姉のおどけた声が携帯からする。
元気そうで何よりだ。
「驚いたもなにも、姉ちゃん今病院にいるんでしょ?」
『うん。リアルに入院中〜』
「いや、そこはおどけないで。病院の中は携帯で電話するの禁止でしょ?」
『ん。だから今、病院の屋上』
あ〜 なるほどね〜
「で、いきなり電話よこすなんてどうしたの? いつもはしてこないじゃん」
『だっていちいち屋上行くのめんどくさいし、香奈に電話で話す話題がないもの』
はいはい、そうですか。そうですか。どうせ地味なあたしと話す話題なんてないよねぇ。
姉ちゃん相変わらずねぇ。
『香奈。たまにはお見舞い来てよ』
「え……?」
『お見舞い来てほしいなって…』
「あっ いくいく。いくよ! 絶対行くからっ」
あたしは少し焦ってる。結構焦ってる。焦ってるというか驚いてる。
お見舞いの話を持ってきた時の姉の声が今にも消えそうなぐらい弱弱しいものだったからだ。
きっと寂しいんだ。悲しいんだ。苦しいんだ。
……絶対あたしお見舞い行くし。
『楽しみに待ってるねー』
姉の声がいつもどおりの明るいものになった。
少し、安堵する。
まだ完全に安堵はできないけれど…。
―――――――ツーツーツーッ
電話の切れた音がいつもより冷たく感じた。