小説『ソードアート・オンライン stylish・story』
作者:アカツキ()

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第二十話 S級食材を探せ!!

シュウはシリカとピナを連れて、アルゲードの南にある【嘆きの森】にやって来た。
この森はその不気味な名前のせいもあるのか、光が密集された木々達によって遮られおり、森の中は暗闇とまでは行かなかったが、一面に暗さが広がっていた。そして木々の幹の形はまるで叫び声上げている人間の顔を思わせるような形をしており、それは一層、周りの雰囲気を不気味立てていた。

「ここが嘆きの森か・・・初めて来たな。て言うか、薄暗いな・・・ここは」

シュウが一人で愚痴っていたがシリカに至っては周りの雰囲気の怖さに少し顔を悪くし、身体を震わせていた。
それもそうだろう。シリカは女の子で、こう言った薄気味悪い所は慣れいなくて当たり前だった。それに気付いたシュウはシリカを慰めるように声をかける。

「どうした?シリカ。怖いのか?」

「だ、大丈夫です!さあ、先に進みましょう!!」

シリカは強がっているのかそんな態度を取っていた。そしてそれを感じ取ったシュウは頭の中で好からぬ事を思い浮かべると、さっそくその行動に出る。

「・・・あれ?シュウ・・・さん?」

自分の心を知られるのを慌てたシリカは急ぎ足で、シュウの前を早歩きで歩いていたが、途中から足音が自分のものだけになった事を感じ、急いで振り返るがそこにシュウの姿はなかった・・・

「ピナ。シュウさんの居所って分かる?」

「キィ・・・」

本来ピナは主やパーティメンバーを定期的に回復してくれる、言わばヒーラーだった。それによってピナは感知などの能力を備えてはいなかった。使い魔と言えど、そこは万能ではなかった。

「分かんないよね。シュウさ〜ん・・・」

シリカはシュウに呼びかける声を上げるが、返って来たのは自分の声の木霊だけだった。そして・・・

ギャアギャア!!!

「キャッ!!」

シリカの大きな声に反応したの鳥のようなモノの声が一斉に森の中に響き渡る。それを聞いたシリカは悲鳴を小さく上げるとその場に蹲る。それを見たピナは心配するようにシリカに近寄った。

「大丈夫だよ、ピナ。今はシュウさんと探さないと・・・」

シリカがゆっくり立ち上がり、問題ない事を言い聞かせた途端・・・

ガサガサ・・・

とシリカの背後の茂みが大きく揺れた。シリカは咄嗟に自分の腰に刺してあったタガーの柄を手に取る。音も大きかったため大型のモンスターと取って間違いないだろう。
しかし一体ならまだしも集団で来られるとかなりやっかいだった。ましてはレベルの低いシリカにとっては泣き面に蜂だった。そして段々シリカの心は恐怖に蝕まれていった。
そして葉と葉の間から鋭い眼光が見えるとそこから・・・

「グワァァァ!!!」

「イヤァァァ!!!」

シリカは飛び出してきた大きな影と大きな声に悲鳴を上げると腰を抜かし、その場にへたり込み嗚咽を出し始める。しかし、何時になっても襲われた感覚に陥る事はなかった。何故なら・・・

「あっははは。俺だ、シリカ」

「えっ?」

飛び出してきたのはシュウだったのだ。
これがシュウの頭の裏に過ぎった好からぬ事の全貌だ。要するにシリカを脅かす事が狙いだったのだが、シリカにとっては少し強すぎたらしく未だに涙を流していた。

(あちゃ〜。これは少しやり過ぎたか?)

流石のシュウもシリカを見ていると罪悪感に襲われて行った。
幾ら悪戯とは言っても相手を泣かせてしまう程の物はシュウにとってはそれは悪戯ではなかった。

「悪ぃ、シリカ。まさかここまで怯えるなんて思ってなかったからよ。どうするれば許してくれる?」

シュウが慌ててシリカに謝り、どうすれば良いか聞くとシリカは涙を拭い、シュウに近寄る。

「ひっぐ。じゃあ・・・私と手を繋いでくれたら許してあげます。後二度とこんな事はしないで下さいね」

「分かってる。俺もガキっぽいことやって悪かったな。ほらよ」

シュウがシリカに自分の左手を差し出すとシリカは泣き顔からパアと笑顔になるとその手を取った。シュウの手は大きく、そして温かいもので、握っているだけで安心感を覚える程だった。

「シュウさんの手・・・温かいです」

「そう言ってくれると嬉しいぜ。んじゃ、このまま獲物を探すとするか?」

「はい♪」

シリカはご機嫌の表情を浮べるとシュウ達は目的のモンスター【フリット・ラピッド】を探し始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

シュウ達が探し始めて、三〜四時間位が経った。しかし【フリッド・ラピッド】は見つける事は出来ずに、そこらにいるモンスターと鉢合わせる事しか出来なかった。それに関してはシュウが相手をしてくれたため、大きな問題とはならなかった。

「シュウさん。もう帰りませんか?これだけ探してもいないんですから」

「Now then(そうだな)。今日は日が悪かったみてぇだな・・・悪ぃな、シリカ。こんな事に付き合せてしまってよ」

「大丈夫です。今日はシュウさんと一緒に冒険をする事が出来ましたから♪」

「そう言ってくれると嬉しいってモンだ。んじゃ、転移結晶で帰るか」

シュウがシリカに提案するとそれに頷き、同意する。そして転移結晶をポーチから取り出し、アルゲードに転移しようとしたその時・・・

「ん?」

感知スキルがMAXのシュウが何かに感ずいたのか転移結晶を使用せずに、ポーチの戻す。それを見たシリカも宣言しようとしていたが慌てて、結晶を戻し、シュウに尋ねる。

「あの・・・どうしたんですか?シュウさん」

「しっ・・・静かに」

シュウは自分の口に人差し指を置き、声を出さないようにジェスチャーを送るとシリカも分かったかのようにコクンと頷く。
そしてシュウが大きな木の根元を凝視すると一匹の白いウサギが居座っていた。このウサギこそ、目的の【フリッド・ラピッド】だ。このモンスターに危険性はないが兎に角、疾かった。見つけて仕留めようと思ってもその場に居なくなるほどのスピードで、狩猟するには闇討ちを狙うしかなかった。
シュウはリベリオンからルシフェルに替えると両手に二本の起爆剣を作り出し、それぞれの手に持った。そして小声でシリカとコミュニケーションを取る。

「どうやら最後で運が回って来たみてぇだな。シリカ、俺が仕留めてくる」

「分かりました」

「んで、シリカ。少しお願いがあるんだが良いか?」

シュウがシリカに自分の願望を言い聞かせるとコクンと頷いた。シリカの同意を聞くと投擲の出来る位置にゆっくりと足を忍ばせた。そしていい距離になるとまず利き腕じゃない左で起爆剣をラピッドの周りに投げる。

ドス!!

と音が響き渡るとラピッドは驚き、その場を飛び跳ねた。第一投は音による陽動で、意識を投げた剣に向かせるためだった。そしてそれを見たシリカはシュウの言われた通り、一本目の剣が投げられ、ラピッドが見えた瞬間シュウに言われた事を言った。

「決め台詞は?」

それを聞いたシュウはニヤリと笑みを零し、右手の剣を振りかぶり・・・

「Jack pod(大当たり)!!!」

投擲すると見事にラピッドを貫き、消滅させた。ラピッドの身体はそんなに大きいものでは無かったが投擲スキルもMAXなシュウにとってそれは容易な事だった。そして習得アイテムを見るとS級食材の【フリッド・ラピッドの肉】が表示されていた。

「狙って獲物は逃さねぇ・・・ハンターの鉄則だ」

「やりましたね?シュウさん」

「ああ!んじゃ、アルゲードに戻るか。シリカもお腹が空いただろう?」

「そんなことないで・・・」

クゥゥゥ・・・

シリカがシュウの言葉に反論しようとした瞬間、お腹の音が可愛く鳴った。それを聞いたシリカは顔が真っ赤になり、シュウから視線を背ける。

「あっははは。身体は正直みてぇだな?シリカ」

「あうぅぅぅ」

シュウはシリカを宥めると転移結晶でアルゲードに転移した。

(後書き)

次回はクッキングタイムです♪

ジャックポッドは銃の台詞ですが、今作はそれがないため投擲に場面で用いさせて貰いました。ご了承下さい!!

感想と指摘、よろしくお願いします!!

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