あたりまえだが、あたしはすぐさま姉を問い詰めた。
「小野さんってさぁ〜。ぶっちゃけ姉ちゃんの彼氏でしょ〜?」
「……違う! ……小野君は友達っ」
そう言う姉の表情は焦り気味。顔に出やすいというのは実にわかりやすい。
「ホントは好きなくせにぃ。それにその間はなに?」
「ぅ……」
フッ。勝った。あたしの勝ちだ。
姉はお手上げポーズ。姉はしつこく聞かれるのに弱いのだ。
そして姉は話しはじめた。
「…自分にとって小野君は大切な人、かな」
姉はなぜか悲しげな表情だ。
「てことは、好きなの!?」
「――うん。でもすぐ、諦めなくちゃ」
諦める…?
「え、なんで? 普通に好きなままで良いじゃん、なんで姉ちゃん諦めるの?」
そう聞けば姉は自分の顔を枕にうずめた。
「姉ちゃんどうし―――」
ひっひっ
姉は泣いていた。ひっひっと姉の抑え気味の泣き声に湿った枕。姉は細い指でシーツを握りしめた。
しわ一つないシーツが歪んでいく。
苦しげに姉は泣きながら必死に言った。
「も、う、時間がっないっの。病気、悪化したからっ。きっと私、死んじゃうっから、小野君のこと諦めなきゃ、きっと苦しい。だからっ……!」
「…姉ちゃん」
姉は赤い顔をして病室内にあるゴミ箱を指差した。
その中をのぞけば真っ赤な光景があった。なに、これ…。
「それ全部血だよ」
「え、?」
「鼻かんでたら鼻水じゃなくて血だった」
姉は平然と答えていく。さっきとは打って変わって血の気が失せたような顔で。
そんな状態の姉をつい、怖い と感じてしまった。