小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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うす暗い留置所の中、ドラえもん、ジャイアン、そしてスネ夫の三人は悩んでいた。今の自分たちにとって、どうするべきなのかを。

「ドラえもん、やっぱりカーマイン提督にあって俺達も参加できるように頼んでみようぜ!ミルフィの話を聞いて黙っていられるかっ!?」

ドラえもんは腕を組んで悩んでいる。

「う〜ん……と言ってもねえ。さっきも言ったけど、抜け出して万が一見つかったりでもしたらそれこそ……」

「そうだよそうだよ!!無事に帰れるんならここで静かにしといたほうがいいんだよ!!のび太達だってきっとここの人達が助けてくれるよぉ!」

ドラえもんに賛同するスネ夫。確かにその方が安全かつ正論で現実主義者の彼らしい発言だ。

「スネ夫、お前裏切るつもりか!
いつもなら嫌がるお前がついてきたのも俺達と同じ考えだったからだろ?

ここまで来たからには今さら後には引けないぜっ!」

するとジャイアンはその曇りなき眼で二人を見て、こう言った。

「……たとえ一人でも行ってくる。
のび太達のこともあるけどエミリアさんの助けになりたい。
俺は……そういう困っている人を見たら助けてやらないと気がすまないからな

ドラえもん、ここから抜け出す道具をだしてくれ!」

いつもは乱暴な少年だが、こういう事態になったら無謀だけど、直情的で人情味溢れる彼の良い性格面が顕れるのはたいしたものだ。

すると、

「……わかった。けどジャイアンだけじゃ危険だ、僕も行く!!」

「「ドラえもん!?」」

なんとさっきまで迷っていた彼自身がジャイアンに『協力する』と宣言した。

「実は僕もミルフィちゃんの話を聞いてのび太君二人はモチロン、エミリアさんの辛い思いから救ってあげたくなっちゃった。
それにこっちはひみつ道具があるんだし何かあったらこれを使おう!」

それを聞いたジャイアンは大喜びし、ドラえもんの手を握った。

「おお〜っ心の友よ〜!」

「えへへっ、それにもし捕まっても一人より二人の方が気は楽だろ?」
「そうだな。で、スネ夫は?」

二人はスネ夫の方を見つめる。彼はキョロキョロ目を動かし、迷い抜いた末、

「わっ、わかったよっ、いけばいいんでしょ!?」

一人になるのが怖かったのか、仕方なくもドラえもん達と行動することを決めたようだ。

「よっしゃあ、なら決まりだな!!」



ーーこうして三人は力を合わせてここから抜け出しカーマインに会って説得するための作戦を考えはじめる。

ドラえもんはポケットを探りはじめる。

「『モーテン星』とか『石ころ帽子』は今ドラミに預けてあるから使えないけどあれなら……っ」
ポケットの中から取り出したのは何と、如何にもな形をした巨大な潜水艦だった。

「『潜地艦』!!、これに乗り込んで下から進もう」

「せっ潜水艦じゃないの…?」
「『地中に潜る』から潜地艦なの。そんなことより早く乗り込んでっ!」

……あまりパッとしないが、とりあえず艦の中に乗り込む三人。
考えたらこの巨大な宇宙艦の中でまた小さな艦の中に入るのはおかしな話だ。

しかしそんなことを思っている暇などない、早く脱け出さないといつ監視兵がここに来るかはわからない。

「じゃあ、行くよ。ちなみにこれはゼンマイ式駆動だから500mくらい進んだら地上に上がってまたネジを巻かないとダメだから二人とも、その時は協力をお願いね!」

「「はあっ?」」

二人は唖然する。いちいちそんな面倒臭いことをしないとダメなのかと思うのだった。

「もしネジを巻いてる時に見つかったらどうするだよ!?」

「動かさなければネジは切れないんだから有効に動かせばいいんだよ。この双眼鏡から見れば地上を見れるし……さぁカーマイン提督のいた場所まで戻ろう!」」

「……そんなんで上手くいくかなぁ……?」

不安に思う二人をよそに、ドラえもんはボタンを押すと、潜地艦はまるで海の中へ潜るかのように地面へ沈んでいき、そしてその場から姿を消した。

「よし出発だ。幸いここから中央デッキまであまり遠くなさそうだから、時間がかかるけど急ごう!」

床下の謎の空間内では潜地艦が動き出し、留置場から脱出した。
果たしてこの三人は無事に彼の場所までたどりつけるであろうか……。

……………………………………
一方、エミリアはやはり過去のことを忘れられないのか、彼女は何も言わず、ただ涙を流し続けている。

そんなエミリアを黙ってみつめるカーマインはついに口を開いた。

「やはりまだ立ち直りきれてなかったんだな……」

「……」
彼はため息をつき、腕組みをする。それはそうだ。結婚相手を亡くし、さらに故郷まで滅ぼされた記憶は彼女の心に深い傷として残るものだ。
しかも、それらが悪の組織『アマリーリス』の欲望の犠牲になったのだから奴らへの憎悪は計り知れない。

「……エミリア、なぜ私がお前を今作戦から外すと言ったか分かるか?」

「………」

彼女は顔を横に振ると、彼は持っていた護身用の拳銃を前のテーブルにそっと置いた。

「仮にだ。私がそのアマリーリスの組織員だとしよう。
目の前に仇がいる、お前の手の届く場所に銃が置いてある、お前ならどうする?」

「えっ……?」

「発砲はもってのほかだが持つのは自由だ。持ちたかったら持てばいい、銃口をこちらへ向けたければ向ければいい」

「あっ……あたしはっ……」
すると彼女は銃へ手を伸ばす。震える手で少しずつ近づいていく。
ついに銃のグリップを掴み、そして彼女はさらにぶるぶる震えながらもカーマインの方へ銃口向け始めた。

「これだ、お前を作戦から外す理由は」

瞬時に彼女から銃を取り上げて元に場所に戻す。

「どうゆう……ことですか……?」

「お前は普段は冷静なのだが、時に私情に駆られて独断専行的行動が見られる。
あの子達をここに連れてきたのはまさにそれではないのか?」

「はっ……!」

確かに一度はあの三人の同行を拒否したものの、彼らの懸命な願いに心が揺れて結局は連れてきてしまった。
思い直せば、あの時はアマリーリスに彼らの友達がいることを知って、つい私情も絡んでしまったのかもしれなかった。


「兵士、ましてやお前のような士官が勝手に行動するとどうなる?
部下はお前についてくると思うか?」

「いっ、いいえ……」

「しかもな、あの子達を巻き込んで何かあったらどうするつもりだったのだ?

その不思議な道具を持ち、協力しに来たと言われても保護対象の地球人でしかも、か弱い子供達とロボットだぞ」

色々指摘されて何も言い返せないエミリア。
さすがに言い過ぎたのか彼は口を出すを止め、立ち上がると彼女が座っているソファーの横に座る。
「……最後にこの質問だけ答えてほしい。お前はもし奴らに出くわしたら敵討ちをしたいと思うか?」

エミリアは彼の方を向いてコクッと頷く。
しかしこのあと彼から出た発言は思わぬ言葉だった。

「……そうか。なら本当にこの作戦に出させるわけにはいかなくなったな」


エミリアは理由も分かるはずもなく、彼の瞳を見つめる。

「エミリア、『復讐するは我にあり』って言葉を知っているか?」

「……?」

………復讐するは我にあり………
新約聖書に登場する言葉で『悪を報いるは神であり、人間自らの手で報いてはならない』という意味である。それを法律的に今の置かれた状況で説明すると『アマリーリスは銀河連邦の法律で裁きを受けるべきで、復讐と言う名でエミリア自身が直接手を下してはいけない』という意味になる。

「敵討ちなどと自ら手を汚すような個人的なことは間違っても考えてはいけない。
あくまで我々は軍人であり警察だ。
アマリーリスという組織を組んで侵略や虐殺などの悪の道へ突き進むのを止めて、彼らを正しい道へ導くのが銀河連邦の本来の在り方だと私はそう思う」

彼の考えは最もだと思う。が疑問を抱く彼女は口を開く。

「……奴らには更正するという考えがあるんでしょうか?
私はそう思えませんが?」

「なら時間をかける。時間をかけてかけて少しでも変われるようにこちらが努力すればいい。人間の可能性を信じることだ」
『罪を憎んで人を憎まず』を信念としている彼らしい考えだ。

「ですが……あたしの気持ちをどこにぶつけたら……っ」


彼女は忘れようとしていたアマリーリスのことを思い出してあの惨劇の記憶が完全に甦ってしまっている。
エミリアの一番の弱点はここだ。

元々彼女は感情の起伏が激しく感受性の強い、いわゆるセンチメンタルな性格である。
気になることがあると頭に残りやすく考え込んでしまい、それが元で熱が入りやすくなかなか冷めず、しかし落ち込むときは一気に落ち込むという不安定な精神の持ち主で、これは軍人という立場から見たら非常に危険な性質なのである。
しかも数年経ってるとはいえ、あの事件で心に深い傷を負った彼女にさらに拍車がかかり、アマリーリスへの憎しみは倍増していると思われる。
よって彼らを目にしたら、感情が高ぶり彼らの命を平然と奪いかねない。

そうなればもう彼女は銀河連邦としての誇りやモラルを捨てることとなり、最悪の場合『人殺し』のレッテルを貼られることとなる。
エミリアの事情を一番知る彼からしてみれば彼女にはそんなものを一生背負ってこれ以上惨めにさせたくない。

エミリアを作戦から外す本当の理由はそれである。

「気持ちは分かるが奴らがどんなに悪であろうと命は命だ、殺すことは私が許さん。ただ奴らはこちらに向かってきているのは幸いだ。私達が必ず奴らを逮捕するから安心しなさい」

するとエミリアはうつむいた状態で彼にこう聞いた。

「あの子たちは?」

「記憶操作でここの事や私達のことなどの記憶を全て消して、無事に地球へ帰す。
彼らのその友達もまだ生きてるのであれば必ず保護して地球へ送り帰すつもりだ」

「……ありがとうございます。あたしが軽卒なばかりにこんなことになってしまって……誠に申し訳ありませんでした」

「……」

深々と謝礼する彼女の姿を哀しげ目に見つめる。
本当は彼女に言いたくないが、(規律)に違反した以上は上官直々として言わざるをえなかった。

(ビィ―っ!!ビィ―ィ!!)

「「!?」」

突然、艦内に警報が響きわたる。
カーマインはすぐに自分の持っていた通信デバイスを開くと、その場で部下の映像が浮かびあがった。

「何事か!?」

「提督!!留置場へ入れられていたはずの地球人の子供達とロボットが突然姿を消しました。脱走です!」

「何ぃっ!?全エリア区域内を検索、彼らの居場所を逆探知し、通路を封鎖しろ!」

彼はデバイスを閉じると、すぐにエミリアの自室から出ていこうとするが、

「てっ……提督……っ!!」

エミリアは彼を呼び止め、震えるような声でこう言った。

「……同行させてください。こんなことになったのも全て私の責任です。なので私自ら出向いてあの子達を……」

彼女の必死な願いにも提督は『それを否定するかのように』首を横に振る。

「だめだ。お前も行って事を大きくするんじゃない。
それにお前は今は自室謹慎中の身だ。これ以上違反して罪を重くするんじゃない……ここに残りなさい」

「……」
そう言うと彼は部屋から出ていった。
しかし彼女はそれで治まるような人物ではなかった。
「やっぱりあたしが行かなきゃっ……」

彼女なりの罪滅ぼしと考えたのだろう、今のエミリアの頭の中にはそれしかなかった。

そして彼女もまた自室から彼らを探しに出ていってしまった。
……………………………………
一方、ドラえもん達三人は床下から中央デッキに向けて進んでいた。
しかし双眼鏡でしか確認出来ないためか、上では何が起きているのか分からなかった。

しかも、周りを見渡しても誰もいないので不思議に感じていた。

「おかしい……急に人がいなくなったけど……」

「一回、地上へ上がってみようぜ!」

ドラえもんは正面の赤いボタンを押すと、艦は浮上し始める。
上がるとどうやら通路のようだ。
三人は外に出て周りを確認すると、前にはさっきまでなかったはずの分厚い金属壁が先の通路を塞いでいる。

後ろを見ても同じく金属壁で塞がれている。

「どうなってんのこりゃあ?」

「まるで閉じ込められたみたいだな」


『閉じ込められた』というジャイアンの言葉にドラえもんはあることに気づいた。

「まっ…まさか……ヤバいっ、早く乗り込め!」

彼は急いで中に入るように促し、二人をすぐに潜地艦へ乗り込んだ。

「ドラえもんどうしたんだ!?」

ドラえもんはすぐにすぐ横の青いボタンを押し、沈ませる。

「僕らの脱走がバレたんだ。だから通路を塞いで僕らを行き道をなくしたんだと思う」

「なにっ、もうバレたのか!?」

「これでもしさっきの僕達が浮上していた時に探知されてたら完全に僕らの負けだ!!」

「ええっ!?どうして!?」
スネ夫が聞くと彼の額から汗が流れ出た。

「探知されてたらあの人達が駆け付けてその周辺を監視されるかもしれない。
そうなったら浮き上がったところを発見されてしまう。しかも……」

「「しかも?」」

するとドラえもんは前の操作盤にあるメーターを指す。たぶん燃料に位置するネジの残量を表したものだろう。
それを見ると、もう針が『E』の部分に近づいていた。

「見ての通りもうネジがない。少し進んでもまたゼンマイを巻きに上がらなければいけない。けどその時にもう待ち構えてかもしれないし、されてなくてもその間に探知される可能性は非常に高い!」
「「…………」」


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