それはまるでスローモーションのような恐ろしい感覚だった
風がスースーと胸から背中に渡っていって
視界に広がるものはビルの雑踏
落ちる速度が思ったよりもゆっくりで
感じたことのない恐怖で
怖くて仕方なかった
――――ああ 死ぬんだ、あたし…
死にたくない
生きたい
どんな方法でもいいから、落ちる前に戻りたい
タイムマシンでもあったら飛び乗る
今なら、きっと
でも もう遅い
落ちてる
落ちてる
あたしが落ちてる
死にたくない
死にたくない
死にたくない
「死にたくないっ!」
咄嗟だった
咄嗟に出た言葉
叫んでいた
その言葉を
ただただ大きな声で
「う゛っ」
一瞬の合間に何かが起こった
下に広がる景色が近づいてこない
風も胸から背中に渡っていかない
体が下に落ちずその場で固まってる
宙に浮いてる
…誰かに背中を引っ張られてる
そのおかげであたしは宙に浮いてるみたいだった
宙ぶらりん状態だ
何が起きているんだろう
それに、だれがあたしを引っ張ってるの…?
だれ?
っ…
意識が遠のいていく
だんだん…
なくなって…
………
「おまえは死なせない」
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