小説『君が死んだ日【完】1000hit達成!!』
作者:ハル()

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「2回目は言わないから」

あっ。なんか凄い気まずいオーラが漂ってるよ。そんなにおんぶって言うの恥ずかしかったのか。
破廉恥なイケメンが薄く眉間にしわ寄せてる。
この人ってこんな神経質な感じの人だっけ?
ほら、屋上で会ったときはセクハラ発言ワーワー言ってヘラヘラしててパッパラパーなムード漂う人だったじゃないか。
なんですか、このギャップというか違いというか…
別人に近いですよ今のあなたって。なんか怖いですよ。ホント。

「ハハ… それより何であの屋上に行ったんですか?わざわざ屋上上って何を?それにあなたはいったい何者なんですか?」
この人のことあたし何も知らない。とりあえず、破廉恥さんとでも呼んでみようか?

「ちょっとちょっと、そんな質問攻めしないでよ。まぁ一つずつ答えていくけどさぁ」
あっ パッパラパーになってきた。

「じゃあ、まず屋上のことを」

「はいはい。まぁ、ここらへんって喫煙所が多いからさぁ、とりあえずあの屋上なら煙草吸えるかなーって思ってね。それで屋上行って煙草出そうと思ったら片足上げた破廉恥行為極まりない君を見かけてねぇ」

「あの、知っててそれ言いますか!?あたしは自殺しようと思って仕方なく体をああいう体制にしてですねっ」
てか、あんたこそ破廉恥ですよ。
破廉恥に破廉恥なんて言われたくないわっ!
あぁ もう…

「えっ?何?聞こえないなぁ。それにしてもねぇ。ククッ」

「何笑ってんですか?破廉恥さん?」
もうマジでこの人イラッとするから破廉恥さんでいいや。

「は?うるさいなぁ、水玉ちゃん。さっさと認めちゃいなよー。」

「いやっ絶対認めませんから!てか、さりげなく下着の柄で呼ばないでくださいよ。あたし破廉恥じゃないし゛そういうの゛興味ないしっ」




「そういうのって何?」



え……?

フワリと人の体温が頬をかする。

近い、近いですよ破廉恥さんっ!
今、破廉恥さんの顔があたしの顔の真ん前にある。
鼻が触れそうなぐらい近い。
そんな綺麗な顔寄せないでくださいっ
心臓バックバクになるんですけど。
しかも後ろに少し下がってもなんかまた寄ってくるし…
やめろっ破廉恥!

「いやぁ…そんな深い意味は特にっ…」

「へぇ そうなんだ…」
急に破廉恥さんが切なげな表情を浮かべた。
何ですか、あなた次はいったい何を考え…

スルッ

一瞬の合間にあの人の細い指があたしの頬を触れる。
ただでさえ顔近くてどきどきしてるのに…
「なっ なんですか…?」

「…別に」

そう言って破廉恥さんは指を頬から髪の毛へと移動し、指に焦げ茶色の毛を絡ませ弄びはじめる。
切なげな表情からは妖艶さが感じ取れる。

なんでだろう

名前も知らない人に触られてるのに、あたし嫌がってない。
なんで…?

なんか、トロンってしてくる…
ユラユラして体に力が入ったり抜けたり…
なんだかおかしい…

「ククッ」

あれ、笑ってる声がする。
破廉恥さんだ。



「あの、どうしたんですか…?」

「年下を弄ぶのは楽しいなぁって ククッ」

じゃあ、さっきのは…

「も、もしかしてあの表情とかって全部演技だったんですかっ!?」


「うん。まぁね。それにしても君の反応は面白いなぁ」
ケラケラ楽しげに笑う破廉恥さん。…。



…あたしのドキドキを返してくれませんかっ!!?



てか、この人演技完璧すぎるよ。
怖いよ。怖すぎますよ。あなた結婚詐欺師ですか!?

「破廉恥さん、あなたって結婚詐欺師ですよね?」

「…言っとくけど俺の名字は矢木矢(ヤギヤ)だから。それに詐欺師でもないから。ちょっと君、殴っていい?」

「NOー! それだけは!」

「嘘嘘。冗談だから。ハハハハハハハハ」

(絶対少しは怒ってるでしょ)



へぇ。この人矢木矢って言うんだ。

なんか言いにくい…
や、やぎ…やや

「…ヤギ?」

「ねぇ 殴っていいかな?」
ヤギさんニコニコしながら手をグーにしてるよ。
おっ 恐ろしいぃ

迷わずあたしは

「NO」

と答えた。


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