「こんにちは」
窓口にいる看護婦、佐藤さんににそう言った。
「あら、香奈ちゃんじゃない。どうしたの?」
「ちょっと…姉に会いに…」
「あぁ、なるほどね」
「はい、、」
あたしと佐藤さんは姉のいる部屋に向かって廊下を歩き出す。
室内に広がるものは薬の匂いと白い壁。ただ白白白。
なにも変わっちゃいない。
全部。姉だって…。
ね、なんで変わらないの。なんでなんでなんで…なんで?
「…お姉さん、いつから入院してるんだっけ」
「確か、あたしが小4ぐらいの頃には。姉は小6の夏に――」
姉はいつまで、病魔に操られなきゃいけないんだろうか?
『ゲホッゲホ……ゴホ………ゴボッ』
『姉ちゃん!?』
セミの鳴き声とともに姉にとりついた病魔は産声をあげた。
姉の多量の吐血を合図に。