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エリア10、訓練エリア。
ここでは各戦闘員が侵略や戦闘に備えて体力や戦闘技術などを向上させ、生き残るために日々鍛練している。
様々な訓練ルームがあり、射撃場、座学施設、トレーニング場などがある。
「よお、レクシー!!」
その中の一つ、トレーニング場へ足を踏み入れる三人。中で必死にトレーニングしている者が活動を停止して声をかける。
「うわぁ……」
「スゴい熱気……」
辺りは男達が密集してトレーニングしているものだから、汗臭いわ暑いわで、体験のない二人にとって暑苦しくむせる。
「あんたら二人は見たとこ、こんな風景は初めてそうだからある意味いい体験だろ?」
「えっええ……」
二人は苦笑いした。
すると突然、
「いいっっっっ!!!?」
のび太の真天井から何者かが落下、瞬間にのび太に首を掴みナイフを彼の顔にチラチラかざす。
「おめえらが例の地球人だなぁ。許可があればてめえらをこのオレが八つ裂きできたのによ〜〜」
その男はまるで昆虫のような複眼の持ち主で、全体の皮膚は緑色の体は痩せ型。雰囲気には巨大な蟷螂のようだ。
「キャアアアアッ!!」
しずかはとっさに悲鳴をあげる。当ののび太も何がなんだか分からず身体がぶるぶる震えている。
あと刃物を顔にちらつかせているのも恐怖意外の何事でもなかった。
「ユーダぁ、お前リーダーの言葉を忘れたのか!?こいつらに手を出したら反逆罪で即死刑だぞ!」
その言葉にユーダと言う男はのび太を放し、不気味な笑みを浮かべてこう言った。
「冗談だよ冗談っ。けどリーダーが何でこいつらを生かしているのか疑問だったんでな。いつもなら侵入者は即排除だろ」
「それはリーダーにも考えがあったからだ。ともかくのび太達には手を出すなよ?」
「へいへいっ、わぁったよ!」
そう捨て台詞を吐くと、ユーダは三人から去っていった。そんな彼をもの悲しい目で見るレクシー。
「あわわわわわっ……」
「のび太さんっ大丈夫っ!?」
力が抜けてへたりこむのび太に声をかけるしずか。すると、レクシーはのび太に手を差しのべた。
「驚かせて悪かったな。あいつはユーダってんだ」
のび太は彼の手を借りて立ち上がる。しかしレクシーはどこか悲しい雰囲気を漂わせていた。
「あいつは俺達、戦闘員の中でも一番の問題人物なんだ。
殺しに対しての躊躇のなさはリーダーと匹敵するかそれ以上だ。
けどあいつはすぐに仲間を裏切る癖があってな。
今まで数々の侵略で仲間の窮地をどれだけ見捨てたことか……。
リーダーにはまだバレてないんだけどいつかあいつはまじで消されるぜ……」
それを聞いた二人は複雑な気持ちになる。
「俺らアマリーリスは仲間意識が非常に高い。
だからどうしようも得ない時は除いて仲間を見捨てる、裏切る行為は反逆罪で冒せばリーダー自らが罪人を殺すんだ。
オレはその場面を一度だけ見たことがある」
「「…………」」
二人の暗い表情をして沈黙はさらに続く。しかしレクシーはそんな二人を再び笑顔になり、こう励ました。
「お前らは何気にすることがあんだ?
これは俺達のことだ。お前らはただ無事に地球に帰ることだけを考えればいいのさ!!」
彼の表情を見て、少しずつ笑顔に戻っていく。
レクシーは二人に背を向き、明るい声でこう言った。
「次は射撃場だ。どうだのび太、俺と射撃で競わないか?リーダーに勝った腕前を見たいんでな!」
それを聞いたのび太は得意分野である射撃がやれるのが嬉しいのか、心が奮え上がってくる。
「うっうんっ!!」
笑顔で返すのび太にレクシーも満面の笑みを浮かべる。そんな二人をまるで兄弟に見えたのか、しずかもニコッと笑った。
―――そして三人は射撃場に足を踏み入れる。ここでは実弾銃用射撃場とレーザーガンなどのエネルギー銃用射撃場の二つあるが、片付けや破壊した的の回収がある実弾銃用射撃場は面倒な為か、あまり使われない。
のび太達は当然、エネルギー銃用射撃場に移動する。
「ええっと、のび太は子供で試し打ちだから威力が弱いタイプにしないとな……っ」
レクシーはエネルギー銃射場の中心に設置してあるパネルのようなデバイスをカタカタ動かす。すると、
次の瞬間、この場の全照明がライトアップし一気に明るくなった。
「まっ的が全く見えないよぉっ」
「ホントぉ」
一直線に続く的への射程距離は300、いや500メートルはゆうにありそうだ。
するとレクシーは二つの小型銃を持ち、その一つをのび太に投げ渡した。
「ほれ、お前の銃だ。
目の前にレールがあるだろ?あそこに立って射撃するんだ」
二人は各射場に立って的のある方向に目を向ける。しかし、あまりにも遠いのか全く見えない。
「レクシーさん?的が遠すぎて全く分からないんだけど……」
しかしレクシーは何を言っているんだ?と言わんばかりに不思議そうな表情でのび太にこう告げた。
「はあっ?的はまだ出てないぜ」
「えっ?じゃあもうすぐ出てくるの?」
するとレクシーは遥か向こうの左右の壁に指を指してのび太に説明した。
「あそこの発射口から的が飛び交うからそれに狙いをつけて撃ち落とすだけだ。簡単だろ?」
それを聞いて安心するのび太。上を見上げると何やら時間表情された機器が0に向けて数字が動いていた。
「あれが0になったら、開始アラームと共に、的が飛び出す仕組みだ。
時間は1分間だ、終わりもアラームで知らせてくれる。そろそろ始まるから準備しろ」
そう言うと二人をレールを前に立ち、神経を集中する。あの時と同じ雰囲気が辺りに漂い始め、その中でしずかが後ろで手を合わせて二人の安全に願いを込めている。そして……、
甲高いアラームが鳴り響くと同時に二人は一気に所持している銃を構えた。が、
「! ?」
アラームが鳴ったにも関わらず的が全く見えない。
「えっ!?えっ!?」
のび太はわけが分からず、ただあたふたしているだけだ。一方、レクシーの方は、
なんと彼は全く見えないにも関わらず平然と発砲している。発射された何発もの光弾が瞬く速度で遥か先の的場へ飛んでいく。もしかして的はもう発射されているのか……?
終了アラームが鳴り響き、二人は手を下げる。しかしのび太はきょとんとしていた。一体なんだったのか全く理解出来ていないためだった。
「ハハハッ、全く見えてなかったか?あれでも戦闘員の標準レベルだ。まあのび太ぐらいの年代はちとキツかったかな……んっ?」
レクシーは先ほどのデバイスを見て、何かに気づいたのかすぐに駆け寄った。すると彼は徐々に汗が流れはじめ、身体が震えている。
すると彼は二人の方へ向くと、自分の頭を撫でて、苦笑いしながら二人にこう言った。
「わっ……わりぃっ。どうやらこれ自体が故障してて的が発射されてなかったわ……」
「「あららっ……」」
二人はたちまち脱力して肩を落とした。
「誰だ壊したのはっ……、直しとけってんだっ!!」
機器に愚痴をつけて、二人をホイホイ射場から押し出すレクシー。
「まっまあ……次のエリアに行こうぜ!!ははっ……」
「「……」」
しずかはともかく、のび太は不機嫌そうにムスッとしている。
「次のエリアは……そうだっ!しずかのような女が喜ぶところへ連れていってやるよ」
その言葉にしずかは非常に興味津々となる。
「えっ、あたしが喜びそうな所っ?なんか素敵ぃ!」
「ちぇっ……僕は楽しめなかったのに……っ」
三人はそう絡みながら訓練エリアから去っていった。
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エリア8、多目的エリア。
様々な施設があるが、のび太達が向かった先は。
「ここは……なんですか?」
二人はある施設のドアの前にの立たされ、のび太が何なのか質問する。
「とりあえず入ってみな。今にわかるぜ」
そう言うとレクシーは二人の背中をどんと押した。二人は前によろめいた瞬間、ドアのセンサーが反応して開放された。二人がみた施設内は……。
「えっ〜〜っ!?」
「ああ………っ」
見渡し限り植物や花の、緑や鮮やかな色が拡がる自然。さっきまでの無機質の雰囲気とはまるで別世界に入ったかのような違和感というか、衝撃が二人を襲った。
「ここはプラントルームだ。この艦内で唯一、有機物でありふれてるトコだ。
ほれ、奥に行こうぜ」
のび太達は促され、その施設の奥へ入っていく。地球で見たことがある植物類は勿論、見たことのない奇妙な形の植物、花が見渡す限り咲いている。
そしてここの特記する点は、非常に空気が澄んでいることだ。さっきの訓練エリアと比べたら雲泥の差である。
「すごい……けど誰がこれを……」
「のび太さん、あそこに誰かいるわっ」
どんどん奥に進んでいくと広場になっている場所で、一人の男が植物に向かって何かをしている。しかし、近づき姿が明確になるに連れてどこかで見た覚えのあるような身体つきをしている。その人物とは……。
「あの人ってもしかして……っ」
「ラクリーマさんっ!?」
しずかの声に反応し、男が三人に向かって振り向いた。
――ラクリーマであった。二人はすぐに彼の元に駆けつける。
「よぉ、今レクシーに艦内を案内されてんのかい?」
相変わらずの笑みを浮かべてこちらを見てくる。両手にはそれぞれ袋とホースを持っていた。
「ラクリーマ、今何してるの?」
「なにって……水やりだが?」
それを聞いた二人は強烈な違和感を感じたのか、口が開いたまま塞がず、呆然とした表情だった。
「あんたが……これの水やり……もしかして全部……?」
ラクリーマはのび太の発言に理解出来ず、不思議そうな表情をとる。
「だからどうした?」
しばらくするとのび太は腹を手で押さえ、うつむく。体が微妙に震えはじめ……。
「くっくっく……あはははははっ!!」
突然、のび太は大声で笑い出した。辺りに大音量の笑い声がこだましている。
「あっ、あんたみたい人が花の世話っ……くはははっ!」
「のっのび太さん……失礼よっ……ぷっ……」
注意するしずかもなんだかんだで笑いかけている。そんな二人を見たラクリーマは腕組みをして不機嫌そうな顔をしてこう言った。
「……何がそんなにおかしいんだ?」
するとレクシーもやっと彼らの場所に辿り着く。
「リーダー、どうしたんですかい?」
「こいつら、俺が水やりしてるって言ったら急に笑い出したんだが」
レクシーも少し間を置いたのち、その意味に気づいたのかクスクス笑い出した。
「……かもしんねえっ、くっくっく…」
三人がクスクス笑い出し、痺れを切らしたラクリーマはついに左手を彼らへ向けて突きだした。
「……今ここで全員くたばってみるか?どうする?」
「「「あっ……」」」
さすがにやりすぎたのか、三人は一気に冷めてその場で固まった。
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エリア2、住居エリア。
三人は最初のエリアに戻り、休憩広場で食事をとっていた。
「うわぁ、こんなもの初めて食べたけどおいしいな〜」
「ホントよねぇ!」
二人がココの食べ物を美味しそうに食べる姿を見て、レクシーは軽く笑った。
「ウレシいねぇ、気に入ってもらえて」
――ウィンドウから見える景色はワープホール空間から抜け出し、広大な宇宙空間が垣間見れる。沢山の惑星、沢山の小惑星が無限大にちりばめられ、まさに地球人が夢見た世界とも言える。
ここの休憩広場には大勢の人々が行き交う。仲のいい者同士でゲラゲラ笑ったり、外を眺めながら歩く者、デバイスを片手に持ち、仕事をしているのか、はたまた勉強をしているかのような仕草を見せる者、みなそれぞれであり、まるで学校の休み時間における廊下での風景を再現しているかのようであった。
そんな中、のび太はレクシーにあることを聞いた。
「あの植物や花は全部、ラクリーマが育てたんですか?」
しかしレクシーは顔を横に振る。
「あれはな、元々リーダーの恋人が育ててたものなんだよ」
「「えっ?」」
二人は顔を赤くした。彼に恋人がいたなんて知ってしまうと、思わず恥ずかしくなってしまうのだった。
レクシーは腕組みをして、空を見上げながらこう言った。
「その人はランって名前でな。ユノンさんがココに加入する前の副司令官みたいな役柄で、あの人とは反対にとぉにかく気が強くてじゃじゃ馬でリーダーも手を焼いてたなぁ……」
「あのラクリーマさんが?」
レクシーはうなずくとさらに話を続ける。
「けどあの人は超がつくほど花や植物が大好きでな。侵略した惑星で気に入った花や植物を持ち帰って嬉しそうに育ててたよ。
それにあの人らはなんだかんだで相思相愛だった。お前らが座っている場所とかで口づけしてるのを何度も見たぜ!」
「ええっ!?」
「まあっ!!」
二人はさらに顔を赤くし、その場所から少しずつ座りながら離れようとしていた。それを見てレクシーはクスッと笑う。
「その人は今どこにいるんですか?」
その質問にレクシーは手を組み、表情は笑っているもののどこかもの悲しそうな瞳をしていた。
「ランさんは……もうこの世にいないんだ」
この世にいない。死んでいるという意味を持つその言葉に耳を疑い、そして言葉を失うのび太達。
すこし沈黙したあと、レクシーは静かに口を開いた。
「俺たちはこんな仕事をしている以上、命を狙われる立場でもある。
だから他の先進種族と交戦することだって度々あるんだ。
数年前だったかな……確か……」
レクシーはのび太達に分かるように思い出を語り出した。
……………………………………
数年前、メデューサ宇宙第3惑星エデン。
そこに滞在する先進種族の軍事国家が、偶然その惑星に攻め入ろうとしていたアマリーリスの存在を感知し、衝突。
あまりの激戦にさすがのアマリーリスも相手の圧倒的戦力差を前に窮地に追い込まれ、もはや逃げ出す他はなかった。
しかしあちらもこちらの逃亡を許す訳にいかず、追跡を行ってきたのだった。
その時、ラクリーマは自らこちらが所持する戦闘ユニットに爆弾を大量に積み込んで相手の母艦に特攻すると言い出した。
部下達はそれを止めようとしたが、彼は『エクセレクターをここで墜とさせるわけにいかない』と言い張り、振り切った。
しかしそこからが運命だったのか、彼が格納庫に到着した頃にはもう爆弾の積んだユニットはカタパルトから射出されてもうなかった。
ラクリーマは誰があのユニットに乗っているのか突き止めたところ、それは彼の恋人であるランであった。
そう……彼女は自分の命と引き換えにアマリーリスを守ろうとしたのだ。
そして彼女の乗ったユニットは敵の弾幕が降り注ぐ中、大破されながらも敵母艦の正面デッキに突撃し……。
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「あの時、彼女があのような行動を取らなければ俺たちは全員死んでいたな」
「「……」」
なんと言葉をかければいいのだろう。二人はそれしか考えられなかった。
「実はあのあと、リーダーのところへ駆けつけたらな……窓を見ながら何をしていたか分かるか?」
二人は首を横に振る。するとレクシーから信じられない言葉を聞いた。
「あの人はいつも通りに笑っていたのさ。『見事だった、ラン』ってな」
二人は信じられないような表情をとった。大切な恋人が死んだのに笑っていられるなんて……正気の沙汰ではないのかと。
「なっ……なんで好きな人が死んだのに笑っていられるんだよっ!!
おかしいじゃんっ!僕だったら絶対悲しくて泣いちゃうね!」
のび太は立ち上がり、レクシーに訴えた。無理もない、のび太の言うことは一番マトモな答えなのだから。するとレクシーは、
「まあさすがの俺もどうかとは思ったよ。あれでリーダーを軽蔑しそうになったけどその時リーダーの右手を見た瞬間、そんな考えも一瞬で消し飛んだよっ!」
「みっ右手?」
「……?」
レクシーはあの時のことを再現するかのように右手をのび太達の目の前に突きだし、ぎゅっと握りしめた。
「リーダーの右手から……血がポタポタ流れて落ちてたよ。そして止まることなく手が震え続けていたのさ」
「ちっ血が……?」
レクシーはコクっとうなずく。
「ーー力いっぱい握りしめて爪が手のひらに食い込んだんだろう。
あの人も実際は悲しくて泣きたい気持ちでいっぱいだったんだろうけど、悲しむ姿を見せたら俺らの士気が下がると思ったんだろうな。それで少しでも陽気に振舞おうとしたんだと思う。
……まああくまで俺の予想だが、あれを見た瞬間『この人に一生ついていこう、この人のためなら命を捨てる覚悟はある』って決意したね」
「「…………」」
「俺たちは今までにどれだけの仲間やたくさんの人間を犠牲にしたのかもわからんが、そのたびにリーダーは『生物いつか死ぬ。それが早いか遅いか、運が良いか悪いか』と言っていたな。その意味の捉え方は人それぞれだが、俺らからしたら最高の励ましかもな」
二人は心温かいことを聞き、自然と笑顔になっていく。どうやら自分達は彼に対して疑い過ぎてたと思うて何だか恥ずかしくなってくる。
「お前ら何かしんみりしてんだ?」
噂をするとラクリーマが三人の元をやってくる。
「ラクリーマ……っ」
何か縮こまっている二人を見て彼はニヤッと笑う。
「てめえら、何か俺に隠し事をしてるなっ?話しやがれっ!!」
すると、向こうから大声で、
「ラクリーマさんっちょっとこれ見てくださいよぉ!」
数人の部下から笑顔で呼ばれてその場へ走っていく。
ラクリーマは彼らに辿り着くと、満面な笑顔で楽しく話をしている。三人はそんな彼に安心感で満たされて温かい目で見つめている。
するとレクシーは二人はこう聞いた。
「……なあ?二人はこう思わねえか?」
「えっ?何をですか?」
「あの人は実際俺らでも考えないくだらねえことや馬鹿なこと大好きだし、ああやって部下と絡んでるけどあれでも総司令官……つまりここで一番偉いんだぜ?
全く威厳がないだろ?」
「まっ……まぁ……っ」
すると彼は立ち上がるとラクリーマを見つめてニコッと笑った。
「けどな、俺達はそんなリーダーが大好きなんだ。ああ見えてあの人は自分よりも他人のことを常に考える人だからーーー」
のび太はラクリーマを見ては再認識する。この人をやっぱり信用しようと。
「楽しそうだね、ラクリーマ」
「ええっ。なんかあの自然な笑顔を見るとあたしたちもいつのまにか笑いたくなるわっ」
そんな微笑ましい一時を送っていた瞬間、
「ラクリーマっ!!」
突然、馬鹿でかい大声が休憩広場に響き渡る。
その声の主はなんとあのユノンであった。
しかし、いつもの冷たい印象とは打ってかわって非常に怒りに満ちた表情をしている。
しかも両手には巨大なライフルと思わしき物騒な兵器を抱え持っている。
それを見た全員がその場でドン引きし、さらにラクリーマもびっくりしてその場から全速力で逃亡した。
「やべぇっ!!そういやぁあいつから逃げてたんだっ!!」
逃げる彼を彼女も全速力で追いかける。
「あんたまたあたしの部屋に忍びこんで下着を漁ったでしょーーーっっ!!
しかも数枚なくなっているけどどこにやったのよっ!!?」
その破廉恥な理由にのび太としずか以外の全員がまたかと呆れて果てている。のび太達も情けなさすぎて彼に対しての評価が著しく下がるのだった。
「絶対コロスっ!!」
するとユノンは膝撃ちの態勢を取り、まるで狙撃手のようにライフルを瞬時に、ラクリーマに狙いを定める。
振り返ったラクリーマはそれを見て、さらに慌て出した。
「ユノン!!ホント悪かったからやめてくれえ〜〜っ!!」
しかしそんな謝罪で許すような彼女ではなかった。そして、
彼女はラクリーマに向けて発砲、野球ボールほどの大型弾頭がラクリーマめがけて駆け抜けていき、
「のわあああああーーーっっ!!」
弾頭がラクリーマに直撃し、大爆発。爆風と共に彼の断末魔が辺りに響き渡った。
「…………」
ーーこのあとユノンは丸焦げとなってノビている彼をズリズリ引きずり、去っていった……。
自業自得と云うべきか、レクシーに言われた教訓をこの目で見たのび太達はユノンに恐怖を覚えたのだった。
……………………………………
エクセレクター艦内の案内が終わり、それぞれ部屋へ戻る。
のび太はベッドに寝転び、天井を見ていた。
歩き疲れて眠たいのは山々なのだが、どうしても気になっていることがあった。
それは、
(ドラえもん、ジャイアン、スネ夫……僕達のことを心配してるのかなぁ……っ)
やはりドラえもん達のことが気になって眠れない。
今何をしているのか、心配してくれているのか、ただそれだけを彼は思い続けていた。