小説『ハイスクールD×D ~古代龍の覚醒~ 』
作者:波瀬 青()

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深夜、俺たちオカルト研究会のメンバーは町外れの山奥に来ていた。
この山奥の廃屋に、はぐれ悪魔が潜んでいるらしいのだ。
一歩一歩、静かに奥へ進んでいく。

確かに回りからは異様な空気を感じた。
みんなの顔もいつもの時とは違い、険しい。

「イッセー、今回俺たち役にたてるかな?」

小声で隣を歩くイッセーに尋ねる。

「俺はともかく、エージは役にたてるだろ。堕天使倒したんだしさ……。
それより心配なのは俺の方だ。」

暗い顔で返してくるイッセー、

「部長も言ってたけど。ありゃまぐれだ。あれから俺の神器は発動しないし、
見掛けだけでも発動した方がいいだろ。」
「そりゃそうだけど……。俺のだって発動するだけで、どんな力があるのか分かってないんだぜ?」

お互い顔を見合せ、溜め息を吐く。

「俺たちの上級悪魔への道は遠いな……エージ。」
「そうだな……イッセー。」

話しているうちに、件の廃屋が見えてきた。
近付けば、近付く程、悪魔になって強化された五感が何かを感じ取る。

まずは音だ。グチャグチャと何かを咀嚼するような音がする。
次に、臭い。辺りに充満しているのは噎せ返る程の血の臭い。
最後に見た。廃屋に入った俺たちを出迎えるように、暗闇の中から現れたソレに俺は絶句した。

現れたのは、上半身は裸の美しい女性だが下半身は大きな四本足の化け物だった。
尾が独立した蛇になっていて、両腕に槍のようなものを持っている。
世に言う悪魔のイメージに近いフォルムをしたソイツは、口を笑みの形に歪ませた。

「不味そうな臭いがするぞ?でも上手そうな臭いもするぞ?
甘いのかな?苦いのかな?」

不気味な響きを持った、低い声音だ。聞いただけで身体を縛り付けるような、恐怖に襲われる。

「あなたがはぐれ悪魔バイサーね。主を裏切り、己の欲求を満たすためだけに暴れるのは
万死に値するわ。グレモリー公爵の名の下に、あなたを裁きます。」
「小娘がぁぁぁぁぁぁぁ!!その髪を貴様の血でさらに鮮やかにしてくれるわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

激昂した、はぐれ悪魔を冷たく見つめながら部長は言う。

「その台詞、完全に殺られ役の台詞よ。祐斗!」
「はい!」

部長の命令に従い、化け物に向かって飛び出す木場。
全く見えない。

「あなたたちには話したと思うけど、私たち悪魔は大昔に天使、堕天使と
永い間争ったの。その戦争のせいで純粋な悪魔が多く亡くなったわ。でも
天使と堕天使とは現在でも睨み合いが続いていて、隙を見せるわけにわいかなかった。」

部長が静かに語り、今度は姫島先輩が続いた。

「そこで悪魔は少数精鋭の制度を取ることにしたのです。それが
『悪魔の駒(イーヴイル・ピース)』―――」
「「イーヴイル・ピース?」」

二人して聞き返す俺たちに部長はさらに説明してくれた。

「爵位を持った悪魔は人間界のボードゲーム、『チェス』の特性を下僕となる
下級悪魔に取り入れたの。祐斗を見てみなさい。」

見ると木場ははぐれ悪魔の攻撃を全て避け、どんどん加速していった。
もうほとんど見えない!!何て速さだ!!

「祐斗の駒は『騎士(ナイト)』。その特性はスピード。」

次の瞬間、はぐれ悪魔の右腕が切り飛ばされていた!!着地し、減速した木場の手
にはいつの間にか剣が握られていた。

「そして、あの剣術。目にも留まらぬ速さと、達人級の剣さばき……
二つが合わさることで、祐斗は最速のナイトになるわ。」

怒り狂うはぐれ悪魔の足元に、小さな影……あれは塔城さんじゃないか!?

「小虫がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ズンッ!

はぐれ悪魔の巨大な足が塔城さんを踏み潰す!いくらなんでもあれはヤバイ――。
だが、その心配は杞憂に終わった。
はぐれ悪魔の足は塔城さんは軽々と受け止めていたからだ。

ぐぐぐ……。

しかもあの巨大な足を押し返している!!

「小猫は『戦車(ルーク)』。特性はいたってシンプル。屈強な防御力と―――。」

完璧にはぐれ悪魔の足を押し退け、はぐれ悪魔に向かってジャンプした塔城さん。

「バカげた力よ。」
「……ふっ飛べ。」

塔城さんのパンチは、はぐれ悪魔のどってっ腹に打ち入れられた。

ドドンッ!!

あの巨大なはぐれ悪魔をぶっ飛ばした!!
それを見てイッセーが呟いた。

「俺の依頼者さんが言ってたよ……小猫ちゃんは怪力が自慢だったって。」
「怪力ってレベルじゃねぇよ……。」
「だな……。」

俺はもうに度と塔城さんに逆らわないことを強く心に誓った。
俺だって後輩に殺されたくはない。

「最後は朱乃ね。」
「はい、部長。あらあら、どうしようかしら。」

姫島先輩が微笑みながら、地に伏すはぐれ悪魔のもとへ歩みだす。

「朱乃は『女王(クイーン)』。『王(キング)』である私の次に強い最強の者。
『兵士(ポーン)』、『僧侶(ビショップ)』、『騎士(ナイト)』、『戦車(ルーク)』、全ての特性を
兼ね備えた無敵の副部長よ。」
「ぐうぅぅ……。」

呻きながら、姫島先輩を睨みつけるはぐれ悪魔。それを見て姫島先輩は不敵な笑みを
浮かべる。

「あらあら、まだ元気見たいですね?それなら、これはどうでしょうか?」

姫島先輩は手を天に向かって翳す。

カッ!!

刹那、天が光輝き、はぐれ悪魔に雷が落ちた。

「ガガガガッガガガガッガガガガッッ!」

激しく感電する化け物。その身体は煙をあげて全身丸焦げに
なっていた。

「あらあら、まだ元気そうね?まだまだいきますわよ。」

カッ!!

再び雷に撃たれるはぐれ悪魔。

「ギャアアアァァァァアァァッ!!」

感電しながら発する絶叫は断末魔にしか聞こえない。
だが、それでも姫島先輩は容赦しない。
三度目、雷を繰り出す。

「グァァアァァアアアァァァァァァアァァ!!!!!!」

姫島先輩の表情は冷徹で怖いほどの嘲笑を作っていた。
わ、笑ってるよ…………あの人。
俺の勘が告げている。この人は危険だと。

「朱乃は魔力を使った攻撃を得意としているわ。雷、炎、氷などの自然現象
を魔力で起こすの。それに何より、朱乃は究極のSよ。」

軽く、いってのける部長。
S ……Sの次元をこえてるよ………………。俺の中の姫島先輩のイメージが
音を立てて崩れていった。

「普段は優しいけど、戦闘になれば自分の興奮が収まるまで相手を痛めつけるわ。」

いつも人の行動を観て考察してる俺にも分からない部分があったのか。
俺とイッセーは恐怖に震えていた。

「……うぅ、朱乃さん。俺、怖いッス。」
「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ…………。」

部長は気にせず明るく言ってくる。

「大丈夫、怯える必要はないわ。彼女は仲間には優しいから。今度、甘えてみるのも
いいかもしれないわね。あなたたちの事、可愛いって言ってたから。」
「うふふふふふ。いつまで私の雷に耐えられるかしらね?ねぇ化け物さん。まだ死んでは駄目よ?
トドメは私の主なのですから。オホホホホホッ!」

部長、無理です。とてつもなく怖いです。
姫島先輩に甘えてる自分より、姫島先輩に鞭でいたぶられているイメージの方が
しやすいのが更に悲しかった。

それから数分間、姫島先輩の雷攻撃は続いた。
姫島先輩が一段落したのを確認して、部長ははぐれ悪魔に近付く。
完全に戦意喪失しているな………。まぁ分からなくもないけど。
部長はひれ伏す、はぐれ悪魔に向けて手を翳す。

「何か言い残すことはあるかしら?」

部長の質問にはぐれ悪魔は答えない。

「そう、なら消し飛びなさい。」

部長の手に魔力が集まる。だが
俺は、はぐれ悪魔の目に光が宿り、不敵に唇がつり上がるのを見逃さなかった。

「部長ー!!後ろに飛んでください!!!!!!」

俺が叫んだ瞬間、はぐれ悪魔の足元に魔方陣が描かれる。
その魔方陣を中心に俺たちの足場が震動し、ひび割れていく。体勢を崩した
俺たちは直ぐに体勢を立て直そうとするが、はぐれ悪魔は更に別の魔方陣を展開していた。

「出でよ!!全てを見通す、魔の心眼よ!!」

そう叫んだ。その魔方陣から目玉が現れる。空気中を漂うその目玉と目が合った俺の身体が
痺れたように動かなくなる。

「何だ……!!身体が……動かない!?」
「フロータイボール!?みんな、あの目を見ては駄目よ!!」

部長の忠告を聞き、全員が目を反らす。

「アハハハハーー!!!!!!
いい判断だ!!私の使い魔、フロータイボールの『凝視』は目を合わせた者を麻痺させ
自由を奪う!!!!そこの餓鬼みたいにねぇ!!!!!!!」

フロータイボールの『凝視』を受けた俺は身体が動かない。かといって目を合わせずに
フロータイボールを倒すの難しい。

「さぁて、さっきまでの恨み…………。返させてもらおうかァァアァ!!!!!!」

床に落ちた槍を左手で拾い上げ、構える。だが、その槍は降り下ろされる事はなかった。
フロータイボールの『凝視』を真正面で受け止め、平気に動いている者を見て固まってしまったのだ。

「誰が自由を奪われるだって?」

兵藤一誠だった。

「神器発動!!!喰らいやがれ、この目玉お化けがぁ!!!!!!」

イッセーの左腕に装着された赤い籠手、あれがイッセーの神器!!

グシャ!!

グロテスクな音を立てて、イッセーの左腕はフロータイボールを貫通した。
そのお陰か、俺の身体にも自由が戻る。
イッセーは腕を振り、フロータイボールの死体を振り落とす。

「馬鹿な!?魔力も感じられない糞餓鬼にフロータイボールが殺られる筈が……。」
「うるせぇ!!てめぇのせいで皆が危ない目にあったんだ、一発殴らなきゃ気が済まねぇ!!」

イッセーの後ろでは、全員が戦闘態勢に入っている。

はぐれ悪魔は勝ち目がないと思ったのか、廃屋の外へ向かう。

「逃がしては、いけないわ!!祐斗、小猫!!」

部長の指示に従い、はぐれ悪魔を追撃する二人。
はぐれ悪魔が廃屋から一歩踏みでた瞬間だった。

攻撃を加えようとしていた二人の目の前で、はぐれ悪魔が切り刻まれた。

「なっ…!!」

全員が目を見開く、廃屋の出口にはフードを被った小柄な人物が居た。
その人物は日本刀を手にしていて、刃は血に塗れている。あの刀ではぐれ悪魔を
殺したのか?しかもあの刀……妙なプレッシャーを感じる。

「やっぱり、悪魔になってたんだね。こっちの世界にはこないで
欲しかったんだけどな〜。」

皆、キョトンとしているが俺はこの声に聞き覚えがある。耳にタコができる位聞いた 。

「ま、まさかお前………!?」

声を発した俺を、皆が見つめてくる。

「梓乃か!?」

俺は13年間の付き合いの幼馴染みの名を呼んだ。
ゆっくりとフードを外した、その顔を見間違える筈がない。

「…………三日ぶりだね、英志君。1秒も忘れた事なかったよ。」

悪魔の返り血を浴び、月明かりに照らされた古城英志の幼馴染み、
鬼山梓乃はニッコリ微笑んだ。

「なんで、お前がここに?」

梓乃は俺がドーナシークに襲撃された夜以降、俺の家に来ていなかった。少し心配だったが、悪魔の仕事が忙
しく、それどころではなかったのだ。

「古城君、あなたの知り合いかしら?」

怪訝そうに聞いてくる部長。

「はい、俺の幼馴染で……。」

俺が言い終わる前に梓乃が口を挟んできた。

「ちょっと、私の英志君に気安く話しかけないでくれるかな?」

いつものと変わらない声だが、とてつもないプレッシャーを与えてくる。

「おい、梓乃!!部長に何て事言うんだ!!。」
「少し黙っててよ、英志……。私は今、そこの女に言ったんだよ?」

今度は明確な敵意をその声から感じた。メンバー全員が身構える。

「三日前、私の英志が悪魔になってたのには凄いショックだったよ。心の整理がしたくて、英志の家に行けなかったんだよ?折角、今日決心して家に行ったのに英志はいないし、探しに来たらあんな化け物と戦ってる。」

梓乃はひとり言のように、独白する。それは異常な光景だった。

「英志は何もしなくてよかったんだよ?何があっても私が守ってあげるから。なのに、その英志をこんな危ない所に連れ出して……英志はきっと脅迫されてるんだね。なら………」

どんどん梓乃の声から感情が失せていった。そして、身体の芯から凍えるような声で、言い放った。

「私が英志を助けてあげるよ。」

そういった瞬間、梓乃が消えた。

ギンィ!!

部長の目の前で鋼と鋼が激しく打ち合う音が響いた。斬りかかってきた梓乃の刃を木場が受け止めたのだ。
速い!!動いたのが分からなかった!!
木場に押し返された梓乃はすぐに構えをとる。

「やめろ梓乃!!」

俺の制止の声を聞かず、梓乃の身体がまた掻き消える。木場は動きが見えるようで梓乃に肉薄していた。

ギャギィィィィィィィィィィィィ!!!!!

鍔迫り合いで動きを止めた二人に塔城さんが後ろから迫る!!
それを見もせずに避けて、日本刀を横なぎに振るう。木場と塔城さんは飛び退いてかわした。
すかさず、姫島先輩が雷を繰り出す。轟音が鳴り響き、雷は直撃した。
だが、平然と梓乃は立っていた。

間合いをとって睨み合う、梓乃と俺たちオカルト研究会メンバー。
イッセーが叫ぶ。

「おい、エージ!!お前の幼馴染、洒落になんねぇぞ!!なんとかしろ!!」
「彼女………生身で僕のスピードについてきた。強いよ……。」
「私の雷をまともに受けて無傷だなんて。」

みんな驚いているが、一番驚いているのは俺だ。梓乃にこんな事が出来るとは知らなかった。
だが、俺の堪忍袋の緒は切れる寸前だった。

「私の英志は誰にも渡さないんだ……!!そのためなら誰だって殺す!!」

その発言で俺は完璧にキレた。

構えなおし、再び飛び出そうとする二人の前に俺は躍り出た。

「みんな、ここは俺に任せてくれ。」
「気持は分かるけど、今のあなたでは彼女を止めることはできないわ。」

部長の発言に首を振り、俺は目の前の幼馴染を見据える。

「お願いします、部長。俺がけじめをつけなきゃいけないんです。」
「………分かったわ。でも、無茶しては駄目よ。」
「ありがとうございます。」

俺は部長に礼を言い、梓乃の方に歩み寄る。

「なに?あんな悪魔の女となに喋ってたの?」
「梓乃……」
「やっと話せたね英志、もうこんな奴らほっといて家に帰ろっ!!英志はこんなとこにいるべきじゃないよ!!」

梓乃は明るく提案してくるが、俺は低い声で告げた。

「お前……、いい加減にしろよ。」

俺の身体から蒼白いオーラが噴き出した。

その場にいた俺以外の者は驚いた顔をしている。
何せ、さっきまで魔力がほとんど感じられなかった俺が、急に
魔力を纏ったのだから。

「梓乃……俺が怒ってる理由がわかるか?」

一瞬、俺の迫力で梓乃は怯んだが、いつもの調子で答えた。

「私には分からないよ?私は英志の為にやってるんだもの。」
「そうかよ…………。」

一層に密度が濃くなった俺の蒼白い魔力。それに気付かず、梓乃は続ける。

「そうだよ!!私は悪魔に脅されて、転生しちゃった英志を悪魔の手から守る
為に戦ってるんだよ!!」
「……んだ?」
「えっ…?何か言った?」
「いつ俺がお前にそんなこと言ったんだ?」

その一言で梓乃の動きが止まった。

「俺は自分の意思で悪魔になって、自分の意思でここにいる。
助けなんて求めてないんだよ。」
「で、でもっ……。」
「お前は俺の話を無視して、皆に手を出した。それは許せねぇ。」

静かに右手を梓乃の方へ向ける。

「今すぐ、ここから離れろ。言うこと聞かないなら、お前でも攻撃するぞ。」
「な、なんで!?私は英志が心配だから……!!」

ドオオオォォォォ!!

俺の右手から放たれた魔力は、梓乃のすぐ横を通りぬけた。

「次は当てるぞ」
「…………分かったよ」

小さい声で応じた梓乃の顔は、涙に濡れていた。こんな方法でしか、仲間を守れない、
自分に嫌気がさす。罪悪感に胸が締め付けられた。
梓乃は踵を返して去って行く。

気を抜いたら、疲れがどっと出てきた。

「!?エージ!!」

俺はそのまま前のめりに倒れ、意識を失った。

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