに凍え、身体を震わせていた。しかしシュウは・・・

「これで寒いのか?リズ」

「さ、さ、寒いに決まってるじゃない!!て言うか。シュウは寒くないの!?そんなコート一枚で」

「寒くないって訳じゃねぇが、根を上げるほどじゃないな。俺はもっと寒い所を経験したからな。要は慣れってヤツだ」

「うぅぅぅ・・・」

ここはかなりの寒さがあったがシュウが以前訪れた、【霊峰】に比べればまだマシだった。
シュウはリズベットの寒がっている姿を見ているとヤレヤレと思い、アイテムデータから【狼毛皮のコート】を取り出し、リズに着せる。

「あ、ありがとう。シュウ」

「気にすんなよ。備えあれば憂いなしってヤツだ」

「何か今の言い方・・・皮肉っぽく聞こえたわよ?」

シュウの言い方にリズベットはジト目で聞き返すがシュウはそんな心は持っていないみたいだった。リズベットの返答を軽く返すとシュウは一足先にゴーレムが居るとされる【氷結の丘】を目指して、ドンドン進んで行った。

(シュウって性格が分からないなぁ。チャラチャラしている奴かと思えば、いきなりあんな真剣な表情になったりするんだから・・・)

リズベットは自分の疑問を思い浮かべながらコートを身体に包む。そのコートは名前の通り狼の毛皮で出来ていたため、軽く、そして・・・

「温かい」

「お〜い、リズ!置いていくぞ?」

「あ!待ってよ、シュウ」

リズベットは慌ててシュウに追いつくと、もう一つの疑問を問いかける。

「でもシュウの大剣・・・リベリオンだっけ?メンテもやってなかったの来ちゃって良かったの?」

「俺の武器は大剣だけじゃねぇよ。あと4つは使えるぜ?例えば・・・」

シュウが途中で足を止めるとリベリオンからケルベロスに替えると後ろから迫って来ていた【何か】に向かって棍を放つ。

ギャイン!!

「っ!?」

そしてそれは泣き声を上げるとポリゴンと化し、消滅した。リズベットは突然の事に少し驚きの表情を浮べていたが心を持ち直すとシュウのケルベロスを見始める。

「それって・・・ヌンチャク?でも棍が三つあるわよね?」

「ケルベロスって言うんだ。まあ、このヌンチャクは特別製なんだよ。それと・・・団体さんのお出ましだぜ!!」

シュウがケルベロスを構えると木の裏や背後から先程倒した白い狼【スノー・ウルフ】が10匹程現れ、シュウとリズベットを取り囲む。

「数が多いよ!!シュウ、どうするの!?」

「Ha!!少ないぜ!!これ位ならルシフェルを出すまでもねぇよ!!リズ。動いたり喋ったりするんじゃねぇぞ?俺が前でこいつらの相手をするからよ」

そう言うとシュウは狼の群れを前に、一歩踏み出し・・・

「C’mon,wimp(来いよ、ノロマ)!!」

挑発したその瞬間、狼達が一斉にシュウに襲い掛かった。

「危ない!シュウ!!」

リズベットはシュウが襲われると思い、メイスを持って加勢しようとしたが・・・

「Too late(遅すぎるぜ)・・・It’s obvious(見え見えだ)!!!」

シュウは狼の爪や噛み付きを避けたり、ケルベロスで弾きながら、スノー・ウルフをケルベロスの牙の餌食にして行った。シュウの戦いぶりを見ているリズベットは呆然としていた。

(凄い・・・あれだけの敵を相手にダメージを殆ど受けない。これが真紅の狩人の力なの!?)

あまりに圧倒的なため、リズベットはシュウに声をかける。

「もう少しじゃない!早くやってしまいなさいよ!!」

「バカ!喋るんじゃねぇ!!」

シュウの警告は遅かった。一体のスノー・ウルフがシュウからリズベットにターゲットを替えると飛び掛った。いきなりの事にリズベットは対応に遅れてしまう。

「えっ!?」

リズベットは逃げようとしたがウルフが目前まで迫っていた。しかしそのウルフより早く動いた者がいた。

ガブリ!!

「ぐっ!!」

「えっ!?」

それはシュウだった。シュウは他のウルフを片付けると瞬時に距離を縮め、自分の左腕をウルフに噛ませ、右腕でリズベットを抱き寄せていた。シュウのHPゲージはあまり減ってはいなかったが、噛み付かれているその光景は痛々しい程だった。

「俺の腕は美味しくねぇだろう?ウルフさんよ!」

シュウは右腕にべオウルフを身に付けると鉄拳をウルフに打ち込み、弾き飛ばした。そのウルフはポリゴンと化し、消滅して行った。そしてその場に少し沈黙が走った。そしてリズベットが口を開く。

「シュ・・・シュウ。あの・・・」

「リズ。俺はお前に言ったよな?動いたり喋ったりするんじゃねぇぞって・・・」

シュウの言葉にはふざけていることなんか一切感じられない程、声が低かった。

「ご、ゴメン。でもシュウを助けたくって・・・」

「その気持ちはありがてぇんだけどよ・・・そのせいでリズが危機に陥ったじゃねぇか!!」

ウルフ系統のモンスターはプレイヤーの言動でターゲットを変えてくるモンスター。つまり何もしなかったら襲ってこない事をシュウは経験で知っていた。
そしてシュウは声を張り上げ、リズの肩を力強く握り、そして真剣な目線をリズに向ける。

「頼むから無理はしないでくれ。俺は仲間が傷つくのは見てらんねぇからよ」

シュウの眼差しに圧倒されたのか、リズはコクンと頷く。それを見たシュウは肩から手を離し、笑顔を見せる。

「分かってくれれば良いんだ。んじゃ、先に進もうぜ?このままじゃ日が暮れっちまうよ」

「うん!!」

笑顔をみたリズベットは元通りになり、シュウの横を歩き始めた。

(後書き)

一旦きります!!

感想と指摘。よろしくお願いします!!

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