「―――じゃあ、また来るね」
「うん、またね」
姉は、明るい笑顔であたしを見送った。
泣いたあとがまだ残っていたけれどとびっきりの笑顔で。
そんな健気な姉を真っ直ぐにあたしは見れなかった。
今の姉が明るく振舞っている姿は自分には痛々しく思えて仕方なかったのだ…。
病室を出た後、廊下を歩いているとある事に気がついた。
ザー―――――ッ
「雨、ひどくなってる…」
来るときの雨量とは比べ物にならないほど外はひどかった。
まるでそれは何かの前触れなんじゃないかと思うほどに。
そう思ってしまう自分が嫌になり、走った。廊下を。
逃げたい逃げたい逃げたい
走れば走るほど自分の中でくすぶっていたそれが大きくなる。
まるで破裂するみたいに。
しぼんだはずの、捨てたはずの風船にまた空気を入れるみたいで。
まるで繰り返し。
もう、すべての現実から逃避したくてたまらない
あたしは過去でも未来でも、どれほど大事な人を失ってしまうのだろうか。
クラスメートの咲、いつかは姉ちゃんだって…―――。
何もできずにいる自分がひどく、恨めしい。
…なんであたしは
「――っく、ひっ」
弱い人なんだろ。
どうして―――
「どうしたんですかっ」