さすがに人間以外の種族しかいないと気づいたこの学校に耐えられなくなった私。気づくのが遅れたのはきっと狼男とかミイラっぽい子・夢魔ちゃんみたいに普通の人間とあまり変わらない姿形をしている種族が多かったからである。 夢魔ちゃん達からだけでなく、この学校の全員が無性に怖く思えて外に飛び出した。
(パパやママと話し合ってこの星から出ていこう)
欧州風の建物が多い区画を抜けてこの星で両親が借りた新しい住まいにとびこむ。
「パパ、ママ。大変よ」
両親に訴えかけてこの星を出ることを頼み込もうとしたバラーが見たのは――
「おかえり。早かったね」
全身白い毛に覆われた雪男になりかけている父親と白い顔に着物、自然と体から吹雪が発生している雪女になりかけている母親だった。
「いやあああ」
両親がすでに人間でなくなってしまった彼女はすすり泣くしかない。
「うっうっうっ・・・何でこんなことに」
私が不安になったときに慰めてくれると、どんな姿が変わっていても安心感は健在なので複雑な気分だ。
「何、この身体もなかなかいいぞ!ねえ、ママ!」
野太い声でママに同意を求めるパパ。ママは姿が変化してもすでに受け入れているようであった。
「ん?それよりバラー…お前も変化してきてるな」
バラーはまだ涙の痕が残ってはいるが、気分的には少しずつではあるが落ち着きを取り戻しつつある。
「声変わりにしては神秘的すぎる声、背中に翼っぽいのも・・・いてててっ、目をつぶそうとするんじゃない」
「認めたくないんだもん」
それがバラーの偽りない本心であろう。
「昨日から散散だよ〜〜」
両親が既に人間じゃないもの(人外な種族)に変化してしまったからこの星を出られないし、出る気もなさそう。夢魔ちゃんのせいで私が地球でボロボロになりながらセイレーンとして見世物にされている夢も見たし、脳裏に焼き付いて離れない。
「おはよー」
声をかけてきてくれたのはやっぱり夢魔ちゃんだ。彼女のせいで悪夢が脳裏から出ていかないのだが、悪い子じゃないのはわかる。本当に私と仲良くしたいだけなのも伝わってくるので邪険にする気も起きないし出来ない。
「あっ、夢(ムー)ちゃん。おはよ――」
「あのね、昨日言おうとしてバラーちゃんが帰っちゃったから言えなかったんだけど」
夢魔ちゃんの真剣な表情、初めて見たと私は思った。何を言われてしまうんだろうと思うと私は自然と身構えてしまっていた。
「えっ」
「バラーちゃん。身体の変化来てるよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
私がこれからの不安を感じて涙を流していたのにも気づかず、夢魔ちゃんが推測を語りだす。
「声を聞いて羨ましくなっちゃった、セイレーンかな?」
この学校を私は続けられるかわからない。混乱の日常は今始まったばかりである。