小説『堕ちた物真似師』
作者:()

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……この状況は想定していたとはいえ、実際体験してみるとヤバイな。俺はカジノから出て予定していた場所に向かっているのだが、この時間帯でも活気がある横丁は静か過ぎ、地元の住人は避難している。
そして若者の集団、情報機関で入手した情報からして、懸賞金1000万ベリーのフロッグ率いる『フロッグ海賊団』にまず間違いない。この海賊団は恐喝や略奪、殺人、人身売買を主とし、活動拠点はローグタウン海域だったはず。しかし、知能的な犯罪は皆無だから、典型的な小物のモーガニアだな。そいつらが俺の半径15m後方からつけてきている。動機は言うまでもなく金と俺自身。……まあ当然だな、一生遊んで暮らせる金と、巨額の金を出せるガキ、誰でも手に入れたくもなるだろうよ。
そして何も仕掛けてこないのは俺の居場所を特定するためだろう。……こちらとしては好都合だが。





                    ―episode―

                 『異端者は排斥されるのが常』

ダレンは横丁からメインストリートに出て、港方向に三つ行くと、左手の横丁に入っていった。
この横丁には多くの事務所が連なっていて、昼間は多くの商人や実業家が往来するが、夕方になると皆が家に帰宅するため、無人の場所と化すのである。そしてダレンはその事務所の中の一つに入っていった。

事務所の中は机が五つ並び、壁際には書類で溢れ返った棚が立ち並んでる。棚の上も同様に書類の山だ。ダレンは部屋の明かりをつけてバスルームの方へ行き、鞄の中の黒い服に着替える。そして夕方準備しておいた仕掛けを作動させると、追跡者に悟られぬよう、場所を移した。









▼▼▼









ダレンが移動してから五分後、ダレンがいた事務所の前には十五人程の海賊達が集まっていた。その中に賞金首であるフロッグの顔もある。髪は黒い短髪で蛙のような顔に、黒い両眼の瞳は、細い横線がある。そして顔の表面には滑りがあり、電灯の光線に当たると、光を発しているかのように見えた。
一味が事務所に入ってみると、中にはダレンの姿が見当たらなかった。フロッグは部下に指示を出して捜索させていると、しばらくして部下の一人が戻ってきて、フロッグに、バスルームに明かりがついていて、そこに子供がカジノで着ていた服があり、中からシャワーの音がすると言ってきた。するとフロッグは、ニヤリと笑みを浮かべ、「時間は腐る程あるんだ、気長に待とうじゃねえかケロ」と、手近にある椅子に座り、葉巻に火を灯した。


しかし、十分、十五分と時間が経過してもダレンは一向に上がってこない。次第に船長はイライラし始め、葉巻を吸う頻度が上がる。だが、ダレンの上がる気配は当然なく、部屋の中は、船長の貧乏ゆすりの音と部下達の囁く声があるだけだった。
しばらくすると、とうとう船長は痺れを切らして、我慢の限界とばかりに、ガバっと椅子から起き上がると、バスルームに矢のように向かった。そして仕切りを勢いよく開けた時、






――それと同時に何かが、”プチン”、と切れる音がした――









▼▼▼









特定の人物を秘密裏に殺害するには、その筋の者なら必ず事故死あるいは自然死に見えるように暗殺を企てるものだ。


――暗殺が成功してもターゲットの死亡はほとんど騒がれることはなく、形式だけの捜査で終わる。偽装事故では例外なく、暗殺者は自然死以外の原因が疑われるような傷や状態を決して残さないようにする。今回俺が計画したのは、爆破を利用しての偽装事故。事故の偽装はガス漏れ、火事、感電、致命的な落下など様々だ。例として自宅内暗殺の場合、たいてい大きな街や大都市で実行される。ターゲットはその性的嗜好を利用した暗殺チームや隊員の世話になっていることもある。そして暗殺チームの隊員一人が、ターゲットの自宅へ一度でも侵入することができれば、いかなる暗殺手段も可能となるのである。。……だが今回のケースは個人で行うのでそういった行為はできない。故に、難易度は上がるが誰からの支援を受けずに暗殺をやり遂げる方法を模索しなければならなくなる。


暗殺が遂行すると、暗殺者は何も存在していなかったかのようにみせるため、死体を除去し、死者の痕跡を一切取り除く作業をする。具体的にどういうことをするのかというと、”死体の損壊と処理”だ。
死体の損壊は、死体の身元をが割り出せないようにするために、指紋、虹彩スキャン(虹彩とは目の色)、歯、人相スキャンなど、記録されている恐れのある身体部位や、刺青のように人物を特定できる身体的部位は、全て取り除くか、損壊させる必要がある。
こうした手がかりをどれでも一つ以上たどれば、当局――この世界では海軍――は死体の身元を特定できるからだ。個人を識別するには、死体を完全に損壊するしかない。その最も一般的な方法が、酸の使用だ。硫酸の濃厚溶液を死体の手や顔にかければ、目などの顔の造作は消えてなくなり、指先は焼き取られ、歯のエナメルは腐食する。またほかの方法では、焼却がある。しかし、これらはそのあと処理という長期間かかる手順を踏まなくてはならないので、手っ取り早く済ませるなら、死体が灰になるように俺みたいに爆破するのがいいだろう――









爆発が起こった所から少し距離が離れている建物の屋上で、スコープを使い現場を眺めているダレン。黒い服により闇に紛れ、くわえ煙草をしている顔には、諦念の表情が刻まれていた。
周りから見るとその光景は、普通と呼ぶにはふさわしくなく、まさに”異端”だ……



”異端”





異端は排斥されるのが常だ。
思想・宗教・文化・社会・経済。
正統的でないものは異端とみなされ、あの歴史の真実を追い求めたオハラのように排斥される。海賊も然りだ。
海賊にも二つの種類があるという。
”宿敵”アーロンのように、町・村・商船などを容赦なく襲い、無慈悲に殺戮・略奪・凌辱・破壊などを働く『モーガニア』。
赤髪のようなモーガニアをターゲットとしている『ピースメイン』。
ピースメインは、モーガニアのように民間人を襲撃はせず、むしろ友好的である。だが、人道を外れないピースメインも、世界からみると異端の存在だ。故に存在が許されず、巨大な抑止力が働く。

また、正統と異端は”善と悪”とも言い換えることができる。
世界の正義を担う海軍と、世界を壊し混沌を生み出す海賊。
世界が忌み嫌い、”鬼”と呼ばれた男、『海賊王ゴールド・ロジャー』、海軍の英雄といわれる、『拳骨のガープ』
だが……。
モーガニアから民を救い平和をもたらすピースメインと、特定の海賊から賄賂を受け取り、代わりに海賊の非道を黙殺する海軍。悪が善になり、善が悪になる。
……矛盾はない。

……なぜなら、善と悪も正統と異端も、時として立場が逆転するものなのだから。




だから俺は決めたんだ。



たとえ俺の行為がこの世界で異端と蔑まれ、その為にこの命が果てようとも、





俺は、俺の計画のために異端を演じ続けようと。

&amp;amp;lt;ローグタウン編完>

つづく







-6-
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