小説『数ページ 読みきりもの』
作者:下宮 夜新()

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 昼の時間になった。俺は実家から送られてきた高級食材があるので豪華な弁当を作ってきていた。昔に実家で習わされたものの中で楽しんで習った結果、腕前は確かなものである。この弁当に魅せられている男の級友が望めば分けるという器量もあるよ、俺は。

 あかいろはというと、俺の横で削り器でカツオブシを削り、ご飯を用意してきていた。削ったカツオブシをご飯にのせ、それにしょう油をかける。

 それからそのカツオブシご飯を幸せそうにかきこみ始める。
「自分だけ豪華なのを食ってどんな神経してんだよ!! かわいそーに!!」
「あれがそいつの好物なんだよ!!」
 級友達があかいろを哀れに思ったり、扱いに怒ったりしてくる。俺の名誉のために言わせてもらえば俺はあいつの分も用意したんだ、弁当一人分も二人分もあまり手間は変わらないし。「主君と同じ食事をするなんて滅相もない」ってあかいろが断らなければこの二人に理不尽なことを言われずにすんだのにと俺は思った。

 授業が終わり、掃除もすませたら帰るやつは帰るし、部活のある者は部活に向かう。ちなみに俺はテニス部だ。今日のメニューは試合形式の練習だと教えてもらっていた。
「でさー」
「へー」
 俺が話していたのは昼休みに話していた級友達である。実は同じ部活だったんだよね、「そろそろ俺達の番だな」とかたわいもない話をしている。今、試合形式の練習中の部員が打ちそこねたボールが(直江)入高の肩に当たりそうになったのであかいろが叩き落とそうとした。
「あぶない主様(あるじさま)っ!!」
「わっ」
 あかいろが叩き落とそうとしたボールは落ちずに叩き落としの反動で浮いて俺の頬に直撃する。



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