大昔、誰からも蔑まれるほど醜かった私は、いつも愛を求めていた。
だから、禁忌とされていた魔術を使い、醜い人から、美しい魔獣となった。
けれど、まだ幼かった私は、自分が『愛』を求めていると認めたくなかった。
やっと築いた私だけのお城は、余りに空虚で満たされていました。
「ココには魔獣が住んでいる。近づいてはいけないよ」
「近づけはたちまち食べられてしまう」
食べるわけないのに。元は人だから、食べるなんてことは絶対にしない。
自分の噂を聞くたびに、自分は強いのだと思った。一人でなんでもできると思っていた。だから、私は一人だけでいい、他の誰もいらない、私は強い、そう言い聞かせた。
けど、人が紡いでいく友情などを窓の外から眺め続けた。それでも、一人でいいと、無理やり思った。
それが、幼い僕のプライドだった。
ある日、小さな子供がどこからか私の孤独の城に入り込んできた。驚いて、とっさに暇つぶしで呼んでいた本を落とす。私と同じ緑の髪をした幼い子供は、私を見ると、恐がりもせずに私に近づいてきた。
「お姉ちゃんだぁれ?お城の人?」
「・・・!・・・どこから入ってきたんだ」
心を落ち着かせてから静かに、怒気をはらんで問う。すると、子どもは分からないと答えた。
「あのね、パパとママにここに居なさいって言われたの。最近、空が泣かなくて、きっと、お城の人が怒ってるからだって」
なるほど、つまり、魔獣の私が魔術を使って雨を降らせない様にしていると思ったんだな。それで、子供を生贄にしたか。愚かな奴らだ、都合が悪いことはを全部私に押し付けて。確かに私は魔術を使える、けど、めったに使わない。
「はは、喜べ。お前はお前の両親にとってはどうでもいい存在らしいぞ。よかったな。お前は誰からも必要とされていないの」
一人だと指をさす。
「いいか、ここは私だけの城。お前は、噂の魔獣を知っているか?」
おずおずとうなずくのを確認して、私は見下すような目で目の前の子どもを見る。
「私がその魔獣だ。そして、お前は今から私に殺されるんだ」
恐がれ、恐がってさっさと城から出て行ってしまえ。そうすれば、直ぐにこんなことは忘れて普通の何もない日常が・・・
すると、その時、手に温かいぬくもりが伝わってきた。
「お姉ちゃんの手、悲しいくらい冷たいね」
「・・・!」
気が付けば子供が私の手を両手で包んでいた。冷たい?何を言っている、私の体はちゃんと熱をもっている、なのに・・・
高く高く積み上げたレンガをたやすく飛び越え、触って気づいた。
「ずっと寂しかったんだね」
『寂しかった』その言葉を聞き、私は手を振り払って怯えた。
「寂しい・・・・!?私が寂しいわけあるわけない、私は一人でなんでもできる。お前みたいな弱い人間より、強いんだ。出口はそっちだ、さっさと出て行け。そして二度と来るな!今度来れば、命はないと思うんだな!」
早口で怒鳴ると、私は子供から離れた。自分は強いんだと飾って、自分と人の距離を測って。思っていたより近くて焦って乱れて乏して逃げ出した。
そんなわけがあるはずがない。私は、愚かで醜い人とは違う。寂しかって?もし寂しかったのなら、だれがこんな状況にさせた?お前たち人間だ。お前たちは、私と蔑んだんだ。