小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 さとるは社交的な性格(だが、言わなくていいことまで言ってしまう損な性格ではある)なので初めての場所でも新しい仲間を作ろうとする。
「よっしゃー! 友達作るぞ」
 当然のように騒がしいのが好きではない人もいるので難しい本を読んで黒いローブを着た少女に注意された。
「ちょっと。勉強中だから静かにしてよ」
 話しかけられたのが嬉しいさとる、改めてその人物の服装とかを見て問いかける。
「あなた魔女!?」
 
 さとるの声が大きかったせいか、魔法使いっぽい少女はかなり驚いた。
「そうだけど……」
 飛び上がりたいほどの勢いで喜びを表現するさとる、魔女見習い(?)はさとるについていくことが出来ない。

「すごいよ! 魔法見せて〜。僕にかけてよ回復魔法とか」
 やってみて欲しい魔法を次から次へと言っていくさとる、思いつくままに言っているので何を話しているのかわからなくなってきている。
「一発で死ぬやつとか」
「かけて……欲しいの?」
 魔女見習いは多分その魔法を使えないだろうが、彼女の顔が青ざめてきているので、さとるが「今のなし」と気づくのはそろそろであろう。


 机の上に魔法書が置いてあるのに気がついたさとるが魔女見習いの少女に質問する。
「勉強家なの?」
「当たり前よ」
 質問に答えながら魔女見習いが魔法書を手に取った。
「魔法大臣を目指しているんだから常にトップでなくちゃ…………」
 自分の目標を主張する魔女見習いは話をしている最中でも魔法書を手放さなかった。それだけ努力を積み重ねているのであろう。

「魔唱! この前のテスト、また赤点だったからいつものところで補習な」
 僕が魔唱ちゃんに勉強の話を聞いている時、タイミング悪くこの学校の悪魔の角らしいものを生やしている先生が余計なことを言い残していく。魔唱は勉強しただけモノになることがなかなかない、苦労が報われないかわいそうなタイプのようである。

「勉強だけが人生じゃないぞ」
 さとるがなぐさめようとするが、彼女のプライドは傷ついてしまったみたいだ。僕のせいではないとはいえ、支えてあげたいと思っていたのだが……
「うるせ〜、笑いたければ笑えばいいじゃない」
 彼女の落ち込みは半端ではない。誰も私に近づいてくるなオーラが強大だ。元を正せば先程のタイミングの悪い先生の呼び出しが悪いのだが、気持ちが落ち着くまではその場を動く気力がなさそうだった。

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