小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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前方と後方には少ししか進めない状況でどっちに転んでも絶望的。もはや覚悟するしかないのか……。

一方、カーマインは中央デッキに戻り、オペレーターとモニタリングしていた。

「エリア5行き通路に謎の小型艦と地球人を確認、そのあとまた艦に乗り込んで床に沈んでいきました……。これは一体……」

やはり三人は探知されていた。

「各員に次ぐ、エリア5通路からその周辺に集合し待機、発見した場合すぐに捕獲せよ。
なお、エミリアの話によると彼らには何やら未来から来たロボットがその時代の道具を所持、使用している模様。
決して油断するな!」
艦内に命令を放送する。

「私もそこへ出向てあの子達には直接説教を……。オペレーターは引き続き捜索を続行し、情報を送るように」

「了解!」

そう言うと彼はまた中央デッキから去っていった。



その時、ドラえもん達は床下の艦内で話し合っていた。


「だから僕らはあの場所で静かにしとくべきだったんだよ。記憶を消されても助かるならそれでよかったんじゃないか!!」

「うるせぇ、もうここまできたんならしょうがないだろうが!!」

二人は言い争っているなか、ドラえもんは考えた末、こう練り出した。

「こうなったら最後の賭けだ。わざと発見されて捕獲されたら多分、提督と会うだろうから、その時に説得するしかもうチャンスはないと思う」

「……俺もドラえもんに賛成だぜ。スネ夫は?」

「…………」

スネ夫は黙り込んでしまう。元々あまり乗り気じゃなかった彼だ。
賛同しにくいのは無理もない。
するとジャイアンはスネ夫を見つめて右肩に手を置いてこう言った。

「考えたら俺が無理やりお前を誘ったんだからな、それは謝る。
けどな、お前だってのび太達を助けるためやエミリアさんやミルフィの力になるために嫌々ながらもここまでついてきたんだろう?男なら潔く決めてくれ。俺だって怖い、お前一人だけじゃないんだからな」

「ジャイアン……」

やたらカッコいい台詞でスネ夫を説得する。
その言葉に感化されたのか、数秒間間を置いた後、スネ夫は何回も頷く。

「わかったよ。僕も協力するよ!!」

やっとスネ夫もその気になり、三人の心は一つになった。

「うっし!ドラえもん、上に上がろうぜ!!」

「うん!!」

ドラえもんは浮上ボタンを押し、艦は上に浮かび上がる。

しかしその瞬間、そこにはたくさんの兵士が手持ちの銃を構えて周りに待ち構えていた。

「抵抗しなければ何もしないからすぐに出てきなさい!」

兵士の警告を前に三人はのそのそ中から出てくる。
兵士達はすぐに三人の体を調べあげる。その間、やはりドラえもん達は恐怖で震えていた。

あのジャイアンも子供なのだから怖いのは当たり前だ。

すると三人の前にカーマインが駆けつけてくる。しかし彼の表情は苦渋だった。

「お前たち……なぜ脱走ということを考えた?答えなさい……っ!」

彼は並みならぬ威圧を三人はかけてくるのであった。

するとジャイアンは突然、頭を下げて大きな声で彼にこう言った。

「おっお願いがあります。どうか俺たちをそのアマリーリスとか言う組織にいる友達を救うために協力させて下さい!!」

(!!?)

その場にいた兵士全員が耳を疑い、ざわめき始めた。

さらにあとに続いてスネ夫、ドラえもんも頭を下げる。
「お願いです!!絶対に貴方がたの役に立てるように必死に頑張りますから!!」

「お願いします!!」

しかしカーマインはそれを無表情で首を横に振った。

「……ダメだ。お前たちはなんとかなるだろうと思っているのか?
遊びじゃない、生死に関わることだ。あまりにも危険すぎる」

しかし三人は引き下がろうとしない。なぜならもう三人の決意は固かったからだ。

「どうかお願いします!!友達を助けたいだけじゃなくてエミリアさんの辛い思いから救ってあげたくて脱走したんです!!」

「!?」
その言葉にカーマインは無表情から一転して焦りの表情へ変わった。

「お前たち……もしかして彼女の過去を知っているのか……?」

「……」

すると、

「ドラちゃん!!スネ夫くん!!タケシ君!!」

なんとミルフィもここに急いで駆けつけてきた。走ってきたのかなり息を切らしている。

「ミルフィちゃん!やっぱり僕ら、エミリアさんの助けになるよっ!」

「そうだぜっ!ミルフィが全て話してくれたおかげでこっちもやる気が出てきた、ありがとな!」

その発言を耳にしたカーマインはミルフィにグッと睨み付ける。

「ミルフィっ!お前まさかこの子達にエミリアのことを!?」

カーマインはミルフィに訊ねるとシュンとなって顔を下げる。

「申し訳ありません……。どうせ記憶を消されると思ってつい……しかしまさか脱走するとは……!?」

「ついじゃない!!彼女の事情をどうしてあっさりと言ったんだ!?この馬鹿者っ!!」

「ぴいっ!!」

ひどくしかりつけ、完全にミルフィはビビってしまっている。
そして彼はドラえもん達の方を見て、こう言いはなった。

「知ってしまった以上はもうしょうがない。だかなエミリアはもうこの作戦に参加させないと決めたんだ。
第一彼女はもう……」

しかし突然、

「お待ちください提督!!」

「なっ!?」

全員が振り返るとそこにはあのエミリアがここに歩いてきていた。その時の彼女は思い詰めた表情をしていた。

「エミリアっ!!自室謹慎と言ったハズだ!!
破ってさらに罪を重くするつもりか!?」

しかし彼女はその言葉を無視して彼にこう言った。

「……この子達と話をさせて下さい。あたし自ら言い聞かせます!」

「………っ!」

そのまま彼女は三人の方へ向かうと彼らを見つめた。しかし、徐々に眉間にシワを寄せ始める。

「えっ……エミリアさん……」

「ああっ……っ」

すると

(パン!パン!パン!)

「「「あてっ!」」」

なんと彼女は三人の頭を軽く叩いた。

「バカっ!!脱走なんかして何かあったらどうするのよっ!?場所と立場をわきまえなさい!!」

彼女は三人をひどく叱った。
しかしそれで反省するような彼らではなかった。

「俺たちはエミリアさんの助けになりたくて提督に頼み込んだんだ!なあ二人とも!!」

「「うんっ!!」」

その力強い声からは意志が強いことがはっきりわかる。

「あっあたしの……?」

驚く彼女にミルフィがこう伝える。

「実は……留置場でエミリアの過去を……」

「なっ……なんですって…っ!?じゃあ……っ」

すると今度はドラえもんが彼女にこう言う。

「うん。僕たちはミルフィちゃんから全てを聞いてあなたの助けになれたらなと思ってつい……。
僕たちそういう人を見かけたら助けずにいられないタチだから……」

「……」

彼女の瞳から一筋の雫が流れる。

……それは涙だ。

彼女は涙を拭くと、提督の向かってお辞儀をした。

「謹慎中でありながら、無断に出てきてまことに申し訳ありません。
ですがお願いがあります、彼らをここで許してもらえないでしょうか?
この通り悪気があって行ったのではありません。どうかお願いします」


「エミリアさん!?僕達が勝手に脱走したのにあなたが謝る必要ないよっ!」
「そうだよぉ!僕達はただ協力できればいいなと思って言いにきたのに!」

彼らはエミリアを弁護するが、彼女はニコッと笑って顔を横に振った。

「ありがとう。私のためにここまで考えてくれるなんて……その気持ちだけで充分嬉しいわ。
けど私はもう違反した以上、もうどうすることもできないのよ。本当にごめんなさい」

「エミリアさん……っ」

三人はもちろん、周りにいる全員が言葉を失った。
三人のその強い意志と優しさはここにいる兵士達に強く突き刺さっていた。
それはカーマインにさえ同じだ。
しかし違犯は違犯、それはどうあれ変えることはできない運命(さだめ)であったのだから。

するとカーマインはずれた帽子をちゃんと直すと彼女の肩に手を置いた。

「……落ち込んでる暇はない。お前には今作戦で頑張ってもらわないといけないからな!」

「えっ!?」

その言葉に全員が耳を疑った。すると彼は彼女に背を向けた後、こう言った。

「お前に特別任務を与える。その地球人の子供達と協力して今作戦時、アマリーリスにいると思われる彼らの友達を救出、保護する任務を附与する。もちろん、パートナーのミルフィもだ!」


それを聞いたエミリアとミルフィ、三人は顔を輝かせて彼にこう聞いた。

「そっ……それじゃあ……あたしは……!?」

カーマインはエミリアの方を向いて普段と同じ、優しい顔で返す。

「この子達はお前に全てを託す。君達もエミリア大尉の指示をちゃんと聞くんだぞ?わかったな!」

そう言うと彼はその場から去っていった。

それから少し沈黙した後……

(やったああああっ!!)
(エミリアさんっよかったなぁ!!)

その場にいた兵士が一気に大歓声を上げた。
そしてエミリアとミルフィ、そしてドラえもん達三人はあまりの吉報に体を震わせていた。

「信じられない……まさか……こんな……」

ミルフィはすぐにエミリアへ飛び込んだ。

「エミリアよかったヨぉ!!提督は許してくれたんだぁ!!」

ミルフィは嬉し涙を流して顔を擦り付ける。

「ミルフィ……」

彼女も涙を流して二人で喜びを分かち合う。

一方、三人は安心したのか一気に体が崩れその場に座り込んだ。
「よっよかったぁ……」

「ホントに一時はどうなるかと思ったよ……」

「けど俺たちが必死に頼みこんだおかげだな!!」

そう言っている三人に元にエミリアとミルフィが笑顔で手を差し伸べた。

「あなた達地球人は本当に不思議ね。本当に感謝してるわ。ありがとう!」

「私たちより地球人の方が数段たくましいんじゃないかしらぁ♪」

二人の感謝と誉め言葉にデレデレになるドラえもん達。

「いやぁ……」

「えへへっ……」

そしてエミリアは張り切って彼らにこう言う。

「提督から指示を受けた通り、作戦時、あなた達はあたしの指示に従って行動すること、決して自分勝手な行動はしないこと。わかったわね?」

「あとここではアタシはともかくここの人たちの言うことは絶対に従うことヨ。軍隊なんだからネ?」

凛々しい口調で言われ、ドラえもん達もビシッとする。

「「「はっ、はいっ!!」」」
それを見た彼女はクスッと笑った。

かくして三人の純粋で懸命な思いがここの雰囲気をグンと変えるという偉業を達成したのだった。


一方、中央デッキでは。

「ええっ!!エミリア大尉を!?」

異例の措置にデッキ内の部下達は驚きの声をあげる。

「ああっ。あの子達の行動や姿を見てると昔の私を思い出してな。
あの頃はただひたすらに正義感溢れていたな……。
今は立場上そんなことも忘れて法律だの規則だのを気にするようになっていたようだ」

彼の表情は非常に清々しかった。

「しかし違犯は……」

「実際あれは本隊に伝える気はないよ。
あの叱咤はエミリアを反省させる意味で言ったのだからな。実際に私もあの法には少し無茶苦茶な部分を感じるしな」

それを聞いた部下達は脱力しため息をついた。

「なんだ……心配しすぎて損した。あれは嘘だったのかぁ……」

「……ゴホン……」
少し皮肉の混じった小声が聞こえ、咳き込むカーマイン。しかしすぐに真面目な表情へ変える。

「問題はここからだ。あのアマリーリスがこちらに向かっているということに注目しなければならん……」

「そうですね。作戦会議はいつになさいますか?」

「……今から8時間後だ。
そうだ、数日間だけあの子達の部屋を手配してくれ。彼らはこれからエミリアと共に行動させる」

「了解」

……………………………………
あのあと三人は提督からここの規動や行動などを全て聞かされた後、各部屋へ案内された。

エミリアは作戦会議に出向いている間、彼らは疲れたのか部屋のベッドで寝ていたのだった。
ジャイアンは完全に爆睡、スネ夫は地球にいる母親に思いを馳せ、ドラえもんは……。

「のび太君、しずかちゃん……大丈夫かなぁ……?」

やはりドラえもんは二人が心配で眠れなかった。ちゃんと生きてるのだろうか?生きているにしても酷い目に遭っていないだろうか?
ただ不安が募るばかりであった。

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