小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

あれから一時間後、気絶者も復活し、各人休憩を与えられて部屋へ戻っていった。

しかし、メディカルルームではユノンとサイサリスがあまり思わしくない表情でとある映像を見ていた。

その横でラクリーマがベッドで静かに寝ている。
「あんまりいい状態じゃねえな……っ」

「……」

その映像はなにやら人体図を映し出している。地球人と酷似している骨格、筋肉部位、内臓に位置する場所に赤、黄色に点滅している場所が多数確認されている。

「左肋骨数ヵ所、右胸骨数ヵ所……にヒビ。右上腕二頭筋、三角筋が炎症、打撲傷、銃創、切創……っよくこんな状態でまあ……」

「…………」

「とりあえず治療したが……さすがにここまでくると完治できねえからしばらくは絶対安静だな。これ以上無理するとただじゃすまねえぜ」

「……バカよ、ラクリーマ。自分の体を大事にしないから……っ。
リーダーとしての自覚があるのかしら……っ?」

ユノンは彼を冷めた目で見つめ、ため息をつく。

「だいたい……なんなのあの訓練……?。
彼らに聞いたら自分を殺しにこいやらリーダーの席を譲るやら、身勝手もいいとこだわ。
一体何を考えてるのやら……っ?」

「……これもあいつのせいかもな」

「あいつ?」

「ユノンちゃんは知らねえんだっけ。エルネスっていうアマリーリスの前身、『宇宙海賊』のキャプテンだった奴だよ」

「宇宙海賊……初耳ね?」

「そいつはあたしと同じで科学者でな、ラクリーマの義手『ブラティストーム』やこのエクセレクターの設計、開発主任で、あたしとは別ベクトルで超天才だ」


ブラティストームはともかくこの巨大宇宙船エクセレクターを開発したなんて……。
ユノンはこう考えた、“よほどの天才なんだろう”と。

「性格はラクリーマと瓜二つだ。つかこいつがそのエルネスから影響を受けてる。
なんせ生まれは違えど無二の親友……兄弟みたいな関係だったからなぁ」

親友……と言われても彼女は全くピンとこない。自分にはそんな親友はおろか友達などいなかったせいなのかもしれない……と思うのであった。

「私とそいつはここからだと……約40万光年離れたマッドウイングっていう星雲内にある第1惑星『ラグラ』っていう惑星出身なんだがな……。

実はその近くの無人第2惑星『エリゴル』にはニュープラトンの鉱脈があって、それを採取し、初めてNPエネルギーが抽出した惑星にして、それを利用し『神の軍団』などとほざいてたが確かに強大な軍事国家だった」


ニュープラトン……まさか、そんな所にあったなんて……。
まあ、このエクセレクターもNPエネルギーを動力とし、こんな超兵器ばかりを搭載した巨大宇宙船を建造できる技術を持つのは全宇宙を探しても数えるほどしかいない。
そう考えると無理にでも納得せらざるえなかった。


「わたし達はその『神の軍団』の軍事開発機関で働いていた。あたしは主に火力などの攻撃面を重視した兵器開発、エルネスは汎用性重視のデバイスや兵器開発担当だったんだが、ある事情であいつが組織を結成して反乱を起こしてな。
その際エクセレクターを強奪し、その時にあたしと手ぇ組んだってワケよ」

「反乱……強奪……ですか?」

なかなか興味深い話だ。彼女もその話に食いついたのか、目をパッチリ輝かせている。

「聞きたいのか?」

「まあちょっとは……っ」

「副司令官だしな、知らないワケにはいかねえし教えてやるよ。」

サイサリスは彼女の方へ向いた。

「エルネスはな、実は技術開発の他に様々な人体実験も担当していたんだよ」

「人体……実験……っ?」

「あたしはあまり知らないんだがな、毎日のように被験者達は悲鳴をあげてたそうだ。
ーーその被験者達てのは死刑を宣告された極悪人共でな。

だがあいつの性格だ、その悲惨さ、凄惨さ、その非人道的行為にマジギレしたんだ。
『どんなに極悪人を使うとしても、ここまでやるなんてあまりにも酷すぎる』ってな」

「…………っ!?」

ユノンはその壮絶な事実に唖然とする。

「まあそれであたしとエルネスは実験体になろうとしていた奴らと手を組んで反旗を翻したわけだ。

元々そこのやり方は気に食わないって言ってたからな。
完成したばかりのエクセレクターを強奪した後、すぐに宇宙圏に飛び出し、リバエス砲を『神の軍団』の本拠地に撃ち込んで惑星ラグラごと消滅させたんだ」

「惑星が消滅したって……リバエス砲は最大出力でも惑星を半壊する程度ですよ……なんでまた……?」

「さあな……。そこまでは調べきれなかったから何とも言えん。
まあその後、この艦初めてのワープを実行して逃亡。それからあたしらは銀河連邦から追われる身になり宇宙海賊が誕生したってわけよ。連邦のヤロウ……ラグラがなくなった途端にニュープラトンを横取りしやがって……」

「そんなことがあったなんて……同情するわ……っ」

「けっ、同情なぞいらねえよ。わたしだってあいつと組んだ方がさらにスリルで破壊まっしぐらで楽しくできると思っただけだかんな。
あたしはマトモな生き方は合わねえからよぉ」

「…………」

いかにもサイサリスらしい考えだ。同情して損したと思うユノンであった。


「……そのエルネスって人は……」

「……死んだよ、5年前のとある事情でな。死に間際、当時戦闘員で一番能力が高かったラクリーマに全権と自分の部下達を託したんだ。そこからアマリーリスに至るわけだよ」

「…………!?」

「こいつもよくここまできたとあたしでも思うよ。親友とはいえイチ戦闘員からいきなり全てを押し付けられて重圧もハンパではないだろうに。

エルネスも仲間を大事にする奴だったし、あいつと同じように仲間を死なせたくない気持ちで必死で悩んでるんじゃねえかな?」

そのとりとめのない考察にユノンは腕組みし、頭を傾げる。

「そうかしら……彼の普段を見てるとそうは思えないし……」

「まあ、予想の話だがな。
ラクリーマは他に最愛の彼女、ランちゃんも亡くしてるからな。間違いなく多大なショックを受けているのは確かだ。

……こいつ、無意識に自分の死に場所を探しているような気がするんだが。副司令官のお前さんなら思い当たるふしがあるだろ?」

彼女はその【死に場所】という言葉になにかピンとくる。

侵略、戦闘の際は部下達の盾となり、庇ったと度々報告されている。その証拠に帰艦の際は、ほとんど彼だけが傷だらけである場合が多かった。

最近ではのび太と決闘した時には『自分が死んだら後を引き継げ』と言っていた。そして先ほどの戦闘訓練での発言……。

それらの行動と彼女の言葉を照らし合わせると辻褄が合う。死ぬことを考えていない人間がそんな行動をとったり、そんな台詞を吐くとは思えない。

「ラクリーマ…………」

彼女は哀しげにうつむく。サイサリスはそんな彼女に軽い笑顔で見る。

「まあ心配しなさんな。ただこいつがバカなだけかもしんねえし、こいつが死ぬ姿なんか想像できねえって!」

「…………」

彼女を気遣うような口振りでそんな彼女の肩に手を置いた。

「ユノンちゃん、こいつの支えになってやれ。二人ならこのアマリーリスをさらに繁栄させることができるだろうぜっ!
実際、あんたらの姿を見てたらまるで姉と弟だ、クックック……」

「……なに言ってるんですか……っ」

冗談まじりで喋り、彼女をぼそっと否定するユノン。

「……ちょっと開発エリアに戻る。ちょっとラクリーマを見といてくれなぁ!

あと……二人っきりになったとしてもヘンな行動すんじゃねえぜ?」

「……っ!!」


「ワリィワリィ!なら邪魔者は消えるぜぇ!」

茶々をいれ、サイサリスはメディカルルームから去っていった。



……二人っきりとなった室内、ユノンはラクリーマの横に座り、見つめる。


「…………」

彼はまるで子供のような寝顔をし、なんの悩みもないかのようにすやすや寝ている。まるでさっきの考察が的外れだったかのように……考えすぎなのであろうか?

「ふふっ……憎たらしいほどいい寝顔してるわ。さっきまでの様子とは大違い……」

彼女は普段、誰にも見せたことのない穏やかな笑顔をつくる。
誰もいないせいか、安心していつもの自分ではない表情でしていられる。



“俺の本気でキレた姿は怖かったか?”

あの言葉が心に残っている。確かに彼は訓練や仕事中はさすがに厳しく行っているが、それでも彼はへらへらとしている部分があり、それまではキレるという一線を越えた所までは見たことはなかった。
あの時の彼の姿は本当に未曾有な光景だったと言える。


(もしかしたら……溜め込んでたストレスとかを吐き出してたのかもしれないわね……っ)


彼女は彼の右手をギュッと握り、視線を下に向け、目を瞑る。
(……支えるかぁ……そんなことは全く考えてなかったわ。
務まるかしら……こんな無愛想で人付き合いもろくにできないあたしが……)


すると


「ううっ……」

「ラクリーマ?」

彼は額に汗を流しうめき声をあげ、彼女はすぐさま横にあったタオルで彼の汗を拭う。


「ラ……ン……っ」

「……?」

「……ラン……行くな……っ」

どうやら亡き恋人ランの夢を見ているようだ。しかし彼の表情を見るかぎり、あまり良い夢ではなさそうだ。

彼女はどこかもの悲しい表情に変える。

「……あたしのことは……眼中にないってワケね……ってなに考えてんのよっ!?」

顔を真っ赤にして頭をブンブン振るという彼女にして非常に珍しい行動をとっている。


(ギュウゥゥっ!)

「……?」

突然彼が自ら彼女の手ごと強く握りはじめ、寝ているにも関わらず、穏やかな表情となっていく。

「……ユノン……?」

「……えっ……起きてる……?」

彼女を呼ぶ声に反応にすぐに応える。

だが、彼は続くように

「……好きだ……っ」

「えっ…?」

「…………ずっと……俺のそばにいてくれ……っ」

「えぇっ!?」

そう言うとまたすやすや眠りはじめる。どうやら寝言だったようだ。
一体彼はどんな夢を見ているのか不思議だ。


「…………」


彼女の顔が真っ赤だ。
熟したリンゴのように真っ赤だ。
彼女の心臓の鼓動が高鳴り続けて今にも破裂しそうだ。

ユノンはすぐに立ち上がり、室外に出ると壁に寄りかかりそのまま座り込む。

「〜〜〜〜っ!!」

額を押さえ、非常に息づかいが荒い。

(っ……あたし、何取り乱してんのよ……っ。単なる寝言じゃない……)

息を整え、立ち上がる。

しかし鼓動の音は高く、もう一度メディカルルームに入るも、ラクリーマに一歩近づくごとにまた強くなっていく。

「……………っ!」

なんとも言えない複雑な心境に立ちくらみを起こし、イスにたどり着くとドサッと座り込む。

「……ん?ユノン?」

「はっ!?」

ラクリーマは目を覚まし、すぐに起き上がる。
起きた直後なのか不思議そうに馬鹿面で彼女に視線を注ぐ。

「お前……風邪ひいたのか?顔がやけに赤いが……っ」

「〜〜〜っ!」

(バチーンっ!)

「どわぉっ!!」

けが人にあるにも関わらず、彼に強力な平手打ちをかます。
いつもは冷静で飄々と接する彼女がまともにラクリーマと目を合わせられない。

「ばっ……バカぁっ!!」


罵るといなや、彼女はまるで犬のような速さでその場から去っていった。

「あのクソアマぁ……起きたなりに何しやがるんだ……。
ほぉ〜イテぇ〜!」
赤くなった頬がジンジンする、優しく撫でるが一向に痛みが引かない。

「…………」

ベッドを出て、立ち上がる。
……横腹と右腕全般が少し痛い。気にするほどでもないが彼はそこを優しく押さえて苦笑いする。

「ちいと無理しすぎちまったな……っ、情けねェぜ」

そう言い残し、誰もいない室内から早々に去っていった。


一方、ユノンはというと自室に戻り、ソファーに座りながら頭を押さえていた。

「…………」

いまだに顔を赤くし、溜め息ばかりついている。
ラクリーマの寝言が非常に気になっていたのだ。

(なんなのよ……この感じ……っ?
ああ……モヤモヤして気持ちわるい……っ!!)

そのままソファーに寝そべり、目を瞑る。

胸の鼓動が止まらない。さっきよりは遅くなったが、“ドクっ、ドクっ”と音を立ている。

(寝言でも……あんなこと言われたの……はじめて……。
ラクリーマ……どうゆうつもりなの……?)


“……好きだ……”

“ずっと……俺のそばにいてくれ……”。
何を思ってあんなことを言ったのか彼女は全く理解出来なかった。

「…………」

少し経って彼女は立ち上がり、クローゼットへ移動すると中から下着と着替えをとりだし部屋を出ていった。

「ラクリーマ……ユノンちゃん……あいつら……っ」

メディカルルームにサイサリスが戻ってきたが、当の本人とユノンはもういなく、無人と化していた。
徐々に苛立ちが募り、彼の寝ていたベッドをガツンっと蹴る。

「もうどうにでもしやがれっ!!せっかく気ぃ使ってんのにぃ。
こうなったら腹いせに……また新兵器を開発して犠牲者をバンバン増やしてやるわぁ、ワハハハハッ!!」


狂気じみた発言を吐いたのち、彼女もメディカルルームから去っていった。


……………………………………

のび太は下をうつむきながら通路を歩いていた。

「ハァ……」

とため息をつき、不安そうな表情だった。

(あの時のラクリーマ……ホントに恐かったな……っ。あれで僕たちを襲っていたら……ひいっ、イヤだぁ!!)

身体に寒気が走る。
考えただけでもゾッとする。
しかし、あれでも自覚があったというのは驚きだ。

「……大丈夫だったかなぁ……見たかぎり大ケガみたいだったけど……っ」

それでも彼のことを心配するいかにものび太らしい性格だ。

……そんなテンションで歩いて曲がり角を曲がろうとした時、

「のび太?」

「ラクリーマ?」

偶然にも二人は出くわす。

「ラクリーマ……身体は大丈夫なの?」
「ああっ。ちいと身体を痛めちまったようだが……まあ心配すんなっ」

のび太はその言葉を聞いてホッとする。

「しずかは一緒じゃねえのか?」

「しずかちゃんなら大浴場に行くって」


「大浴場かぁ……クククっ、そういやぁユノンもそこに行ったってことを聞いたな……こりゃあ面白いことを考えたぜ!」

「?」

突然ラクリーマはのび太の腕を掴み、のび太が歩いてきた方向へ引っ張っていく。

「どこに連れていくんだよぉ!?」

「のび太、お前にいい体験させてやるよ。
名付けて『目の保養及び、女の体について』って奴をな!」

「ええっ!?」

明らかに嫌な予感しかしない……。
のび太を無理矢理連れていく彼は一体なにをしでかそうとしているのだろうか?

-23-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




TV版NEWドラえもん プレミアムコレクション SF(すこしふしぎ)スペシャル〜恐怖の?! ドッキリ世界へ [DVD]
新品 \2389
中古 \1988
(参考価格:\2940)