小説『堕ちた物真似師』
作者:()

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これは二年前の出来事。
当時げんさんからあの子の両親が亡くなったと聞いた時は、頭の中が真っ白になってげんさんに支えてもらわないといけない状態だった。
現在ではすっかり立ち直って、子ども達に心配される様な事は無くなった。だけど今でも彼女達の事は忘れた事はない。


……カリンとは親友だったから。


カリンには一人の幼い男の子がいた。
私は出産祝いの時に会って以来、みかん栽培や子育てで忙しかったこともあり一度も会えなかった。
だけど今回、このような悲劇が起きてしまったので、身寄りがない親友の子を、げんさん達が反対するなか私が無理矢理の形で引き取る事にしたのだ。
そしてダレンがこちらに引っ越して来る日。ナミ達は、私が少し前からダレンが此方に引っ越してくるのを聞いていたので、昨日からずっとはしゃいでいる。

…ったく、何度言い聞かせても聞かないんだから。

カリンからはダレンの事を少し聞いていたのだけど、とても物静かで大人しい子だと言っていた。性格はうちのチビ達と正反対。三人とも仲良くやっていけるのかな?

正午が過ぎ、私達が昼食を食べ終えた頃には約束の時間になった。
私が食器を洗っていると、玄関の方から二回ノックの音が聞こえたので、チビ達は目を輝かせて玄関の方に全力疾走していた。
そして玄関の扉を開く音がした方に歩いていくと、黒色のボストンバックを肩に下げた男の子が、チビ達と一緒に此方を見ていた。
ダレンはとても小さな男の子だった。
服装はクリミナルのTシャツ、下は濃紺のジーンズとラフなのだけど、鼻筋は通り、黒髪に灰色の目、駄目押しに末っ子のナミより身長が小さいので、私は思わずダレンを強く抱き締めてしまった。


その日から一週間経った。
私が心配していたナミ達とダレンの仲は杞憂に終わり、次の日にはナミ達が、ダレンにみかんの木の手入れの仕方を教えていた。そして今ではナミ先生が、みかんの収穫の仕方を教えているところである。
それに私の料理もダレンは”美味しい”と言ってくれたので、ひとまず引っ越しは成功したと思っている。








▼▼▼







ダレンは日が経つにつれて我が家に馴染んでいった。
私達と寝食を共にし、みかん農園の手伝いも頭が良いからなのか、上達が早かった。
私はこの一週間ダレンを観察してきたけど、同年代の子ども達より精神年齢が高い事がわかった。なぜなら3歳という幼さなのに、成人した私やげんさん、Dr.ナコーと話があうからだ。
それにダレンは特に、Dr.ナコーと仲が良かったので、農園の手伝いが休みの時は、よく朝から診療所にいってドクターから医術を教えて貰っていた。
また、これは血筋の影響なのか、測量についても勉強していた。血筋と言うのは、親友のカリンは海軍時代、大尉であり測量士だったからだ。

余談なのだけど、ダレンが測量について勉強している側で、ナミが興味深そうにしているのを見た。
……フフッ、将来は二人揃って測量士かな?



今までダレンを観察した事を言ってきた。
だけど観察している中でどうしても不安が拭えなかった。
普通の引っ越しならこんな感情は生まれない。
しかしダレンは大切な肉親を亡くしたんだ。
普通の子どもなら親を亡くせば悲しむだろう。
親がいなくなったことに気が付き、次第に寂しくなって泣き喚くだろう。
しかしダレンは家に来てから、その様なあからさまな感情を少しもださなかった。

……まるでそういう感情を押し殺し、他の事に全力を注ぎ込んで気を紛らわせているかのように。

続く

-2-
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