小説『堕ちた物真似師』
作者:()

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『ONE PIECE』転生からはや10年。
「月日が経つのは早いな」
俺はでんでん虫を前にそんな事を呟く。
そして呟いた後、ある計画を実行する為に発声練習を開始した。
何故このような行動をとるかというと、今の自分の境遇のせいである。
実は、俺……、『ココヤシ村』に生まれてしまったんだ!
それに気づいた時は余りの衝撃に体が固まってしまい、此方の世界の母親に心配をかけてしまった。
その後、何とか落ち着きを取り戻した俺は、現状を把握すべくメモ用紙を使い、一覧表を作り始めた。
こんな表だ。

『今の俺の状況』

・幼児
・戦闘知識は多少あるが、戦闘経験が浅い。
・海軍や革命軍などの組織との接点は無し。
・漫画の世界だから期待したが、特殊な能力を持たない。
ましてや、S級クラスの財宝『悪魔の実』の能力を手に入れるなど、一番可能性のある裏ルートを探さない限り、不可能に近い。
・最強の武器になるであろう原作知識は、10巻から止まってる。

ここまで書いてみたが、どう考えても魚人共と一戦交えてみて勝機はゼロだと思わざるを得なかった。
次に考えたのは声帯模写だ。
これには色々訳がある。
まず第一に俺は声帯模写が大得意で、前世では世界的な物真似師だったこと。
そしてこの世界でも、この声帯模写の才は前世と変わらなかった事。
このアドバンテージのおかげで俺はある計画を思いついた。
その計画とは……。


この計画を実行する発端となったのは、あるイーストブルー情報誌である。
当時まだ5歳の俺は、朝食をベルメールさんの家でとっていた。何故なら、両親は2年前に海難事故により他界、頼れる親戚もいない俺は、親と関係が良好だったベルメール一家にご厄介になることになったからである。
そして今、朝食を食べているわけだが。

「ちょっとナミ! 私のベーコンとったでしょ! 返しなさいよ!」

「ふふーん、もう全部食べちゃったもんね」

「ナミ! そんな意地汚いことしないの!あんたはもう食べたんだから、ノジコの食べちゃ駄目でしょうが!」

新聞を読んでいたベルメールは、ナミを叱る為に新聞越しにそう言った。

「だってお腹空いたんだもーん!」

……… 。今絶賛口喧嘩をしている三人組を無視して、俺は朝食を食べていた。
暫くして朝食を食べ終えた俺は、ベルメールが途中で読むのを止めた新聞を読み始めた。
以前は5歳児が新聞を読むことにベルメールは驚愕していたが、今では当たり前の事になっている。
俺は黙々と読み進めていくと目を見張る記事が載っていた。以下は記事の記す通りだ。


『海軍本部の巡視船今年х月、イーストブルーに来航が決定』
今月х月下旬、海軍本部大佐シェリング・フォード氏が率いる巡視船二艦が、イーストブルーに来航する事が、х月хх日のグランドタイムズ紙より明らかになった。
氏は、今回海賊達がグランドラインに突入する為の拠点となっている『ローグタウン』(※海賊王ゴールドロジャーの公開処刑地として有名)を視察する事を前提とした、巡回視察を行う予定であると口述した。
またローグタウンの他に、近隣の島にも来航すると述べている。


俺は一字一句漏らさないよう注意深く記事を読み、読み終えた後自然と笑みが溢れていた。
なぜかと問われれば、俺はアーロン襲来まで5年を切ったのに”最低限の事”しかできない事に悔しさを滲ませていた。
だが、その不遇の状況下、一縷の希望を手に入れたのだ。 笑みも溢れる。俺はこのチャンスを絶対に物にしてみせる事を胸に刻んだ。

続く

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