小説『ソードアート・オンライン stylish・story』
作者:アカツキ()

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第二十一話 クッキングタイム

目的のS級食材【フリット・ラピッドの肉】を入手したシュウ達は転移結晶でアルゲードに飛んだ後にシュウのホームに戻った。そしてシュウは何時もの仕事着・・・真紅のコートから赤を中心とした動きやすい私服に着替えた。シリカも自分の私服に着替えたみたいだった。

「シュウさんって私服も赤なんですね」

シリカはシュウの色の趣味を尋ねたが人それぞれなのでシリカもこれ以上とやかく言うつもりは毛頭ないみたいだった。
そして応接室の奥にあるリビングとキッチンが一緒の部屋に移動すると手に入れた【フリット・ラピッドの肉】を取り出し、調理台の上に乗せるとシリカに何が食べたいかを聞く。

「これがS級食材か。さてと、シリカは何が食べたい?」

「それはシュウさんにお任せします♪」

「そうか。・・・んじゃ、久しぶりにシチューでも作るか」

そう言うとシュウは三徳包丁を持つと食材を刻んで行った。ここでシリカがシュウに質問をする。

「シュウさんはリアルでも料理をするって言ってましたよね?と言う事は、家族に作ったりしてたんですか?」

「家は両親が多忙だったからよ。変わりに俺や兄貴がたまに作っていたんだ。俺はカレーやシチューみたいな煮込み系の料理が得意だからな。そんで妹が『お兄ちゃんが作れるのに私が作れないなんておかしい!!』って、何張り合ってんのか知らねぇが、自分でも料理するようになったんだよ」

「あはは♪妹さんは負けず嫌いなんですね」

「兄貴にはそんな風じゃないのに何で俺ばっかに突っ掛かってくるんだ?アイツは」

シュウは自分の疑問を口にしながら、食材を刻んで行った。しかしシリカにはシュウの妹・・・アスナが何故シュウに突っ掛かるのか前の話と連想させて自分なりの答えを導き出していた。

「それは妹さんがシュウさんの事が大好きだからだと思いますよ?」

「アイツが俺の事を?」

「そうですよ。何の理由も無しに突っ掛かるなんて変ですよ。シュウさんが妹さんを想っているからこそ、妹さんはシュウさんの事が大好きなんですよ、きっと」

シリカの自信満々な言葉と曇りの無い笑顔を見ていたシュウは、共感せざるを得なかった。シュウ自身はそんな事を微塵も考えていなかったため、少し驚きの表情を浮べて、内心では嬉しさがあった。
アスナが少しでも自分に心を開いてくれると嬉しいと願ってきたがあまり感じ取ってはいなかった。しかしシリカの言葉で考えてみるとそれは別の意味でシュウに心を開いている証拠でもあった。

「シリカ。ありがとな?慰めてくれてよ。お陰で気が楽になったぜ」

「えへへ。どういたしまして」

シュウはシリカにお礼を良いながら、自分は調理に専念して行った。

「まあ。本当だったら手順やら味の調節があるがSAOの料理は簡略化されすぎだな」

シュウは切り終えた食材を鍋の中に入れ込み、オーブンのような物に入れるとタイマーをかける。
リアルなら、ここから色々工夫する事により、味を一層良い物に変えることが出来るがSAOではそこまで具体的には再現する事は出来なかったようだ。自分で素材を研究し、調合すればそれなりの調味料を作る事も出来るだろうがシュウはそんな事をやろうとは思っていないみたいだった。

「後は付け合わせのサラダとピナ用のステーキを作るだけだが、そう時間は掛からねぇから先に座っててくれないか?」

「分かりました。行こう?ピナ」

「キィ♪」

シリカとピナはシュウに促されて、リビングのテーブルに腰掛けて料理が運んでくるその時までゆっくりと待っていた。
そして十分後、両手に二つの皿を持ったシュウがキッチンから出てきた。一つはピナ用に小さく切ったフリット・ラピッドの肉のステーキ。そしてもう一つはデミグラスソースで彩られたシチューだった。

「待たせたな?出来たぜ」

「うわぁ♪美味しそうです」

「キュー♪」

シリカとピナはその出来栄えに目を光らせていた。そしてシュウは自分の分と付け合せのサラダを持って来ると自分の席に着き、各自に皿が回っていることを確認すると・・・

「「いただきます」」

「ピィ♪」

感謝の気持ちを捧げ、食事を始めた。シリカがシチューを口に運び、その味を確かめると・・・

「美味しい!とても美味しいです、シュウさん」

程好い旨みが口全体に広がり、シリカを笑顔にして行った。ピナに至っては無我夢中でステーキにがっついていた。

「そう言ってくれると嬉しいモンだな。後、サラダもちゃんと食べろよ?」

「分かってますよ」

これはリアルでもそうだったが、シュウは食事をする際には必ずバランス良く取る事を心がけており、好き嫌いも殆ど無かった。そのためシリカにはちゃんとサラダを食べるように促すが、シリカは文句一つ言わずにそれを食した。そして食後にはシリカの大好きなチーズケーキまでシュウが作っており、大満足だったみたいだ。
シュウはテーブルの食器を一つに纏め、キッチンに持って行き、食器洗い機に入れて戻ってくると・・・

「スゥ・・・スゥ・・・」

流石に今日の探索に疲れたのか、シリカはテーブルにうつ伏せながら寝息を立てていた。そしてピナはそれに寄り添うように羽を閉じて、見守っているようだった。
それを見たシュウはフッと軽い笑みを零すとシリカを起こさないように抱き抱えると自分のベッドに寝かせ、毛布をかける。

「今日はお疲れ様。ゆっくり休めよ?シリカ」

シュウは応接室のソファーに横になると天井を見ながら自分の疑問を思い浮かべる。

(そういや。キリトとアスナはどうしてんだ?最近連絡がねぇが・・・まあ、考えてても仕方ねぇか。あいつ等はあいつ等でやってると思うし・・・俺が気に病む必要はねぇか)

自分の疑問に終止符を打つとシュウも疲れたのか、意識を手放した。

(後書き)

感想と指摘。よろしくお願いします!!

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