小説『大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦!!【R-15】【完結】』
作者:はならむ()

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「ユーダっ!?」

空気を読まない発言が彼を逆撫でし、ユーダをグッと睨み付ける。

「このヤロぉ、こんな時にふざけたこと言ってんじゃねえよ……っ」

「もともとリーダーがそう言ったんだろうがぁ、ならいいんじゃねえのかよ?訓練参加してねえ奴がしゃしゃり出てくんなよ?」

「……お前死にてぇのか、あ?」

「それはこっちの台詞じゃボケぇ!」

二人は険悪なムードになり、今にも本当のケンカが勃発しようとしていた。

「二人とも落ち着けよ!!」

「今そんなことしている暇なんかねぇだろうが!」

仲間の一部が二人を仲介しようとするが、そんなものでは止まらなかった。

「放せェェっ!!このクソヤロウを一発でもぶん殴らねえと気がすまねえんだァァァ!」

「オメェのよいこ振りにはもううんざりなんだよ!!」

「なんだとォ!?今すぐ殺してやんよぉっ!!」

「上等だコラぁっ!!」

さらに激化する二人を取り押さえるも精一杯である。
この場はラクリーマそっちのけで一気に修羅場と化しつつあった。


その時、

(ガシッ!!)

レクシーの足首に何かに掴まれたような感覚がする。下を見ると、

「りっ、リーダーっ!!」

意識がなかったはずのラクリーマは彼の足首を掴んでいる。徐々に握り具合が強くなっている。

「おっおい、リーダーはまだ生きてるぞ!」

全員がそれを聞いて、徐々に歓喜の表情を浮かべる。

“よっしゃあっ!!死んでなかったぁ!!”

満面の笑みで大声を張り上げる。全員が一安心し、気が一気に緩んだ。

……だが、

「クックック……」

「リーダー?」

「クククッ……キヒっ!」

ラクリーマの身体中ぶるぶる震えた後、何事もなかったかのようにすぐ立ち上がった。
その瞬間、全員はその場で静止した。

“リーダーっ……?”

さっきまでの彼とは何が違うとほぼ全員が悟った。

「……さすがは俺の部下だ……めっちゃ楽しいぜ……だがナ……」


(ズドォォォっ!)

「ぐぎゃあっ……」

突然、無関係であったハズのレクシーの腹部に猛烈な蹴りを入れて、彼を吹き飛ばし、前方数メートル辺りで落下した。

(わっちゃあら死にさらせやァァァァァァっ!!!)


“ひいいいいいっ!!?”


ついにブチ切れたラクリーマ。全員はすぐその場から一目散に逃げ出すが彼は逃亡を逃がすハズがなかった。

(バキィ!!ズバーっ!!)

すぐに彼らに追いつき、これでもかというくらいに殴る、蹴るの暴行を開始する。

「クカカカッ!!ヒャハハハハハァ!!」

先ほど離れていた義手がなんと何事もなかったかのようにそのまま元の位置に連結、そのまま彼らの方へ親指以外の四指を向けた。

(ギュルルルルッ!!)

指がまるでサボテンのように針山と化し、瞬間、高速回転を始める。

「ゲシゲシにイワシてやるらぁ!!」


なんと回転する四指がまるで少なくとも5〜8メートルはあるワイヤーのように伸び、鞭を扱うかのようにそれをブンブン振り回し始めた。

(ドォリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリドリーーっっ!!)


広範囲に渡り、彼らの装甲、地面に直撃し抉りに抉り、火花を散らす。

「やべえ!!本気で俺達を殺す気だぁ!!」

「誰かリーダーを止めろぉぉ!!」

しかし誰もラクリーマを止められる者はいない。
狂気に身を任せ暴走する彼はもはや『戦神』ではなく、『悪鬼羅刹』そのものである。

その瞳は『戦闘』を楽しんでいる目ではなく、『殺す』ことを楽しんでいる目である。


「誰か助けてくれぇっ、殺されちまう!!」

「落ち着いてくだせえリーダーっ!!」

部下の懸命な思いも彼には全く届いておらず、ただひたすらに暴走する。ひたすらに……。
……………………………………
“緊急事態、緊急事態!!非番時含めた各戦闘員は速やかに武装して模擬戦場に集結せよっ!!繰り返す……”

艦内に一気に放送され、休んでいた非番戦闘員はもちろん、何があったか知りたい無関係者までもが移動する。

一方、オペレーションセンターで部下と雑務をしていたユノンも……。

「模擬戦場で何が起こったの!?」

「それが……総司令の身に何かが!?」

「……分かりました、あなた達はそのまま作業を続けて!!私はそこへ向かいます」

「了解!!」

彼女もすぐにその場をあとにする。走り様の彼女は歯軋りを立てて苛立っていた。


(あいつ……何やらかしたのよ……!?)

……………………………………
「ラク……リーマぁ……」

「イヤァァァっ!!!!」

のび太としずかも彼の変わり果てた姿にオロオロするくらいしか出来なかった。

部下達は打ちのめされて100人以上いたハズの参加者はもう半分以下の人数しか立っていない。

誰もが彼を止めようと試みるが、彼の恐るべき戦闘力に暴走が拍車をかけて、接近するのも困難であった。

「あっ、あれがリーダーか……?」

「ウソ……だろっ……?」

駆けつけてきた野次馬も彼の狂乱する姿に驚愕している。
その時、ユノンもすぐに駆けつけて野次馬を押しのける。

「どうしたの!?」

「副司令官っ!!ラクリーマさんがっ!」
暴れている姿を見た彼女の表情は一気に変わった。

「うっ……ウソでしょ……っ!?」

彼女の額から冷や汗が流れ出る。

「……理由はあとで聞きます。まずは彼を……っ」

彼女は冷静になり、耳元の通信機を起動させ、向かう途中の訓練非参加者の戦闘員にこう告げた。

「直ちに遠距離用のトランキライザーを装備し、集結した後、総司令官を包囲して発射せよっ!迅速に行動して!」

“ユノンさんっ!!何が起きているんですか?”

「説明はあとよ。今はただその命令に従って!」

“了解しましたっ!!”

通信を切り、野次馬に向かってこう言い放った。

「今から彼を無人地帯へ誘導します。あなた達を危険な目にあわせたくないけど、あたし一人じゃ無理だから誰か協力お願いします」


「無茶だっ!ユノンさんにまで何かあったら……」

「そうですよっ!やるなら俺達が!」

説得しようとするも、彼女は首を横に振る。

「……副司令官たるものが何もしないわけにはいかないでしょ。
……もう一度しか言わないわ、協力してちょうだい……」

彼女の断固な決意に、ぞろぞろとユノンの前に集まってくる。

「わかりやした。ユノンさん、指示をお願いしますっ!」

「みんなこうなったら死ぬ覚悟でリーダーを止めようぜっ!!」

“おおっ!!”


男達は意志を一つに結集し、腕を高らかに手を上げた。

「……ならいくわよっ、あたしについてきなさいっ!!」

彼女率いる、20人ほどの集団が一斉に行動を開始する。

まず彼女が暴走している彼の注意を引き付けるため、彼の近くに接近するよう指示を出す。

「あたしが行くわ。5人はサポート、残りは誘導地帯で待機してっ!」

“うっすっ!!”

それぞれ別れて各指示の元に行動し始める。

……一方、


「ユノンさん助けてくれぇっ!!」

立っている参加者は20人以下である。
辺りにはラクリーマにボコボコにされた戦闘員によって埋め尽くされている。
生きているようだが、ほぼ全員が気絶している。

「ダァアアアッ!!」

彼自身はまだ満たされていないのか、悪魔のような恐ろしい顔で獲物を探し求め、さ迷っていた。

「あなたたちはすぐに後ろへ!」

「ありがてぇっ!」

ユノン達が近づき、逃げ続けていた戦闘員はやっと彼らの後方へ移動する。


「ラクリーマっ!!」

「!?」

声をかけると彼は視線はユノンに向いた。

「あたしはここよ……。来るなら来なさい……さあっ!」

「グガアアッ!!」


その瞬間、血に飢えた野獣が彼女へ向かって全速力で向かってくる。
ラクリーマはもう……ユノンだと認識していないのか?

彼のスピードは桁違いであり誘導不可能と察知した彼女はすぐに防御の構えに入り、5人の男がユノンを守るように囲む。





しかし、




「えっ!?」


“!?”



何と彼は彼女達を飛び越えて後方にいる戦闘員に向かって突撃した。

「どっ、どうなってんだコリャア!?」

彼らはすぐに彼の猛攻から逃げ出した。
そんな中、ユノン達でさえ全く理解できず立ち尽くしていた。

「どっどうして!?」

ユノンは振り返り、彼を見ると何かおかしいことに気づいた。

よく見ればラクリーマはまだ立っている戦闘員だけを襲っている。暴走しているのなら戦闘員を色んな手段を使って惨殺しているはずである。彼の性格上で考えるなら。
しかし、倒れている戦闘員はただ気絶しているだけで死んではいない。

しかも暴走しているのに対し、その攻撃全てがワザと急所を外しているようにも見える。
そして自分達を襲わなかった件……そう考察するとある考えが思い浮かぶのだった。

「あっあいつまさか……っ!?」

「副司令官!?」


ユノンは前に出ると苦虫を噛み潰したような表情で彼をグッと見つめた。

「止まりなさい!!」

「……!?」

彼女の放った一言でなんとその場で制止した。

「あんたっ……ホントは意識あるんでしょっ?答えなさい!!」


「……」

彼は数秒間間を置いた後、彼女の方へ向いた……。

「……ああ、普通にあるぜ」

(! ?)

この模擬戦場にいた全員が驚愕した。
するとラクリーマはフッと軽く笑い、こう呟いた。

「……まあ、もうすこしで理性がなくなりそうだったがな。その前に止めてくれてありがとな……ん?どうしたユノン?」


「…………っ!」

彼女は怒りの表情を露にし、彼の方へ向かうとすぐさま、

(バチン!!)

「つっ!」

彼の頬に強烈な平手打ちをかまし、辺りにその打撃音が辺りに響きわたった。

「いい加減にしなさいよぉ!!こんな騒ぎ起こして、彼らをあんなにまで痛みつけて……総司令官失格だわっ!!」

「…………」


ユノンの叱咤が彼はもちろん、辺りは一気に静寂と化する。本当に彼女の怒りもごもっともだ。

「……ユノン、どうだったか?」

「……はっ……っ?」

「意識があったとは言え、マジでキレてみた俺は怖かったか?」

「…………」

ラクリーマは倒れている戦闘員の方へヨロヨロしながら向かうと運ぼうとしているのか、気を失っているレクシーの手を肩に通している。


「へへっ……いやあ、いっぺんブチギレてみるのもいいもんだ。マジで爽快モンだぜ……っ」

レクシーもやっと目を醒まし、彼へ微笑む。

「りっリーダー……意識が治ったんですかい……よかったぁ……」

「レクシー……本当にすまなかったな。お前が一番関係なかったのに攻撃して……ふがいねえ……」

「へへっ……あんなリーダー見たことなかったですぜ……っ、今だにハラがいてぇや……ハハッ……」

彼らの会話から、一応の安心感を醸し出していたがそれと同時に彼らは思い知ることとなった。

“彼をキレさせると恐ろしい”ことを。

“もし理性がなくなるとどうなるのか……”と。



「これで……訓練を終わる。全員……こいつらをメディカルルームへ連れていってやれ……っ、急所を外してあるからしん……ぱい…し……」

(ドサッ!!)

“リーダーァァっ!!”

ラクリーマはレクシーと共にその場で倒れた。

すぐに駆けつけるとレクシーはともかく彼は白目を向いて痙攣を起こし、今度こそ意識を失ったようだ。

そりゃあんなにボコボコされて出血多量な状態で馬鹿みたいに動き回れば疲れ知らずのラクリーマでも燃えつきるのだ。


“リーダーァァっっ……ありゃ?”

ようやく到着した武装戦闘員達もその状況を見て、頭を傾げる。中央へ駆けつけるとラクリーマと多数の部下達が気絶している。

「はっ早くリーダーを……っ!」

「全員集合、協力してその場で気絶している彼らをすぐにメディカルルームへ!」
ユノンの指示でその場にいる気絶者を運び出す。
こうして地獄で危険な戦闘訓練が終わりを告げるのであった。

……一方、のび太としずかは……。


「「うえぇぇぇん!!」」

見学室内でふたり、ラクリーマのキレた表情、行動があまりにも怖すぎて大声で泣いているのであった……。

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